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15話 交渉 その2
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「この娘に1か月に80万ゴールドも支払う価値が!? 信じられませんわ!」
「確かに……法外だな」
ラグナ王太子殿下が提示してくれた、私の給料……80万ゴールド。確かに一般人の私からすれば多すぎる気はするけれど。法外という言葉をアラン王子殿下達が使っているのが信じられなかった。
「私としては、彼女の能力はそれ以上だと思っています。決して惜しい金額ではない。あなた方が今まで、どれだけの低賃金で彼女を雇用していたか、丸わかりですね。もっとも……人は金銭で価値判断など出来ないものですが」
「く、くく……!」
宿屋内がいつの間にかオークション会場になっている。なんというか……不思議な気分だった。
「80万ゴールドを出すのは難しいでしょうか? それならば、ウィンリーがそちらに戻る理由はないですね」
「ぬうううう……!」
早くも交渉の勝負が決着する? そう思われた時だった。
「お、お待ちください!」
「む……あなたは」
「も、申し遅れました! 私はジドル王国の魔法鑑定人のヘンリック・ポポと申します!」
「ヘンリック殿か」
一番最初の挨拶時点で簡単な自己紹介はしているけれど、ヘンリックさんは改めてラグナ王太子殿下に挨拶をした。身分の差を感じてのことだと思う。この人は比較的まともそう……?
「な、なんとか! なんとかウィンリー殿をお戻しいただけませんでしょうか!? ジドル王国の今後を考えますと、どうしても彼女が必要なのです!」
背筋を90度曲げながら、必死に懇願してくるヘンリックさん。このまま放っておいたら、土下座までしそうな勢いだ。でも、それをする相手は違う気がする。
「ヘンリック殿、お顔を上げてください、あなたがそこまでされる必要はないでしょう」
「で、では……!」
ヘンリックさんは自らの意見が通ったと思ったみたいだけど、それは甘すぎた。
「本来、頭を下げるべき人物は別に居るでしょう?」
そう言いながら、ラグナ王太子殿下はゆっくりと視線をその人物に向けて行く。アラン王子殿下とマリーナ公爵令嬢だ。二人とも少し狼狽えている。
オークションからのイビリ作戦とでもいうのか。ラグナ王太子殿下の手腕が見えて来た。多分、敵に回すと非常に怖い人物だと思う。
「わ、私とマリーナに謝罪をしろ、と?」
お門違いにも程がある! と言わんばかりの顔をアラン王子殿下は見せていた。一体、どちらがお門違いなんだろうとは思うけど……。ラグナ王太子殿下は、そんなアラン王子相手に首を横に振っていた。
「いえいえ、本来であればあなたの父上殿……ジドル王国の国王陛下に謝罪に来ていただくのが筋というものでしょう」
「な、なに!? 父上だと……!?」
アラン王子殿下は明らかに焦っている。完全にラグナ王太子殿下がこの場を支配していた。そもそも、高級宿に案内してそれに応じている時点で、イシューマ王国側に主導権があるんだけど。この応対は、一貴族にする応対と変わらないのだから。
「ええ、その通りです。今回のウィンリーを追放した罪はそのくらいだと思いませんか? 給料まで没収して……。それを都合が悪くなったから戻って来てくれでは、あまりに都合が良すぎる」
「ラグナ様……」
慈悲深いラグナ王太子殿下の言葉に私は感動していた。ああ、本当に凄い人だ。
「それに……もう一つ、問題がありましてね」
「問題……?」
アラン王子殿下は怪訝そうに私達を睨んでいる。私やマリアベルも、ラグナ王太子殿下の次の言葉を待っていた。何と言うのか興味があったから。
「私とウィンリーは婚約関係にある……つまり、そちらに戻ってもらうことは出来ないのですよ」
「な、なんと……!! 王太子殿下とウィンリーが……!?」
「……へ?」
え~と、太陽ってどっちの方向に沈むんだっけ……? 私はこの時、軽く混乱していた……。
「確かに……法外だな」
ラグナ王太子殿下が提示してくれた、私の給料……80万ゴールド。確かに一般人の私からすれば多すぎる気はするけれど。法外という言葉をアラン王子殿下達が使っているのが信じられなかった。
「私としては、彼女の能力はそれ以上だと思っています。決して惜しい金額ではない。あなた方が今まで、どれだけの低賃金で彼女を雇用していたか、丸わかりですね。もっとも……人は金銭で価値判断など出来ないものですが」
「く、くく……!」
宿屋内がいつの間にかオークション会場になっている。なんというか……不思議な気分だった。
「80万ゴールドを出すのは難しいでしょうか? それならば、ウィンリーがそちらに戻る理由はないですね」
「ぬうううう……!」
早くも交渉の勝負が決着する? そう思われた時だった。
「お、お待ちください!」
「む……あなたは」
「も、申し遅れました! 私はジドル王国の魔法鑑定人のヘンリック・ポポと申します!」
「ヘンリック殿か」
一番最初の挨拶時点で簡単な自己紹介はしているけれど、ヘンリックさんは改めてラグナ王太子殿下に挨拶をした。身分の差を感じてのことだと思う。この人は比較的まともそう……?
「な、なんとか! なんとかウィンリー殿をお戻しいただけませんでしょうか!? ジドル王国の今後を考えますと、どうしても彼女が必要なのです!」
背筋を90度曲げながら、必死に懇願してくるヘンリックさん。このまま放っておいたら、土下座までしそうな勢いだ。でも、それをする相手は違う気がする。
「ヘンリック殿、お顔を上げてください、あなたがそこまでされる必要はないでしょう」
「で、では……!」
ヘンリックさんは自らの意見が通ったと思ったみたいだけど、それは甘すぎた。
「本来、頭を下げるべき人物は別に居るでしょう?」
そう言いながら、ラグナ王太子殿下はゆっくりと視線をその人物に向けて行く。アラン王子殿下とマリーナ公爵令嬢だ。二人とも少し狼狽えている。
オークションからのイビリ作戦とでもいうのか。ラグナ王太子殿下の手腕が見えて来た。多分、敵に回すと非常に怖い人物だと思う。
「わ、私とマリーナに謝罪をしろ、と?」
お門違いにも程がある! と言わんばかりの顔をアラン王子殿下は見せていた。一体、どちらがお門違いなんだろうとは思うけど……。ラグナ王太子殿下は、そんなアラン王子相手に首を横に振っていた。
「いえいえ、本来であればあなたの父上殿……ジドル王国の国王陛下に謝罪に来ていただくのが筋というものでしょう」
「な、なに!? 父上だと……!?」
アラン王子殿下は明らかに焦っている。完全にラグナ王太子殿下がこの場を支配していた。そもそも、高級宿に案内してそれに応じている時点で、イシューマ王国側に主導権があるんだけど。この応対は、一貴族にする応対と変わらないのだから。
「ええ、その通りです。今回のウィンリーを追放した罪はそのくらいだと思いませんか? 給料まで没収して……。それを都合が悪くなったから戻って来てくれでは、あまりに都合が良すぎる」
「ラグナ様……」
慈悲深いラグナ王太子殿下の言葉に私は感動していた。ああ、本当に凄い人だ。
「それに……もう一つ、問題がありましてね」
「問題……?」
アラン王子殿下は怪訝そうに私達を睨んでいる。私やマリアベルも、ラグナ王太子殿下の次の言葉を待っていた。何と言うのか興味があったから。
「私とウィンリーは婚約関係にある……つまり、そちらに戻ってもらうことは出来ないのですよ」
「な、なんと……!! 王太子殿下とウィンリーが……!?」
「……へ?」
え~と、太陽ってどっちの方向に沈むんだっけ……? 私はこの時、軽く混乱していた……。
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