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16話 交渉 その3
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「イシューマ王国の王太子殿下が、平民でしかないウィンリーと婚約……!?」
私が正気に戻った頃に、アラン王子殿下が失礼なことを言いだした。この人はいちいち、ただの平民と主張してくるのよね。確かに、ラグナ王太子殿下の言葉には私も度肝を抜かされたけどさ。
「アラン王子殿下。ウィンリーは現在、イシューマ王国のレンブラント王宮で働く身です。不用意な発言は控えていただけますか?」
「ぬ、ぬう……申し訳ない」
「わかっていただければ構いません」
ラグナ王太子殿下の睨みで、アラン王子殿下は即座に謝罪した。完全に主導権はこちらが握っている、最早、交渉が成立していないレベルで。でも、私の記憶が正しければ、ラグナ王太子殿下に求婚をされたことはない。と、すればこれは、交渉を有利に進める為のブラフ……。
とりあえずは彼に合わせるのが正しいと思うので、私は「まあ、王太子殿下ったら……!」と、淑女のような態度を取ってみせた。似合っているかどうかはともかくとして、信憑性は増したと思う。
「し、しかしそれでは……ウィンリー殿は本当にイシューマ王国から出ないつもりなのですか……!?」
必死の表情でヘンリックさんが、私に直接話しかけて来る。
「イシューマ王国から出ないも何も……私、元々は孤児出身ですし。別に住む国が変わったからってどうなるわけでもありませんよね?」
「お前の作ったアイテムでどれだけの人々が救われたと思っているのだ? お前はその者達を見殺しにする気か?」
いよいよラグナ王太子殿下と私の婚約話も出て来て、後がなくなったのか、国民を見殺し発言をするとは予想外だった。いつの間にか、私がジドル王国の人々を救済してる前提になっているのも面白いけど……。
「私が作ったポーションやエーテルは、アラン王子殿下が管理している店に卸していましたよね?」
「そ、そうだが……?」
「私は宮殿でアイテムを製造していただけですし、国民を直接救済していたわけではありませんよ? そもそも、私の代役はいくらでも居るっていう体で追放されたのに、その理論は破綻してますよね?」
ジドル王国の国民については今、議論するところではないはず。宮殿でのアイテム製造役はマリーナ様になっているんだから。
「戻る気はない……と、いうことだな?」
「ええ、私はイシューマ王国で働いていきたいと考えていますので。アラン王子殿下はどうぞ、愛するマリーナ様と一緒に、ジドル王国を支える礎になってください。応援しています」
私なりの精一杯の皮肉を利かせた言葉だ。王族に対しては失礼極まりないだろうけど、これくらいなら許されるだろう。
「……わかった、また出直してくるとしよう」
「また来られるのでしたら、ウィンリーから没収した未払いの給料と、慰謝料を持ってきていただきたい」
「……!!」
「アラン王子殿下、ここは堪えてください……! それをすれば、ご意見が変わるのですか?」
今にも暴れ出しそうなアラン王子殿下を抑えたのはヘンリックさんだ。
「いえ、それくらいは当然の礼儀だと思いまして提案いたしました。ただ、ジドル王国としても悪い話ではないでしょう。我が国との貿易をする際に……当然そこには、ウィンリーの作り出した上質なアイテムも含まれますので」
「な、なるほど、そういうことですか……と、いうことです、アラン王子殿下」
「くっ……! 考えておくとしよう……!」
ヘンリックさんは、単なる魔法鑑定人にしておくのは勿体ないのでは? 貿易交渉人や政治的な仕事が向いている気がする。少なくともアラン王子殿下やマリーナ様よりはずっと。
でも、私の給料が戻って来る可能性は嬉しい。さらに慰謝料もだなんて。アラン王子殿下は約束まではしなかったけれど、おそらくそれは実現しそうに思えた。
私が正気に戻った頃に、アラン王子殿下が失礼なことを言いだした。この人はいちいち、ただの平民と主張してくるのよね。確かに、ラグナ王太子殿下の言葉には私も度肝を抜かされたけどさ。
「アラン王子殿下。ウィンリーは現在、イシューマ王国のレンブラント王宮で働く身です。不用意な発言は控えていただけますか?」
「ぬ、ぬう……申し訳ない」
「わかっていただければ構いません」
ラグナ王太子殿下の睨みで、アラン王子殿下は即座に謝罪した。完全に主導権はこちらが握っている、最早、交渉が成立していないレベルで。でも、私の記憶が正しければ、ラグナ王太子殿下に求婚をされたことはない。と、すればこれは、交渉を有利に進める為のブラフ……。
とりあえずは彼に合わせるのが正しいと思うので、私は「まあ、王太子殿下ったら……!」と、淑女のような態度を取ってみせた。似合っているかどうかはともかくとして、信憑性は増したと思う。
「し、しかしそれでは……ウィンリー殿は本当にイシューマ王国から出ないつもりなのですか……!?」
必死の表情でヘンリックさんが、私に直接話しかけて来る。
「イシューマ王国から出ないも何も……私、元々は孤児出身ですし。別に住む国が変わったからってどうなるわけでもありませんよね?」
「お前の作ったアイテムでどれだけの人々が救われたと思っているのだ? お前はその者達を見殺しにする気か?」
いよいよラグナ王太子殿下と私の婚約話も出て来て、後がなくなったのか、国民を見殺し発言をするとは予想外だった。いつの間にか、私がジドル王国の人々を救済してる前提になっているのも面白いけど……。
「私が作ったポーションやエーテルは、アラン王子殿下が管理している店に卸していましたよね?」
「そ、そうだが……?」
「私は宮殿でアイテムを製造していただけですし、国民を直接救済していたわけではありませんよ? そもそも、私の代役はいくらでも居るっていう体で追放されたのに、その理論は破綻してますよね?」
ジドル王国の国民については今、議論するところではないはず。宮殿でのアイテム製造役はマリーナ様になっているんだから。
「戻る気はない……と、いうことだな?」
「ええ、私はイシューマ王国で働いていきたいと考えていますので。アラン王子殿下はどうぞ、愛するマリーナ様と一緒に、ジドル王国を支える礎になってください。応援しています」
私なりの精一杯の皮肉を利かせた言葉だ。王族に対しては失礼極まりないだろうけど、これくらいなら許されるだろう。
「……わかった、また出直してくるとしよう」
「また来られるのでしたら、ウィンリーから没収した未払いの給料と、慰謝料を持ってきていただきたい」
「……!!」
「アラン王子殿下、ここは堪えてください……! それをすれば、ご意見が変わるのですか?」
今にも暴れ出しそうなアラン王子殿下を抑えたのはヘンリックさんだ。
「いえ、それくらいは当然の礼儀だと思いまして提案いたしました。ただ、ジドル王国としても悪い話ではないでしょう。我が国との貿易をする際に……当然そこには、ウィンリーの作り出した上質なアイテムも含まれますので」
「な、なるほど、そういうことですか……と、いうことです、アラン王子殿下」
「くっ……! 考えておくとしよう……!」
ヘンリックさんは、単なる魔法鑑定人にしておくのは勿体ないのでは? 貿易交渉人や政治的な仕事が向いている気がする。少なくともアラン王子殿下やマリーナ様よりはずっと。
でも、私の給料が戻って来る可能性は嬉しい。さらに慰謝料もだなんて。アラン王子殿下は約束まではしなかったけれど、おそらくそれは実現しそうに思えた。
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