追放された宮廷錬金術師、彼女が抜けた穴は誰にも埋められない~今更戻ってくれと言われても、隣国の王子様と婚約決まってたのでもう遅い~

まいめろ

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22話 唐突な謁見 その3

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「ウィンリー・トレート……ラグナから話は聞いておる。なかなか、聡明で謙虚な娘だと褒めておったぞ」

「いえ……そ、そんな……」


「錬金術師としての実力も80万ゴールドの給料に十分見合うとも伺っておる。陛下も納得されておるしな」


 イシューマ王国の国王陛下の名前は確か、スミス・イシューマ様だったはず。そっか、国王陛下も私のことを認めてくださってるんだ。ということは……?


「イシューマ王国の歴史の中でも、王族の一般人が結婚した例は存在する。もちろん、おいそれと認められることではないがの」

 そう言いながら、ユエナ様は真剣な眼差しで私を見つめていた。いくらイシューマ王国でも、おいそれと認められることではない……それは私にも分かっていることだ。だから、ラグナ王太子殿下が私と婚約しているなんて嘘を吐いたときは、とても驚いたし。

「だが、我が国に利益をもたらす存在であれば、話しは別だ。そういった功労者には、貴族の爵位が与えられることもあるからの」

「さ、左様でございますか……私も貴族の爵位を得られるように精進したいと思います」

「うむうむ、そうかそうか。まあ、何よりも重要なのはお互いを想う心じゃ。ウィンリーよ、おんしもしっかりとラグナを見て行くと良い。こやつは意外と抜けているところがあるからの」

 ユエナ様は面白おかしく笑っていらっしゃる。私は何気なく、「意外と抜けている」王太子様を横目で見た。

「ウィンリー? 本気にはしないように。母上も妙なことを言わないでください、私の評価に関わってしまうので」

「何を言うか。私は本当のことしか言うておらぬぞ?」

「母上……」


 幼少の頃より厳しく育てられた賜物か……ラグナ王太子殿下は完全に言い負かされてしまっていた。というよりも、事実だからあんまり言い返せないのかな。

 なんだか楽し気な家族団欒の一場面……孤児の私はそういう経験がないから、羨ましく思えてしまう。そして、二人の家族として迎え入れられたい……そんな想いも強くなっていた。



------------------------------



「それではな、ウィンリー。私の頼みでの急なことで申し訳なかったの」

「いえ、とんでもないことでございます、ユエナ様。本日はありがとうございました」

「うむ、いつでも訪ねると良い。私も娘が欲しかったのでな」


 こうして、ユエナ・イシューマ王妃様との謁見はとりあえず終了した。印象としては、それなりに良い印象を持ってくれたのではないかと思う。私とラグナ王太子殿下は、ユエナ様の私室から出ると安堵の息を漏らしていた。とても優しいお方だったけれど、王妃様というだけで緊張してしまうし、ラグナ王太子殿下はもっとだろう。

 彼の顔を見ると明らかに多量の汗をかいているようだし……。


「はは、母上の前はやはり慣れないな」

「そんなに厳しいお母さまだったのですか?」

「まあ、そうだね……ただ、それも全て私を立派な国王にする為だったはず。厳しいながらも愛情はしっかりと感じていたからね」

「素敵なお母さまですね……ユエナ様は」

「ああ、そうだね」


 本当に羨ましく思える。ラグナ王太子殿下も、出生の秘密がはっきりしていない私を快く宮殿に迎え入れてくれたのだし……それだけでも、彼の人間性が分かる。

「ラグナ様、その……私、可能であればラグナ様の……」

「えっ? なんだって?」


 婚約者になりたい……そう言葉にしようとした時だった。私達の前に一人の執事が現れたのは。


「王太子殿下、早急にご報告申し上げたいことが!」

「すまない、ウィンリー少しだけ待ってもらえるか?」

「は、はい」


 私は一歩下がって、執事の報告を優先させた。なんだか、焦っている様子だったから……。


「どうかしたのか?」

「それが……ジドル王国の使いの者からの連絡があり、明日、ジドル王国の国王陛下がこちらに来るようです! 内容としては、ウィンリー殿に関することのようで」

「なんと……まさか、こんなに早くジドル王国の国王陛下が動くとはな」


 ラグナ王太子殿下はその事実に驚いている様子だったけど、私はそれ以上に不安だった。一体、どういう内容になるのか全く予想が出来なかったから……。
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