追放された宮廷錬金術師、彼女が抜けた穴は誰にも埋められない~今更戻ってくれと言われても、隣国の王子様と婚約決まってたのでもう遅い~

まいめろ

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25話 二度目の会談 その3

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「……」

「ウィンリー、そんなに緊張することはないと思うが……」

「そ、そうは言われても……」


 私は今朝は宮殿内の錬金施設で仕事をしていた。ノルマというものは特にないけれど、おそらくは想定していたアイテム数の倍くらいは作れたかと思う。周囲の驚きがそれを物語っていたからよく分かった。


 そして、現在は昼過ぎ……いよいよ、モーガン・ジドル国王陛下やアラン・ジドル王子殿下がやって来る時間になったのだ。レンブラント宮殿内は既に、彼らを受け入れる体制になっている。使用人達も整列を始めていたから。


 ちなみに、スミス・イシューマ陛下とユエナ・イシューマ王妃様は貴賓室の方で、先に待機しているらしい。


「ウィンリー、君の錬金術師としての能力は朝のアイテム数をみるだけでもハッキリと分かる。陛下……父上も既に分かっていらっしゃるのだ。下手をすれば、レンブラント宮殿内の他の錬金術師総出以上の役割を一人でこなせるかもしれない……元老院は、そのように判断している」

「ほ、本当ですか……!?」

「ああ、本当だよ」


 元老院というのは確か、ジドル王国でいうところの議会と同じ立場の意志決定機関のはず。王家と同等以上の発言能力を有しているとかなんとか。そんな機関が私を、この短期間でそこまで評価してくれているの?

 不味い……なんて言えばいいんだろうか。素直に喜んでいいのかしら?


「おそらく、ジドル王国は相応の準備をして今回は乗り込んで来るだろう。破格の報酬などは当然として……念のために、レンブラント宮殿内の警戒レベルを最大に引き上げている」

「そ、そこまで……?」


 ラグナ王太子殿下は本気のようだった。警戒レベルを最大限に上げているっていうのは、戦闘になったことも考えて、兵団や魔法師団を待機させてるってことかしら? 私はそっち方面には疎いけれど、イシューマ王国は軍事力も強いと聞いている。おそらくはジドル王国以上に……だから、力づくの交渉にはならないはずだけど。


「万が一の為だ。単純に君を守る為に、それだけの経費を掛けても問題ないと元老院からの許しも出ている」

「え、えと……」


 流石にここまでくると、私も戸惑ってしまう。私はそんなに凄い人間ではないのに……。


「何よりも、私がそうしたいんだ。迷惑だったかな?」

「ラグナ様……そんな、迷惑だなんて。嬉しいです」


 ラグナ王太子殿下は卑怯なほどに優しい笑顔を私に向けていた。これでは、納得せざるを得ない。でも、心の中は温かいからいいのかな?


「ジドル王国の方々が参られたようです」

「よし、このまま私のところまで通すんだ。表向きは丁重にな」

「畏まこまりました」


 外から入って来た執事の人がラグナ王太子殿下に頭を下げて、再び出て行った。丁重に、とは言うけれど、最初の出向かえを国王陛下や王太子殿下が直接行わない時点で、かなり舐められているように思える。まあ、これは作戦なんだろうけど。立場の違いを分からせる為の。


「いよいよですね。ラグナ王太子殿下」

「マリアベルか、そうだな」


 いつの間にか、私達のところにマリアベルが来ていた。なんだか悪い表情をしているような……。


「アラン王子殿下たちがまた、変なことを言い出したら、髪の毛を燃やすくらいは良いですかね?」

「ああ、そうだな。許可しようか」

「わあ! ありがとうございます! フフフフ……!」

「え、ええ~~~?」


 ラグナ王太子殿下も即答で許可しているし……マリアベルは本気になっているような。やめてあげてよ、モーガン様の頭を見るに、アラン王子殿下が将来禿げることは濃厚なんだからさ……。
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