追放された宮廷錬金術師、彼女が抜けた穴は誰にも埋められない~今更戻ってくれと言われても、隣国の王子様と婚約決まってたのでもう遅い~

まいめろ

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36話 真実は…… その1

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 あれからどのくらいの時間が経ったのだろう。本日、私はいつもどおり宮殿内にある調合室でアイテム製造を行っていた。「あれから」というのは、ラグナ王太子殿下からジドル王国の現状を聞いてからだ。


 ええと確か……3週間ほど前だったかな。


「ウィンリー、最近はいい感じなんじゃない?」

「えっ、マリアベル?」


 私が小休止をしていた時に、話しかけてくれたのはマリアベルだった。彼女も自分のノルマを完了し、小休止に入っているようだ。イシューマ王国では競争意識を絶やさない為に、錬金術師の1人1人に1日の調合ノルマを課している。

 ノルマの完了を見ない場合は、なかなか小休止にありつけなかったりするわけで。まあ、完了出来なかったとしても、最終的には救済措置があるんだけど。あまりにも救済措置が多いと、上官に呼び出されることもあるらしい。


「いい感じって、どういう意味?」

 
 私は警戒心を剥き出しにして話していた。マリアベルはなにかと、私とラグナ王太子殿下の関係について聞こうとしてくるから。今回もそっち方面だと思っていたのだけれど……。

「そう警戒しなくても大丈夫よ。私が言っているのは錬金の方。いつもノルマ達成が一番じゃない」

「ああ、そっちのことか。ありがとう、なんとか上手くやっていけてると思うわ」

「あなたに追い付ける錬金術師が果たして今後に現れるのか……甚だ疑問ね」

「いや、それは流石に……」


 褒めすぎだ、いくらなんでも……私はそう思っていたけれど、彼女はそう考えてはいなかったみたい。


「謙遜しなくても、あなたがイシューマ王国で一番の錬金術師という噂が消えることはないわ。もっと堂々としていれば良いのよ」

「そ、そうなのかな……嬉しいけどさ……」

「誰でも最初は上官からの呼び出しを受けるものなのよ? でもあなたは片鱗すら見せない。これはとても凄いことなの」

「そうなんだ。マリアベルも呼ばれたことはあるの?」


「当り前よ。私は最初、才能がないって言われてたんだから。今でこそ、そこそこの成績を残せるようにはなったけど、それも全て過去の経験を活かせたからよ」


 そうなんだ……優秀と思っていたマリアベルでさえ、ノルマを達成できない時があったなんて。そう考えると私の能力は、相当に優れているのかもしれない。


「ジドル王国は今頃、本当に大変でしょうね」

「そのことなんだけど……今はどんな現状なのかな?」


 ラグナ王太子殿下から、ジドル王国の国民が暴動や集会を行うようになり、さらに穏健派だったモーガン国王陛下がそれらを鎮圧するようになったことを聞いてから3週間程度。

 その後について、私は気になっていた。


「ラグナ王太子殿下からは聞いていないの?」

「ええ、聞いていないわ。ラグナ様は最近忙しいみたいだし」

「そうね……ジドル王国関連で忙しいようだし」

「ジドル王国関連で……?」


「ええ、そうよ。それも聞いていないんだ」

「うん……」


 なんだか話がややこしくなってきた。ラグナ王太子殿下と最近会えていないのは、彼がジドル王国関連の仕事で忙しくなったから……ということで良いのよね?


「アラン王子殿下が本格的に国民の弾圧に乗り出したらしいわ。このままだと本当に、ジドル王国はおかしくなりそうね」

「……!」


 暴動を本格的に鎮圧? 王族や貴族がそれをした場合どうなるのか……容易に想像できた。理想的社会とは真逆のディストピアの誕生か……それとも王族達が暗殺される未来になるのか……大きくはこの二つしかないだろうから。
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