最悪の予知夢を回避しようとしてるのに、問題が尽きないのですが‥!?

kiwi

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第二章 ノアは絶対死なせない!

第十八話 フィリップ第一王子殿下side③

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 僕もヘンリーも婚約者がいない為、婚約者候補を選ぶ為のお茶会が開かれた。

 マリアンヌも出席している筈だが、何故か見当たらない。

 名簿には名前が載っていたので、来ている筈なんだが‥‥?

 マリアンヌを探していると、遠くから弟の楽しげな笑い声が聞こえてきた。

 弟はお茶会に退屈して我儘を言い、母に叱られて泣いていたが、今は何をしているんだろう?

 弟の声のする方に向かって歩いていると、弟と御令嬢達がかくれんぼしているのが見えた。

 あれは宰相閣下の御令嬢じゃないか!?お淑やかな方だと思っていたが、意外に活発なんだな‥‥。

 あっ、あれはマリアンヌ!?マリアンヌも弟とかくれんぼしていたのか!?

 マリアンヌは嬉しそうにさっと木陰に入ると、息を潜めて隠れだした。

 見つからないように小さくなって隠れている。丸見えなのに‥‥可愛い‥‥。

 笑いを堪えて、後ろから肩をトントンとたたいた。

 振り向いた彼女は僕を見てひどく驚いていた。

 「フィ、フィリップ王子殿下!」

 「ずっと、君を探していたんだ。なかなか見つからなくて‥‥こんな所にいたの?」
 
 僕は彼女の前に跪き、彼女の右手の甲にキスをした。

 「また会いたいとずっと思っていたんだよ。今日もとても綺麗だね。」

 彼女は真っ赤になり、固まっていた。

 「さあ、会場へ戻ろう。弟とカーラー嬢にも声を掛けているよ。」

 会場に彼女をエスコートして戻ると、カーラー嬢と、嬉しそうに駆け寄って来る弟がいた。母上もこちらを見て微笑んでいる。そして、厳しい表情で彼女を見つめる御令嬢達もいた。彼女に冷たく当たると許さない‥‥。

 「さあ、マリアンヌ、こちらに座って。」

 「はい。ありがとうございます。」

 僕は彼女の右隣に座って、お茶やお菓子を勧めた。お菓子を食べている彼女は本当に可愛い。顔が自然とにやけてしまう。他の御令嬢なんてどうでもいい。

 弟はマリアンヌとカーラー嬢の間に座り、「遊ぼうよー!」と手を引っ張っている。弟はじっとしているのが苦手だ。これから徐々にこういう場にも慣らしておかないといけないな。

 「マリアンヌは来年、学院に入学するんだよね。僕の一学年下になるね。一緒に学院生活が送れるの楽しみだな。」

 「よっ、よろしくお願い致します。あっ、マクゴガナル様とミドルス様は殿下と同級生になられますね!」

 ああ、幼馴染のとローラ・マクゴガナル公爵令嬢と、ミドルス‥‥誰だったかな?ああ、セリア・ミドルス伯爵令嬢か‥‥。今はそんな二人より、マリアンヌと話したい。学園に入ればもっと会う機会もなくなるのだから‥‥。

 「マリアンヌは卒業後のことは決めているの?」

 彼女は僕が二人に話を振らなかったから驚いた表情をしており、同時に青ざめてもいた。

 そして、次に彼女は信じられないことを言い出した。

 「ええ‥‥。学院の医学科へ進みたいと思っております。」

 「えっ!?医学科に!?‥‥それじゃあ、学院には3年間に加え医学科の3年間と、合わせて最低でも6年間は通わないといけないじゃないか!?それに、医学科に女生徒は数える程しかいないよ?」

 「はい。私の幼い頃からの夢なんです。」

 「‥‥‥‥‥‥‥幼い頃からの夢‥‥‥?」

 彼女は女医になりたいのか‥‥!?それじゃあ、僕が婚約を打診すると彼女は夢を諦めざるを得なくなる‥‥。

 ‥‥頭が真っ白になった‥‥。彼女に婚約者になってもらいたかったのに‥‥。

 他の御令嬢達も意外な夢を聞いて口々に珍しいと言っている。そして、その夢は立派で女医がいれば安心だと‥‥。弟も彼女の夢を肯定し、専属医になってほしいとまで言っている。

 ‥‥駄目だ駄目だ!医者は軍医として戦地に赴く者もいるし、咳や血液等を介して感染症になる危険性もある。体力勝負な職業だし、彼女にそんな辛い思いはさせたくない!きっとご両親も本意ではない筈だ。妃となってくれたら、僕は全力で彼女を愛し守り、幸せだと思ってもらえるよう努力する。

 「‥‥‥マリアンヌ?その夢はもう変わらないのか?医師は体力も気力も使うし、危険な仕事だよ?マリアンヌは侯爵家の一人娘じゃないか!?もう少し将来についてご両親とも話し合って考えてみたらどうだい?そしてその選択肢の一つとして、僕との婚約も考えてみてはくれないか?」

 彼女は驚き、愕然とした表情をしていた。

 そして下を向き、黙ってしまった。

 僕は再度彼女に尋ねた。

 「マリアンヌ、どうだろうか?」

 そして彼女は徐に口を開いた。

 「‥‥あの‥‥そのように言って下さり、大変恐縮しております。感謝申し上げます‥‥。ですが、今すぐに婚約者を決められるのはお早いかと思います。これから殿下は学院に行かれ、様々なことを学ばれますし、様々な方とお出会いにもなられます。その後から決められても遅くはないと思います。殿下の大切な婚約者様でございます。どうか後悔をなされませんよう‥‥。」

 やんわりと断られてしまった。

 今まで拒絶された経験はない。王族の申し出は絶対だと自負していたこともあり、かなりショックを受けた。医師の夢の他に好きな人でもいるのだろうか?‥‥あの優秀な義兄弟とか‥‥?

 「マリアンヌは誰か慕っている人がいるの?」

 「‥‥いえ、そのような方はおりません。今は夢に向かって勉学に励みたいと思っているだけでございます。」

 「‥‥そう。」

 医師への思いは思ったより強いようだ。

 沈んだ気持ちでいると、母上が話し掛けてこられた。

 「フィリップ?マリアンヌ嬢の言う通り、学院を卒業してから婚約者を選んでも遅くはありませんよ?フィリップにもヘンリーにも婚約者は自分で選んでもらいたいと思っていますから。」

 「‥‥‥そうですね。これから僕もより努力して自分自身を磨こうと思います。婚約の申し込みをした際に、その方に了承してもらえるように‥‥。」

 「そうですね。頑張るのですよ、フィリップ。」

 断られたのは僕に魅力がないからだ。もっと自分自身を磨いて成長し、彼女に僕を好きになってもらわねば‥‥。

 気落ちした僕に御令嬢達は声を掛けてくれたり、飲み物を勧めたりしてくれる。セリア・ミドルス伯爵令嬢は僕に優しく触れながら優しい笑顔を見せてくれる。幼馴染のローラも気を遣ってくれている。‥‥他の御令嬢達にも目を向けるべきだろうか?だが、僕は彼女を諦めたくはない‥‥。

 彼女はその後、カーラー嬢と共に弟と楽しそうに遊びだした。

 弟もあんなに懐いている‥‥。

 ‥‥どうしたら彼女を手に入れられるだろう?

 ‥‥何か良い方法はないだろうか‥‥!?


 
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