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第二章 ノアは絶対死なせない!
第二十六話 ノアside⑤
しおりを挟むマリアンヌとルーカスの姿が朝から見当たらない。
ルーカスに何かされてるんじゃないのか!?あいつは気配も消せるし‥‥!
「おいっ!ショーン!来てくれ!」
ショーンに事情を話し、一緒に探す。
広い邸内を隈なく探し、使用人にも行方を尋ねるが見つからない。手入れをしていた庭師に尋ねると、実験用植物を栽培している温室の方へ歩いて行くのを見たという。
温室で何してるんだ!?二人で全速力で駆け出す。
「‥‥やっと見つけた‥‥。何やってんだ!?あんなところで‥‥!?」
ルーカスは勿論、危機感のないマリアンヌにも怒りが湧き出す。横目でショーンを見ると、ショーンの顔にも怒りがあらわれているのが分かった。
「「何やってんだよ!」」
聞くと、解毒魔法を練習していたという。自分のために練習していた旨を聞き、怒りは少し和らいだが、ルーカスの邪魔され苛つく表情をみると沸々と怒りが湧いてくる。
そんな僕達を見てマリアンヌはオロオロしているが‥‥。男と二人きりになるなとあれ程言っただろ!?
入学を間近に控え、入学準備や義父の補佐の引き継ぎ等、忙しい時期ではあるが、マリアンヌとルーカスを二人きりにしない為、明日から僕も解毒魔法の訓練とやらに参加することにした。
ルーカスの奴、かなり不機嫌になっているな。お前の思い通りになんてならないよ。
「ルーカス、残念だったな。」
「は?何が?」
かなり殺気だっているルーカス。
「明日からよろしくな!」
「‥‥チッ!」
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温室内に魔法が交差する。
悔しいがルーカスの魔法は一流だ。静かに息をするように魔法を繰り出している。魔力は強い方だと言われるが‥‥身近にこんな奴がいるからいくら努力しても自信なんてつかない‥‥。
だけど、僕は僕なりの方法で強くなる。ルーカスであっても負けたくはない。
それにしても強大な魔力を有するルーカス。本人はかなりのんびりしている方だから、悪意のある誰かに利用されたりはしないだろうか?マリアンヌのことは別として、長男として義弟と侯爵家は守らないといけない。
「ルーカス、悔しいがお前ほど魔法が出来る奴は見たことがない。将来の目標はあるのか?」
「‥‥さぁ、考えたことはないね。強いて言えば、マリアンヌのお婿さんかな。」
飄々と答えるルーカス。こいつ‥‥真剣に話しているのに‥‥本当にムカつく。
「‥‥これだけは忠告しておくが、お前の魔力は規格外に強いし、お前は考えが幼いところがあるから、悪用されないよう気をつけるんだな!侯爵家に迷惑をかけることになる。それとマリアンヌは誰にも渡さないよ。」
「‥‥ふーん。僕も渡さないよ?」
二人で睨み合う。
そして、マリアンヌの方を見ると、
マリアンヌとショーンは少し離れた所で毒に侵された花に必死で解毒魔法をかけている。ピクリともしない対象物を見て二人で肩を落としている。
あの二人、相変わらず魔法が苦手だな。
ピリピリとした空気が和らぎ、クスリと笑みが溢れる。
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入学を目前に控えたある日、またあの王子から招待状が届いた。今度はマリアンヌだけが招待されており、婚約者まで選ぶと書かれている。
入学すると忙しくなるから今のうちに‥‥といったところかな。
だが、マリアンヌは王子を毒殺の犯人だと思い込んでいるし、ショーンに火傷を負わせた人物でもあるから、今度は容易に王子に近付いたりはしないだろう‥‥と信じたい。
しかし、お茶会で事件は起こった。
王子とマリアンヌは二人きりにはならなかったが、王子は皆の前で婚約を打診したらしい。
皆の前で公言するとは‥‥思った以上にマリアンヌに執着しているな。
だが、それ以上に驚いたのは、彼女が王妃も含む皆の前ではっきりと断ったと聞いたことだ。
マリアンヌ‥‥思ったより肝が座っているな。不敬罪に問われなくて本当に良かった。
理由としては「医師になりたい」と言ったそうだが、ほんの片隅にでも僕に対する思いがあったからと言ってほしい‥‥。
本当に僕はいつから彼女をこんなに愛するようになってしまったんだろう‥‥。
そんな気持ちのまま僕は学園に入学し、暫く彼女と離れた生活を送ることとなった。
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