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第二章 ノアは絶対死なせない!
第二十八話 お餅とセリア様
しおりを挟む広場には様々な屋台が並び、あちらこちらから美味しそうな匂いがしていた。
学生達がそれぞれの故郷の特産品や名物を屋台に出しているのだ。
「うわぁ、見たことがない食べ物や商品がいっぱい!」
目を輝かせて辺りを見回していると、
「これは『おもち』と呼ばれる食べ物です。いかがですか?」と、微笑む女学生に声をかけられた。
うわぁ、可愛らしい人!‥‥あれ?どこかで見たことがあるような‥‥あっ!?
「セリア様!?」
「ふふっ!お久し振りです。マリアンヌ様。そちらは義弟様ですか?ノア様も素敵ですが、義弟様も噂通り素敵な方ですね。」
茶色のふわりとした髪に同色の瞳。小柄で可愛らしいセリア・ミドルス伯爵令嬢様だ!
ふわりと微笑むセリア様は本当に可愛らしい。殿下が夢中になるのも分かるわ!‥‥だけど、夢と違って、何故か私まで殿下に絡まれるのは何故かしら‥‥。
そして、ふと義弟達を見ると、セリア様をガン見している!?
もしかして‥‥一目惚れしちゃった!?
「‥‥‥ちょ、ちょっと?」
二人の顔の前で手を振ってみる。
すると、ガシッと手首を掴まれ、
「美味しそう!!食べよう!!」
と、目を輝かせて、セリア様の持つお餅を手に取り、食べ始めた。
‥‥令嬢でなく、お餅を見てたの‥‥?
お金を払い、3人で分け合って食べた。伸びて小さく切れないのでかぶりついて食べたが、口の周りにネチネチついて、かなり汚い食べ方をしてしまったと思う。それでもお餅はとても美味しく、「うわー!うめー!」「美味しい!癖になりそう!」等と言いながら食べた。
「おい、マリアンヌ。口に餅がついてるぞ?」と、不意に2人から突っ込まれ、慌てて口を押さえて赤面する。「何よ!あなた達だって付い‥‥」と言いかけた瞬間、
「とってあげる。」とルーカスが左手で私の頬を押さえ、右手指でお餅を取り、パクッと食べてしまった。
!?
あまりの速さに反応できなかった‥‥!!
「何してんだよ!」とショーンが声を荒げ、私は恥ずかしさのあまり「なっ‥‥なっ!!?」と言葉にならない。
「美味しかった。」と悪びれた様子もなく笑うルーカス。
こんな恥ずかしいこと、しかも人前でやめてよー!!
ショーンがぶつくさと文句を言いながら、私の頬をハンカチで拭ってくれる。
私はあまりのショックに赤面したまま動けなかった‥‥。
母が眉間に皺を寄せて「何て食べ方してるの!?」と呆れ返り、祖母は笑いを堪えている。
セリア様は驚いた表情をしながらも、私達が食べる様子を微笑んで見ておられた。
そして、ショーンの頬についているお餅を「あらあら」と言いながらハンカチで拭われた。突然触れられたショーンは目を見開いて驚き、「うわぁ!」と叫び飛びのいた。そして触れられた頬を押さえ、「急に何すんだよ!?」と文句を言う。その顔は真っ赤になっていた。
うわぁ‥‥セリア様、幼児をお世話する母みたい‥‥。
‥‥ショーン、私なんかもっと恥ずかしい、変態じみたことをされたんだからね!
セリア様は「ふふっ!」と満足気に微笑み、今度はルーカスにも同じことをしようとされた。しかしルーカスは前を向いたまま無表情でセリア様の手をパシッと払い除け、魔法で口についているお餅をさっと消し去った。
「えっ!?」
‥‥消せるの!?それじゃあ、さっきは何であんなことしたの!?
消せるのに人前であんなことをしたことや、優しいセリア様の手を叩いたこと等、ルーカスにひどく腹が立ち「ルーカス!!」と叫んだ。
セリア様も驚いた表情をされていたが、すぐにルーカスをうっとりとした瞳で見つめられるようになり、「すごい魔力をお持ちなんですね。今度私にも魔法を教えて頂きたいわ。」と懲りずにまたルーカスに手を伸ばされる。
セリア様!何ですぐ触ろうとするの!?ルーカスもお願いだから失礼なことしないで‥‥!
‥‥私の願いは叶わず、無情にもルーカスはその手を魔法で払い除け、「お前気持ち悪いんだよ。」と言い放った。
‥‥オマエ、キモチワルインダヨ‥‥
辺りが一気に気不味い雰囲気となった。
「‥‥‥。」
セリア様は「‥‥きっと、恥ずかしがり屋さんなのね?ほほほ‥‥。」と引き攣りながら微笑まれている。
が、さらに追い討ちをかけるように「‥‥は!?きもー。」と睨むルーカス。
!?
「「「ルーカス!!」」」
それはいくら何でも彼女に失礼よ‥‥!?‥‥それに、そんなこと言わない子だったよね?いつも従順で可愛らしい子だったよね‥‥?どうしちゃったの!?
母と祖母は「女性にそんな態度をとるんじゃありません!」とルーカスにきつく注意し、セリア様には謝罪された。ルーカスも「何で謝罪なんか‥‥」と不貞腐れていたが、2人の圧に負け、セリア様に謝罪していた。
セリア様は笑って許して下さり、安心していたのだが、歩き出した私達の後ろ姿を恐ろしい形相で睨まれていたとは、この時は知る由もなかった‥‥。
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