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第二章 ノアは絶対死なせない!
第五十話
しおりを挟むライトアップされた壇上でノアは堂々と挨拶をしている。時折見せるキラキラした笑顔に令嬢達はほぅ‥と蕩けるような表情になっているし、令息達は羨望の眼差しを向けている。
‥‥ノア、堂々としてすごいなぁ。私なんて入学式の時に気絶して、新入生代表挨拶すら出来なかったんだから‥‥情けないわ。皆様に迷惑をかけるし、自分自身が本当嫌になってしまうわ。はぁー。
割れんばかりの拍手に包まれて、ノアは壇上を後にした。続いてフィリップ王子殿下の挨拶が始まる。
鍛えられた体躯に精悍な顔つきの殿下。堂々とした風格はさすが王族と思わずにはいられなかった。会場がノアとは違った緊張感に包まれている。そして令嬢達の目はハートになっていた。
‥‥さすが殿下ね。普段の殿下とは別人のようだわ。皆が惚けるのも分かるわ。
「‥‥‥‥‥‥。」
‥‥こんな情けない自分がこんな輝かしい二人に寵愛を受けていると思われてるのよ?そりゃあ、腹も立つわね‥‥。
‥‥何だか泣きたくなってきたわ。
‥‥何度も思うけど2人は何で私に‥‥?
‥‥そっとしておいてほしいのに‥‥。
‥‥もし揶揄っているんだったら許さないんだからっ!!
色々思いを巡らしていたが、割れんばかりの拍手が耳に飛び込み、はっと我に返った。
そうだわ!もうすぐノアが戻ってくるわ!もしかすると殿下も来てしまうかも!1人は心細いけど、こんなところで2人にまたおかしなことされたら‥‥!?
周囲を見渡すと、やはりまだこちらを悪意ある表情で見つめる令嬢が多い。こんなところでまた‥‥!!
そんなの耐えられないっ!それなら1人の方がずっといいわ!
思わずトイレに行くふりをしてその場を後にした。
はしたないけれど、やや早足で廊下へと出る。殆ど人がいない廊下を早足で歩き、休める場所を探す。
‥‥あっっ!?
いけないっ!何してるの私!?私こんなことしている場合ではなかったわっ!反射的に逃げて来てしまったけれど、私には大事な使命があったのにっ!!
ノアが毒殺されてしまう!!
もうっ!本当にどこまで馬鹿なのよ私!!!
急いで戻ろうと踵を返した瞬間、
「きゃっ!?」
黒スーツにサングラスの男性に腕を掴まれた。小声で「大人しくしろ」と脅しまでかけてくる。
!?
誰っ!?学園に不審者!?
振り解こうとするが全く歯が立たない。15歳の少女が屈強な男性に力で敵うはずがない。
「はっ、離して下さい!」
「悪いな嬢ちゃん。これも仕事でな。」
本当に不審者だったわ!?このままじゃ捕まってしまうわっ!
かくなる上は‥‥
‥‥魔法を使うしかない!
「うわぁっ!?うおぅ!?」
私は咄嗟に男性の両足に氷魔法を繰り出し、床にくっつけた。足が凍り、痛みも伴い、男性はもがき苦しんでいる。
「待てっ!」
もう1人追ってきた男性にも同じく魔法を繰り出し、急いで会場へと戻る。
「はぁ、はぁ、あまり離れてなくて良かったわ。」
会場へと飛び込み、係員に扉を閉めてもらって漸く安堵し、深呼吸をした。
‥‥さっきの何だったの!?
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