16 / 32
たまにはキッシュを焼いてみる
しおりを挟む
野菜は高いけれど、たまにはセールがあることもある。
近所のスーパーには定期的に産地直送の車がやってきて、スーパーの敷地内で野菜の大売り出しをしている。そこで「うわあ」と声を上げた。
ほうれん草。なんにでも使えるほうれん草。ほうれん草が安い。たくさん買っておいて、茹でて小分けに冷凍させておけばずっと食べることができる。
私はうきうきとほうれん草を買うと、ふと思いついて冷凍庫の近くに行ってみた。
「さすがに安くないかあ……」
折角ほうれん草を買うのだから、キッシュを焼いてみようかと思ったものの、本日はあまりパイ生地が安くない。どうしようとかなと思っていたら、冷凍庫近くのパンコーナーが命に入った。ちょうどパンが賞味期限切れ間近で半額になっている。
これだ。私はそう思い立つと、パンを買い、卵とベーコンも買って帰ることにした。
生クリームは高いから買わない。家にある牛乳で充分だ。
家に帰ると、早速ほうれん草のラベルをむしって根っこを落とすと、それを茹でて小分けに分けた。
味噌汁の浮き実、うどんやパスタの具、レンジでチンしてマスタードとマヨネーズと混ぜてパンに載せてオープンサンドでもいい。
久々の新鮮な野菜にうきうきしていたら、「ミュミュウ?」と困った顔でリリパスが顔を出してきた。
「あら、いらっしゃい」
「今日は麦茶じゃありませんの?」
「さすがにほうれん草と麦茶はちょっと合わないかな」
「ミュミュウ? 葉っぱ?」
「ほうれん草ね。今は今日使う分以外は茹でて冷凍させてるところ。ほい終わり」
これだけほうれん草あったら困らないだろう。しばらくは食べ放題だ、やったあ。
そう思いながら残ったほうれん草を見つめつつ、「よし」とベーコンを拍子切りに切りはじめた。リリパスは不思議そうな顔をしている。
「これはなんですの?」
「キッシュを焼こうかと。前に見たフレンチの先生がやってたパイ生地を使わない奴」
「きっしゅ?」
「フランスの郷土料理らしいよ。今だったら、三時のティータイムのおやつの中にひと切れくらい入ってるかなあ」
そんなことを言いながら、私はベーコンを炒めはじめた。香りがある程度出てきたら、茹でたほうれん草と混ぜて、塩胡椒で味を調える。
卵を溶いて牛乳と混ぜ、出来上がった卵液に、少し冷ましたベーコンとほうれん草を混ぜる。これで具ができた。
次は買ってきた半額セールの食パン。それの耳を落として、三枚くらいをフライパンに入るくらいの大きさに並べてから、ラップで挟んで麺棒で伸ばす。
それらを怪訝な顔でリリパスは眺めていた。
「ぺっしゃんこですけど……」
「こうしないと伸ばせないからねえ」
フライパンにクッキングペーパーを敷いたら、その上にパンを敷き詰めて、器上に形を整えてから、卵液を流しかけて焼く。卵液がある程度固まったら出来上がり。
パンの香ばしい匂いと卵液の中のベーコンの香りが、食欲をそそってきた。
「ミュミュウ……」
「今日は食べたい気分だったからだけど、普段こんなに手の込んだこと滅多にしないから」
元気がなかったらキッシュなんて焼けないし、食べられない。最近は魔法少女活動のおかげで胃の負担が大分薄まってきているから、ようやっと食べれそうなんだ。
焼き上がったキッシュをフライパンの中で包丁で切り分け、リリパスの分もお皿に入れてあげながら、私も昼ご飯分を持ってきた。
「うん。キッシュは本当はパイ生地が一番おいしいんだけど……やっぱりパン生地のもおいしい。ピザもなんだかんだいってパン生地のが一番おいしいもんなあ」
「そうなんですの? ……おいしいですぅ」
「そういうもんだよ。さすがに今日はピザ早く元気ないからつくらないけど」
余ったパンの耳は、まとめて取っておいて、おろし金で削ってフライにでもしようかなあ。お菓子もつくれるけど、つくりたい気分だったらつくろうかなあ。
のんびりとキッシュを食べ終え、残った分は今晩の夕食にしようとラップをしていたら、リリパスの耳がピクンと跳ねた。
「ナナ様! 闇妖精です!」
「最近多いね……なんだかんだ言ってブログも続けてるのになあ」
「飽食の影響なんでしょうね。場所はそこの住宅街です!」
「……休みの日の住宅街はまずいんじゃないかな」
私はベランダに出ると、リリパスの出してくれたカレイドタクトに手を伸ばす。
「カレイドスコープ、オープン!」
食後の運動として、こうして真昼に魔法少女に変身して出動することとなった。
今日は特に食べたいものがないから、財布はいいかと思いながら。
近所のスーパーには定期的に産地直送の車がやってきて、スーパーの敷地内で野菜の大売り出しをしている。そこで「うわあ」と声を上げた。
ほうれん草。なんにでも使えるほうれん草。ほうれん草が安い。たくさん買っておいて、茹でて小分けに冷凍させておけばずっと食べることができる。
私はうきうきとほうれん草を買うと、ふと思いついて冷凍庫の近くに行ってみた。
「さすがに安くないかあ……」
折角ほうれん草を買うのだから、キッシュを焼いてみようかと思ったものの、本日はあまりパイ生地が安くない。どうしようとかなと思っていたら、冷凍庫近くのパンコーナーが命に入った。ちょうどパンが賞味期限切れ間近で半額になっている。
これだ。私はそう思い立つと、パンを買い、卵とベーコンも買って帰ることにした。
生クリームは高いから買わない。家にある牛乳で充分だ。
家に帰ると、早速ほうれん草のラベルをむしって根っこを落とすと、それを茹でて小分けに分けた。
味噌汁の浮き実、うどんやパスタの具、レンジでチンしてマスタードとマヨネーズと混ぜてパンに載せてオープンサンドでもいい。
久々の新鮮な野菜にうきうきしていたら、「ミュミュウ?」と困った顔でリリパスが顔を出してきた。
「あら、いらっしゃい」
「今日は麦茶じゃありませんの?」
「さすがにほうれん草と麦茶はちょっと合わないかな」
「ミュミュウ? 葉っぱ?」
「ほうれん草ね。今は今日使う分以外は茹でて冷凍させてるところ。ほい終わり」
これだけほうれん草あったら困らないだろう。しばらくは食べ放題だ、やったあ。
そう思いながら残ったほうれん草を見つめつつ、「よし」とベーコンを拍子切りに切りはじめた。リリパスは不思議そうな顔をしている。
「これはなんですの?」
「キッシュを焼こうかと。前に見たフレンチの先生がやってたパイ生地を使わない奴」
「きっしゅ?」
「フランスの郷土料理らしいよ。今だったら、三時のティータイムのおやつの中にひと切れくらい入ってるかなあ」
そんなことを言いながら、私はベーコンを炒めはじめた。香りがある程度出てきたら、茹でたほうれん草と混ぜて、塩胡椒で味を調える。
卵を溶いて牛乳と混ぜ、出来上がった卵液に、少し冷ましたベーコンとほうれん草を混ぜる。これで具ができた。
次は買ってきた半額セールの食パン。それの耳を落として、三枚くらいをフライパンに入るくらいの大きさに並べてから、ラップで挟んで麺棒で伸ばす。
それらを怪訝な顔でリリパスは眺めていた。
「ぺっしゃんこですけど……」
「こうしないと伸ばせないからねえ」
フライパンにクッキングペーパーを敷いたら、その上にパンを敷き詰めて、器上に形を整えてから、卵液を流しかけて焼く。卵液がある程度固まったら出来上がり。
パンの香ばしい匂いと卵液の中のベーコンの香りが、食欲をそそってきた。
「ミュミュウ……」
「今日は食べたい気分だったからだけど、普段こんなに手の込んだこと滅多にしないから」
元気がなかったらキッシュなんて焼けないし、食べられない。最近は魔法少女活動のおかげで胃の負担が大分薄まってきているから、ようやっと食べれそうなんだ。
焼き上がったキッシュをフライパンの中で包丁で切り分け、リリパスの分もお皿に入れてあげながら、私も昼ご飯分を持ってきた。
「うん。キッシュは本当はパイ生地が一番おいしいんだけど……やっぱりパン生地のもおいしい。ピザもなんだかんだいってパン生地のが一番おいしいもんなあ」
「そうなんですの? ……おいしいですぅ」
「そういうもんだよ。さすがに今日はピザ早く元気ないからつくらないけど」
余ったパンの耳は、まとめて取っておいて、おろし金で削ってフライにでもしようかなあ。お菓子もつくれるけど、つくりたい気分だったらつくろうかなあ。
のんびりとキッシュを食べ終え、残った分は今晩の夕食にしようとラップをしていたら、リリパスの耳がピクンと跳ねた。
「ナナ様! 闇妖精です!」
「最近多いね……なんだかんだ言ってブログも続けてるのになあ」
「飽食の影響なんでしょうね。場所はそこの住宅街です!」
「……休みの日の住宅街はまずいんじゃないかな」
私はベランダに出ると、リリパスの出してくれたカレイドタクトに手を伸ばす。
「カレイドスコープ、オープン!」
食後の運動として、こうして真昼に魔法少女に変身して出動することとなった。
今日は特に食べたいものがないから、財布はいいかと思いながら。
0
あなたにおすすめの小説
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる