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七日間から抜け出せない
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私がある日突然、同じ七日間を繰り返していると気付いたのは、本当に突然だった。
おかしいとは思っていたのだ。
家事を終えたお母さんがリビングで見ていた映画がどうにも見覚えがあり「また見てるの?」と思わず聞いたら、変な顔をされてしまったのだ。
「この映画、今日がテレビ初登場なんだけど? この映画はCMもあまりなかったから、見てるはずないんだけど」
「ええ……」
たとえば美月と話をしていても、美月が読んでいた本に覚えがあった。水彩で描かれた花の表紙は綺麗で、「この本まだ読み終わってなかった?」と何気なく聞いたら、やっぱり美月にも変な顔をされてしまったのだ。
「今日から読みはじめた本だったんだけど……晴夏ちゃん本屋にもあんまり行かないのにどうして知ってるの? もしかして明晰夢《めいせきむ》?」
「めいせきむ? なにそれ」
「夢ではっきりと預言みたいなものを見ることだよ。どこかでそんな夢見なかった?」
そうは言っても、普段からスマホを使っていて寝落ちしている私は、夢なんてまともに見たことがない。
「ごめん、多分見てなかったと思うんだけど」
「そーう?」
そこで話は終わってしまった。
でも、やっぱり変なんだ。
小テストの内容に覚えがあったから、満点取ってしまった。小テストでほぼ全員が間違えた引っかけ問題を、先生が鼻高々に解説していたのを覚えていたから、それに引っかからずに答えたら、先生に驚かれてしまった。
「この問題、誰も答えられないつもりだったんだけど、よく解けたな!?」
その日は悪目立ちしてしてしまい、どうすればいいのかわからなかった。
いよいよ私はなんだかおかしいと思い、スケジュール帳の無記入ページを開くと、そこに私の予定を書き出してしまった。
【金曜日:曇り。近所で魚を炭火で焼いていたせいで、洗濯物に匂いが移ってしまった。洗濯物はその日は家の中で干す
土曜日:お父さんの会社でトラブルがあり、休日出勤。遅くなって帰ってくるから、軽めのご飯を用意しておかないと、夫婦喧嘩が怒ってしまう
日曜日:スマホの調子が悪くてスマホ屋で診てもらう。時間がかかって仕方がない。スマホがないと暇】
ざっくりとしか書いてないけれど、ところどころは大きめな話なため、さすがにこれが外れたら私の気のせいってことになるけれど。
金曜日、私は「なんか鳥がずっと飛んでるから、今日は家の中で干したほうがいいよ。フンされるかも」と嘘ついて、仕事前に洗濯物を干していたお母さんを止めてから学校に出かけて帰ってきたら、パート上がりのお母さんはかなり機嫌がよかった。
「晴夏が止めてくれてよかった。今日、うちのマンションのベランダで火鉢使って魚を焼いた人がいるって管理人さん教えてくれたのよ。炭火で洗濯物に匂いが移ったとかなんとか」
「あー……」
こんなニッチ過ぎる夢、やっぱり見た覚えがない。
お父さんの休日出勤も、スマホの故障も全部起こってしまった。
いよいよ私は自分の様子がおかしいと気付いて、次の日起きたものの。
スマホのカレンダーを見たら、たしかに一週間前に時間が戻ってしまったのだ。
「……嘘ぉ」
思わず自分の手帳をペラペラ捲るけれど、自分がたしかに書き出した金土日のこれから起こることの記述が全部消えてしまっていた。
私は何気なく美月に「今日見た夢だけれど」と前置きをして、話をしてみたら首を捻られてしまった。
「なにそれ。映画? SFだとお約束なんだけれど」
「そうなの?」
「うん。同じ日を繰り返す、タイムループって呼ばれている現象。何度も何度もやり直してしまうんだってさ」
「それだあ……それって、やめることはできるの?」
「それは話によっても違うけど……でも晴夏ちゃん、その話面白そう。どこでそんな話見たの?」
「……ネットの書き込みで見かけたんだけど、すぐ流れちゃったから探せなくなっちゃって」
「そっかあ」
あまりにも無理がある嘘だったけれど、なんとか美月は信じてくれた。
とにかく私は、美月に言われた【タイムループ】についてネット検索をかけてみることにした。
タイムループ。調べてくると、長々とした説明が出てきて目が滑るけれど、だいたいの内容はこうだった。
ある一定期間の時間帯をずっと繰り返す現象のこと。その繰り返しを楽しむか、悲観するか、どうにかしてその閉じ込められた時間帯から抜け出そうとするかは、作品にもよると。どうもSFの中でも、ほとんどの原因はそういうものとされて、わからないらしい。原因がわかってなんとかしようとするのは、マンガやライトノベルに多いということ。
「……じゃあこれ、どうすればいいの?」
そもそも誰も七日間を繰り返していると言っても信じてくれないだろうに、どうすればいいんだろう。
方法がわからない以上、仕方ないからどうにかこの状況を楽しめないかと、ルールをつくることにした。
一日目:普通に過ごす
二日目:パターンを外して過ごす
三日目:普通に過ごす
四日目:パターンを外して過ごす
五日目:残りの三日間は普通かパターン外かを決める
六日目:五日目に決めたルールで過ごす
七日目:五日目に決めたルールで過ごしたあと、日記を書く
とりあえず、一週間経ったら書いたものは消えてしまうし、送ったメールは消えているし、いろんなことがリセットされてしまう。
でもこれだけルールを決めたら、なんとかなるだろう。
そう思っていたけれど、私は甘かったように思う。
……ほんっとうに、甘かったんだ。
おかしいとは思っていたのだ。
家事を終えたお母さんがリビングで見ていた映画がどうにも見覚えがあり「また見てるの?」と思わず聞いたら、変な顔をされてしまったのだ。
「この映画、今日がテレビ初登場なんだけど? この映画はCMもあまりなかったから、見てるはずないんだけど」
「ええ……」
たとえば美月と話をしていても、美月が読んでいた本に覚えがあった。水彩で描かれた花の表紙は綺麗で、「この本まだ読み終わってなかった?」と何気なく聞いたら、やっぱり美月にも変な顔をされてしまったのだ。
「今日から読みはじめた本だったんだけど……晴夏ちゃん本屋にもあんまり行かないのにどうして知ってるの? もしかして明晰夢《めいせきむ》?」
「めいせきむ? なにそれ」
「夢ではっきりと預言みたいなものを見ることだよ。どこかでそんな夢見なかった?」
そうは言っても、普段からスマホを使っていて寝落ちしている私は、夢なんてまともに見たことがない。
「ごめん、多分見てなかったと思うんだけど」
「そーう?」
そこで話は終わってしまった。
でも、やっぱり変なんだ。
小テストの内容に覚えがあったから、満点取ってしまった。小テストでほぼ全員が間違えた引っかけ問題を、先生が鼻高々に解説していたのを覚えていたから、それに引っかからずに答えたら、先生に驚かれてしまった。
「この問題、誰も答えられないつもりだったんだけど、よく解けたな!?」
その日は悪目立ちしてしてしまい、どうすればいいのかわからなかった。
いよいよ私はなんだかおかしいと思い、スケジュール帳の無記入ページを開くと、そこに私の予定を書き出してしまった。
【金曜日:曇り。近所で魚を炭火で焼いていたせいで、洗濯物に匂いが移ってしまった。洗濯物はその日は家の中で干す
土曜日:お父さんの会社でトラブルがあり、休日出勤。遅くなって帰ってくるから、軽めのご飯を用意しておかないと、夫婦喧嘩が怒ってしまう
日曜日:スマホの調子が悪くてスマホ屋で診てもらう。時間がかかって仕方がない。スマホがないと暇】
ざっくりとしか書いてないけれど、ところどころは大きめな話なため、さすがにこれが外れたら私の気のせいってことになるけれど。
金曜日、私は「なんか鳥がずっと飛んでるから、今日は家の中で干したほうがいいよ。フンされるかも」と嘘ついて、仕事前に洗濯物を干していたお母さんを止めてから学校に出かけて帰ってきたら、パート上がりのお母さんはかなり機嫌がよかった。
「晴夏が止めてくれてよかった。今日、うちのマンションのベランダで火鉢使って魚を焼いた人がいるって管理人さん教えてくれたのよ。炭火で洗濯物に匂いが移ったとかなんとか」
「あー……」
こんなニッチ過ぎる夢、やっぱり見た覚えがない。
お父さんの休日出勤も、スマホの故障も全部起こってしまった。
いよいよ私は自分の様子がおかしいと気付いて、次の日起きたものの。
スマホのカレンダーを見たら、たしかに一週間前に時間が戻ってしまったのだ。
「……嘘ぉ」
思わず自分の手帳をペラペラ捲るけれど、自分がたしかに書き出した金土日のこれから起こることの記述が全部消えてしまっていた。
私は何気なく美月に「今日見た夢だけれど」と前置きをして、話をしてみたら首を捻られてしまった。
「なにそれ。映画? SFだとお約束なんだけれど」
「そうなの?」
「うん。同じ日を繰り返す、タイムループって呼ばれている現象。何度も何度もやり直してしまうんだってさ」
「それだあ……それって、やめることはできるの?」
「それは話によっても違うけど……でも晴夏ちゃん、その話面白そう。どこでそんな話見たの?」
「……ネットの書き込みで見かけたんだけど、すぐ流れちゃったから探せなくなっちゃって」
「そっかあ」
あまりにも無理がある嘘だったけれど、なんとか美月は信じてくれた。
とにかく私は、美月に言われた【タイムループ】についてネット検索をかけてみることにした。
タイムループ。調べてくると、長々とした説明が出てきて目が滑るけれど、だいたいの内容はこうだった。
ある一定期間の時間帯をずっと繰り返す現象のこと。その繰り返しを楽しむか、悲観するか、どうにかしてその閉じ込められた時間帯から抜け出そうとするかは、作品にもよると。どうもSFの中でも、ほとんどの原因はそういうものとされて、わからないらしい。原因がわかってなんとかしようとするのは、マンガやライトノベルに多いということ。
「……じゃあこれ、どうすればいいの?」
そもそも誰も七日間を繰り返していると言っても信じてくれないだろうに、どうすればいいんだろう。
方法がわからない以上、仕方ないからどうにかこの状況を楽しめないかと、ルールをつくることにした。
一日目:普通に過ごす
二日目:パターンを外して過ごす
三日目:普通に過ごす
四日目:パターンを外して過ごす
五日目:残りの三日間は普通かパターン外かを決める
六日目:五日目に決めたルールで過ごす
七日目:五日目に決めたルールで過ごしたあと、日記を書く
とりあえず、一週間経ったら書いたものは消えてしまうし、送ったメールは消えているし、いろんなことがリセットされてしまう。
でもこれだけルールを決めたら、なんとかなるだろう。
そう思っていたけれど、私は甘かったように思う。
……ほんっとうに、甘かったんだ。
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