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騎士団への片道切符
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あれだけ発掘師になりたいと言っていたリアが急に騎士団に入りたいと言い出したのには、周りは当然ながら困惑した。
「騎士団に入るなんて……前線に出たら死ぬかもしれないのに!」
「ええっと……でも、魔法を覚えたいから」
さすがにリアも「騎士団に入ったら重騎士になれる。重騎士になったら遺跡の封印が解ける際にも対抗できる」なんて本当のことを言える訳もなく、必死に嘘を重ねるしかなかった。
そうは言っても、元々遺跡が好きなのだから、遺跡を絡めて説明しなければ周りが納得するはずもなく、言い訳もしどろもどろとしたものだった。
「遺跡で発掘作業をする際、なにかと危険だと思うから、魔法を覚えたほうが安全だし。騎士団に入って、魔法をしっかりマスターしてからでも、発掘師になるのは遅くないかと思って……」
「……あれだけ遺跡に潜りたい、魔動具を掘り当てたいって言っていた子が、そんなに段階踏んで目標立てるなんて……」
実際問題、遺跡に潜る際、遺跡泥棒と戦う際も道が狭く天井も低い場所では戦い方は限られる。剣術だって狭い場所特化の戦い方でなければならず、それなら魔法を覚えて手数を増やしたほうがよっぽど早い。
リアの言葉に、迷いつつも母は言う。
「でも、あなた学校を中退して騎士って……卒業してからじゃ駄目なの?」
「駄目」
リアは必死であった。
(六年間猶予があるけれど、猶予があるからって無駄にはできない。六年後にプロセルピナの遺跡再起動に間に合わなかったら、キラーのせいで街が全滅しちゃう)
あんなもの、重騎士でなければ対処できない以上、重騎士になったリアが間に合わなかったら対処なんて不可能だ。
リアの言葉に、両親は顔を見合わせる。
「……学校を中退する以上、ちゃんとやれることはやるんだぞ?」
「わかってます」
「今までは学生だからってなにかとわがまま言えたけれど、騎士団に入団したら最後、大人扱いで絶対に子供扱いはしてもらえないからね」
「覚悟の上です」
何度も何度も念を押されたものの、リアもどうにか魔法を覚えなければいけないため、こちらも必死だった。最悪両親が首を縦に振ってくれなきゃ隣町の騎士団に入るために家出結構も視野に入れていたが、結局は折れてくれた。
両親が退学届を出してくれたのを確認し、リアはいよいよプロセルピナの騎士団駐屯所に入団届を持って出かけていった。
プロセルピナに派遣されている騎士団は、基本的におっとりとした人々であり、リアの欲している重騎士のような装備も持ち合わせていない人々であった。それにはリアも若干の不安が残るが。
(ここから紹介状を書いてもらわなかったら、覚えられる魔法も増えない)
そう思いながらリアは入団届を出した。
「私を……騎士団に入れてください……っ!」
頭を下げるリアは、当然ながら困惑の目で見られた。
「まだ子供じゃないか」
「でも……! 遺跡を守りたい気持ちは本物です!」
「剣は振るえる?」
「剣の才能はあんまりありませんが、魔法ならば」
「そう……なら使ってみて」
団員にそう言われ、リアは呪文を唱えはじめた。
(……幸い、魔力の練り方も呪文詠唱も、覚えていたから持ち越せた。今まで何度も何度もやり直したのに、ここまでいろんなものを持ち越せたことなんてなかったのにな)
リアの使える魔法は、基本的に三種類。
応急処置魔法、簡易的な障壁展開、そして拘束魔法である。ただ一介の発掘師では覚えられる魔法に限度があり、上位互換の魔法を覚えたくば国所属の組織と通じていなかったら許可が下りなかった。
リアが拘束を使うと、団員は「ふむ……」と顎を撫でた。
「……たしかに必要最低限の拘束魔法、応急処置魔法、そして障壁魔法が使えるな」
「はい……ただあくまで全部応急処置です」
「そうだな。これではいざというときに役に立たない。だが。君の障壁魔法には目を見張るものがある」
そう言いながら団員が彼女の張った障壁《バリア》に触れた。
元々リアが必死になってこれを会得したのも、古代兵器を壊す魔法がない以上は、なんとしても逃げる時間をつくらないといけないから、古代兵器に一発で壊せない障壁《バリア》を展開して時間を稼ぐ必要があった。そのためリアのものは、冒険者たちに魔法を教わったときよりも密度が強く、遺跡内で展開したら一体くらいの古代兵器からは充分逃げおおせることができる。
団員はそれをしばらく見ながら、なにかを書きはじめた。
「それは?」
「君の魔法をより強固にすれば、騎士団でも運用できるようになろう。結界師の元に紹介状を書くから、君はそこで一旦修行しなさい」
その紹介状を見て、リアは思わず目を剥いた。
結界師。結界専門の魔法使いであり、さまざまなものの封印を施す専門家でもある。途端にリアの心臓が跳ね上がる。
(もしかして……遺跡が起動してしまってもすぐ封印できるようになるかもしれない……! そうなったら……そうなったらもう、誰も殺されなくって済む……!)
興奮しそうになる気持ちを必死に堪えた。
(でも、唯一の懸念は。結界師さんの住む場所がここじゃないことだ)
紹介状に書かれた場所はプロセルピナからずいぶんと離れた、アウローラの森だ。修行期間がどれだけになるかはわからないが、早めにプロセルピナに帰れるようにならなかったら意味がない。
(イチかバチかだ……ここで結界魔法を覚えて……遺跡起動と同時に即封印をしたら、無駄に人が死ななくって済む)
リアは団員に「ありがとうございます! よろしくお願いします!」と大きく頭を下げ、アウローラに向かう準備をすべく、家に帰ったのだった。
「騎士団に入るなんて……前線に出たら死ぬかもしれないのに!」
「ええっと……でも、魔法を覚えたいから」
さすがにリアも「騎士団に入ったら重騎士になれる。重騎士になったら遺跡の封印が解ける際にも対抗できる」なんて本当のことを言える訳もなく、必死に嘘を重ねるしかなかった。
そうは言っても、元々遺跡が好きなのだから、遺跡を絡めて説明しなければ周りが納得するはずもなく、言い訳もしどろもどろとしたものだった。
「遺跡で発掘作業をする際、なにかと危険だと思うから、魔法を覚えたほうが安全だし。騎士団に入って、魔法をしっかりマスターしてからでも、発掘師になるのは遅くないかと思って……」
「……あれだけ遺跡に潜りたい、魔動具を掘り当てたいって言っていた子が、そんなに段階踏んで目標立てるなんて……」
実際問題、遺跡に潜る際、遺跡泥棒と戦う際も道が狭く天井も低い場所では戦い方は限られる。剣術だって狭い場所特化の戦い方でなければならず、それなら魔法を覚えて手数を増やしたほうがよっぽど早い。
リアの言葉に、迷いつつも母は言う。
「でも、あなた学校を中退して騎士って……卒業してからじゃ駄目なの?」
「駄目」
リアは必死であった。
(六年間猶予があるけれど、猶予があるからって無駄にはできない。六年後にプロセルピナの遺跡再起動に間に合わなかったら、キラーのせいで街が全滅しちゃう)
あんなもの、重騎士でなければ対処できない以上、重騎士になったリアが間に合わなかったら対処なんて不可能だ。
リアの言葉に、両親は顔を見合わせる。
「……学校を中退する以上、ちゃんとやれることはやるんだぞ?」
「わかってます」
「今までは学生だからってなにかとわがまま言えたけれど、騎士団に入団したら最後、大人扱いで絶対に子供扱いはしてもらえないからね」
「覚悟の上です」
何度も何度も念を押されたものの、リアもどうにか魔法を覚えなければいけないため、こちらも必死だった。最悪両親が首を縦に振ってくれなきゃ隣町の騎士団に入るために家出結構も視野に入れていたが、結局は折れてくれた。
両親が退学届を出してくれたのを確認し、リアはいよいよプロセルピナの騎士団駐屯所に入団届を持って出かけていった。
プロセルピナに派遣されている騎士団は、基本的におっとりとした人々であり、リアの欲している重騎士のような装備も持ち合わせていない人々であった。それにはリアも若干の不安が残るが。
(ここから紹介状を書いてもらわなかったら、覚えられる魔法も増えない)
そう思いながらリアは入団届を出した。
「私を……騎士団に入れてください……っ!」
頭を下げるリアは、当然ながら困惑の目で見られた。
「まだ子供じゃないか」
「でも……! 遺跡を守りたい気持ちは本物です!」
「剣は振るえる?」
「剣の才能はあんまりありませんが、魔法ならば」
「そう……なら使ってみて」
団員にそう言われ、リアは呪文を唱えはじめた。
(……幸い、魔力の練り方も呪文詠唱も、覚えていたから持ち越せた。今まで何度も何度もやり直したのに、ここまでいろんなものを持ち越せたことなんてなかったのにな)
リアの使える魔法は、基本的に三種類。
応急処置魔法、簡易的な障壁展開、そして拘束魔法である。ただ一介の発掘師では覚えられる魔法に限度があり、上位互換の魔法を覚えたくば国所属の組織と通じていなかったら許可が下りなかった。
リアが拘束を使うと、団員は「ふむ……」と顎を撫でた。
「……たしかに必要最低限の拘束魔法、応急処置魔法、そして障壁魔法が使えるな」
「はい……ただあくまで全部応急処置です」
「そうだな。これではいざというときに役に立たない。だが。君の障壁魔法には目を見張るものがある」
そう言いながら団員が彼女の張った障壁《バリア》に触れた。
元々リアが必死になってこれを会得したのも、古代兵器を壊す魔法がない以上は、なんとしても逃げる時間をつくらないといけないから、古代兵器に一発で壊せない障壁《バリア》を展開して時間を稼ぐ必要があった。そのためリアのものは、冒険者たちに魔法を教わったときよりも密度が強く、遺跡内で展開したら一体くらいの古代兵器からは充分逃げおおせることができる。
団員はそれをしばらく見ながら、なにかを書きはじめた。
「それは?」
「君の魔法をより強固にすれば、騎士団でも運用できるようになろう。結界師の元に紹介状を書くから、君はそこで一旦修行しなさい」
その紹介状を見て、リアは思わず目を剥いた。
結界師。結界専門の魔法使いであり、さまざまなものの封印を施す専門家でもある。途端にリアの心臓が跳ね上がる。
(もしかして……遺跡が起動してしまってもすぐ封印できるようになるかもしれない……! そうなったら……そうなったらもう、誰も殺されなくって済む……!)
興奮しそうになる気持ちを必死に堪えた。
(でも、唯一の懸念は。結界師さんの住む場所がここじゃないことだ)
紹介状に書かれた場所はプロセルピナからずいぶんと離れた、アウローラの森だ。修行期間がどれだけになるかはわからないが、早めにプロセルピナに帰れるようにならなかったら意味がない。
(イチかバチかだ……ここで結界魔法を覚えて……遺跡起動と同時に即封印をしたら、無駄に人が死ななくって済む)
リアは団員に「ありがとうございます! よろしくお願いします!」と大きく頭を下げ、アウローラに向かう準備をすべく、家に帰ったのだった。
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