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色仕掛け外交(物理)はいかが・1
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こうして、俺はウィルマと連携を取って、吸血鬼強硬派に色仕掛けをして戦力を削り取る……ぶっちゃけハニートラップ大作戦を決行することとなった。
いやぁ……そりゃウィルマも女の子だし、うちにいる僕も女の子だし、俺がするのが一番適任なんだろうけどさぁ……実際、俺というよりもマリオンがこの屋敷を乗っ取ったのだって、ハニートラップだったんだけどさあ……こんなガバッガバな外交でなんとかなるもんかね。
マリオンが問題起こしまくったせいで、エクソシストに通報され、結果としてリズと死に別れる訳だが……これは多分ハニートラップ大作戦でどこかにミスがあったからだよなあ。
ウィルマと文通をして情報交換をする一方、領地の各地の報告書をミヒャエラに見てもらいながらも、吸血鬼強硬派のどこから色仕掛けを決行するかを探っていた。
「なあ、ミヒャエラ。これマジで成功するのかねえ……ハニートラップで土地乗っ取りっていう奴」
「成功させなきゃ意味がありませんよぅ、ご主人様」
領地の報告書を読みやすくまとめ、俺がわからない部分に解説用のメモを付けながら、ミヒャエラはあっさりと言う。
この面白メイドは相変わらず、仕事関係では有能だ。
「第一に、このまま吸血鬼強硬派が暴れ散らかしたら、被害はわたしたちにまで及ぶんですからぁ。実際にエクソシストもかなりご立腹ですし、吸血鬼絶対殺すになっています。わたしたちはともかく、夜にしか動けない眷属たちより、昼夜関係なく組織立っているエクソシストのほうが有利なのは明らかです。だとしたら、吸血鬼強硬派をさっさと鎮めて、残りの人生静かに過ごしてエクソシストの怒りが冷めるのを待つしかないですし」
「まあ……たしかにそうなんだけどな」
「ちなみにシュタウフェンベルク様より、早速ここはどうかという作戦指示がありましたが」
「ウィルマから?」
俺が報告書に目を通している間に、しっかりとウィルマの手紙を見つけていたらしい。
ペーパーナイフでさりさり封を切って読む。
「ん-……このマルティン家っていうのは、どういうところ?」
「ああ! あそこ、吸血鬼内でも評判が、超悪いところですよぉ!」
「そうなの?」
しかしなあ……マルティン家。なんか聞いたことがある……。
妹の『禁断のロザリオ』の様子を覗き見している中で、なにかあったかな……。
俺はうんうん妹のゲームプレイ内容を思い返そうとする中、ミヒャエラがプリプリ怒りながら教えてくれた。
「あそこ、美人な子女を集めてるのが趣味なんです」
「なにそれ。眷属にしてはべらかすとか?」
「それだったらまだいいですよ。でもあそこ、穏健派や中立派は吸血鬼であらずっていうくらいに、吸血鬼すら手にかけるんですから」
「ん? でも俺たちって戦闘能力あるはずだよな……?」
マリオンの力を引っ張り出したとき、前世の自分だったらまずできないくらいの怪力や、剣の腕を見せつけていた。それで吸血鬼業界じゃ弱いとされたら困る。
ミヒャエラはなおもプリプリ怒っている。
「あれ、人間吸血鬼問わず、美しい女性を見たら蝋人形にして鑑賞するっていう根っからの変態ですもん」
「あ、それだ」
「はい?」
「いや……なんでもない」
思い出した。
妹がうちでゲームやっている際に、血塗れでイケメンたちが戦っているなと思いながらビールを飲んでいた舞台が、ちょうど蝋人形だらけの屋敷だったんだ。
本当にちょろっとだけマルティン家の名前も出ていたはず。
でも……あそこにプレイヤーでありヒロインであるリズがいたってことは……どのルートかは知らんが、リズが誘拐されて蝋人形にされかけるってことだよな?
俺はギリッとした。
これは死んだマリオンだって「うちの妹を蝋人形にするなんて生かしちゃおけん。死ね」になってもおかしくはないだろう。
「じゃあ、まずはそこだな。作戦も考えなきゃ駄目だな。そいつ、蝋人形にする人間や吸血鬼をどうやって選んでいるのかも探りを入れないと」
「そうですねえ。このあたりもシュタウフェンベルク様と連携を取らなければいけませんね。なるべく早くにことを進めましょう。とにかく変態は死ねです」
「珍しいな、ミヒャエラが珍しく怒るなんて」
「そりゃ当然ですよぉ」
ミヒャエラは握りこぶしをする。
「生きてない美人になんの価値もありませんしっ! あの変態、可愛い可愛い男の娘まで蝋人形にしているんですよ!? 羞恥で追い込んで追い込んでやっと開花させる色気に美があるというのに、その美を蝋漬けにしたら、そんなもん美少女となんら変わらないですよぅ! 寝言は寝て言ってくださいっ!」
「いや、お前のフェチズムも全然俺はわかんないからね!? どっちも普通に気持ち悪いから!」
「ようし、ご主人様に足りないのは羞恥ですから、わたしも頑張って追い込んで追い込んで立派に開花させてみせますからね!」
「いらんわっ、帰れっ!」
……ミヒャエラの変態的趣向はさっぱりわからんが。あのマルティンっていうのが男女問わずに狙う変態だということだけはよく理解できた。
まあ乙女ゲーム的にはあれだな。男女問わず美を見出すってところに耽美的趣向があるんだろう……ミヒャエラが乙女ゲームに出禁になったのは、まあそういうことなんだろうな、多分。
****
大雑把な作戦としては、ベルガー家当主の使いとして、病気の夫に替わって領地問題の挨拶に行く俺。そこでお供としてミヒャエラを連れて行き、今回はウラも同行させる。
そこでおそらく美人を並べていたらマルティンも欲求が抑えられなくなるだろうから、そこで襲撃を受ける……マルティン家の眷属たちはおそらく正気を保ってないから、そこで戦闘になるだろうが、一旦回避。
そこで離脱したところをウィルマとウィルマの私兵により開城させて、そのまま戦闘。夜が明ける前に終わらせる、と。
「ここ、最初から襲撃っていう訳にはいかないのかね? わざわざ話し合いしましょうと言って出かけて行って、そこで離脱してから再度突入っていうのがよくわからないんだけど」
その作戦に俺が首を傾げていると、ミヒャエラは「嫌ですねえ、ご主人様」と言う。
「吸血鬼……特に真祖に近い方々っていうのは、基本的に招待された場所でなかったら入れないんですよぉ。ですから、一度ご主人様がマルティン家に入ってもいい許可を得なかったら入れません。そしてご主人様とご主人様の連れであるわたしたちは入れますが、シュタウフェンベルク様たちはそもそも許可をいただけないでしょうから、そう簡単には入れません」
「俺が入れてウィルマが入れないっつうのがよくわからんのだけど」
「そりゃ力関係ですよぉ。ご主人様は今のところベルガー家の夫人ということで舐められていますが、シュタウフェンベルク様は領主ですから。いち領主をそう簡単に屋敷に入れて、戦の大義名分取られるような真似はしませんって」
要は俺は死んだ旦那のおまけ扱いだから、入れても痛くもかゆくもないということらしい。なるほど、たしかに舐められているし、それを見込んだ上でウィルマも俺を派遣した訳か。
それにしても……。
「で、俺が今回この服なのはなんか理由があるのか?」
その日の俺は、真っ黒なゴシックドレスに赤いバラのコサージュをあしらった出で立ちをしていた。心なし、いつもよりも黒いレースが三割増しアップしているし、ヘッドドレスにもレースと赤バラのコサージュが欠かせない。たしかに吸血鬼っぽいデザインだとは思うけれど、これじゃいくらなんでも夫人ってイメージからは程遠いだろう。なんというか可愛いから。
それにミヒャエラは「嫌ですねえ、ご主人様」と笑った。
「あの変態……マルティン様は若い娘が趣味ですから。ご主人様の夫人としての品格よりも、若さを優先させたんですよぉ」
「……なる、ほど?」
「見てなさい変態、このご主人様の溢れんばかりの男の娘オーラにむせび泣いて果てるといいわぁ!」
「だからミヒャエラはいったいマルティンとのフェチの方向性の違いにどんな恨みがあるんだよ!?」
……とりあえず、俺たちは出かけることとなった次第だ。
重い。正直荷が重いものの。リズが巻き込まれる危険がある以上は、やるしかないのだ。
いやぁ……そりゃウィルマも女の子だし、うちにいる僕も女の子だし、俺がするのが一番適任なんだろうけどさぁ……実際、俺というよりもマリオンがこの屋敷を乗っ取ったのだって、ハニートラップだったんだけどさあ……こんなガバッガバな外交でなんとかなるもんかね。
マリオンが問題起こしまくったせいで、エクソシストに通報され、結果としてリズと死に別れる訳だが……これは多分ハニートラップ大作戦でどこかにミスがあったからだよなあ。
ウィルマと文通をして情報交換をする一方、領地の各地の報告書をミヒャエラに見てもらいながらも、吸血鬼強硬派のどこから色仕掛けを決行するかを探っていた。
「なあ、ミヒャエラ。これマジで成功するのかねえ……ハニートラップで土地乗っ取りっていう奴」
「成功させなきゃ意味がありませんよぅ、ご主人様」
領地の報告書を読みやすくまとめ、俺がわからない部分に解説用のメモを付けながら、ミヒャエラはあっさりと言う。
この面白メイドは相変わらず、仕事関係では有能だ。
「第一に、このまま吸血鬼強硬派が暴れ散らかしたら、被害はわたしたちにまで及ぶんですからぁ。実際にエクソシストもかなりご立腹ですし、吸血鬼絶対殺すになっています。わたしたちはともかく、夜にしか動けない眷属たちより、昼夜関係なく組織立っているエクソシストのほうが有利なのは明らかです。だとしたら、吸血鬼強硬派をさっさと鎮めて、残りの人生静かに過ごしてエクソシストの怒りが冷めるのを待つしかないですし」
「まあ……たしかにそうなんだけどな」
「ちなみにシュタウフェンベルク様より、早速ここはどうかという作戦指示がありましたが」
「ウィルマから?」
俺が報告書に目を通している間に、しっかりとウィルマの手紙を見つけていたらしい。
ペーパーナイフでさりさり封を切って読む。
「ん-……このマルティン家っていうのは、どういうところ?」
「ああ! あそこ、吸血鬼内でも評判が、超悪いところですよぉ!」
「そうなの?」
しかしなあ……マルティン家。なんか聞いたことがある……。
妹の『禁断のロザリオ』の様子を覗き見している中で、なにかあったかな……。
俺はうんうん妹のゲームプレイ内容を思い返そうとする中、ミヒャエラがプリプリ怒りながら教えてくれた。
「あそこ、美人な子女を集めてるのが趣味なんです」
「なにそれ。眷属にしてはべらかすとか?」
「それだったらまだいいですよ。でもあそこ、穏健派や中立派は吸血鬼であらずっていうくらいに、吸血鬼すら手にかけるんですから」
「ん? でも俺たちって戦闘能力あるはずだよな……?」
マリオンの力を引っ張り出したとき、前世の自分だったらまずできないくらいの怪力や、剣の腕を見せつけていた。それで吸血鬼業界じゃ弱いとされたら困る。
ミヒャエラはなおもプリプリ怒っている。
「あれ、人間吸血鬼問わず、美しい女性を見たら蝋人形にして鑑賞するっていう根っからの変態ですもん」
「あ、それだ」
「はい?」
「いや……なんでもない」
思い出した。
妹がうちでゲームやっている際に、血塗れでイケメンたちが戦っているなと思いながらビールを飲んでいた舞台が、ちょうど蝋人形だらけの屋敷だったんだ。
本当にちょろっとだけマルティン家の名前も出ていたはず。
でも……あそこにプレイヤーでありヒロインであるリズがいたってことは……どのルートかは知らんが、リズが誘拐されて蝋人形にされかけるってことだよな?
俺はギリッとした。
これは死んだマリオンだって「うちの妹を蝋人形にするなんて生かしちゃおけん。死ね」になってもおかしくはないだろう。
「じゃあ、まずはそこだな。作戦も考えなきゃ駄目だな。そいつ、蝋人形にする人間や吸血鬼をどうやって選んでいるのかも探りを入れないと」
「そうですねえ。このあたりもシュタウフェンベルク様と連携を取らなければいけませんね。なるべく早くにことを進めましょう。とにかく変態は死ねです」
「珍しいな、ミヒャエラが珍しく怒るなんて」
「そりゃ当然ですよぉ」
ミヒャエラは握りこぶしをする。
「生きてない美人になんの価値もありませんしっ! あの変態、可愛い可愛い男の娘まで蝋人形にしているんですよ!? 羞恥で追い込んで追い込んでやっと開花させる色気に美があるというのに、その美を蝋漬けにしたら、そんなもん美少女となんら変わらないですよぅ! 寝言は寝て言ってくださいっ!」
「いや、お前のフェチズムも全然俺はわかんないからね!? どっちも普通に気持ち悪いから!」
「ようし、ご主人様に足りないのは羞恥ですから、わたしも頑張って追い込んで追い込んで立派に開花させてみせますからね!」
「いらんわっ、帰れっ!」
……ミヒャエラの変態的趣向はさっぱりわからんが。あのマルティンっていうのが男女問わずに狙う変態だということだけはよく理解できた。
まあ乙女ゲーム的にはあれだな。男女問わず美を見出すってところに耽美的趣向があるんだろう……ミヒャエラが乙女ゲームに出禁になったのは、まあそういうことなんだろうな、多分。
****
大雑把な作戦としては、ベルガー家当主の使いとして、病気の夫に替わって領地問題の挨拶に行く俺。そこでお供としてミヒャエラを連れて行き、今回はウラも同行させる。
そこでおそらく美人を並べていたらマルティンも欲求が抑えられなくなるだろうから、そこで襲撃を受ける……マルティン家の眷属たちはおそらく正気を保ってないから、そこで戦闘になるだろうが、一旦回避。
そこで離脱したところをウィルマとウィルマの私兵により開城させて、そのまま戦闘。夜が明ける前に終わらせる、と。
「ここ、最初から襲撃っていう訳にはいかないのかね? わざわざ話し合いしましょうと言って出かけて行って、そこで離脱してから再度突入っていうのがよくわからないんだけど」
その作戦に俺が首を傾げていると、ミヒャエラは「嫌ですねえ、ご主人様」と言う。
「吸血鬼……特に真祖に近い方々っていうのは、基本的に招待された場所でなかったら入れないんですよぉ。ですから、一度ご主人様がマルティン家に入ってもいい許可を得なかったら入れません。そしてご主人様とご主人様の連れであるわたしたちは入れますが、シュタウフェンベルク様たちはそもそも許可をいただけないでしょうから、そう簡単には入れません」
「俺が入れてウィルマが入れないっつうのがよくわからんのだけど」
「そりゃ力関係ですよぉ。ご主人様は今のところベルガー家の夫人ということで舐められていますが、シュタウフェンベルク様は領主ですから。いち領主をそう簡単に屋敷に入れて、戦の大義名分取られるような真似はしませんって」
要は俺は死んだ旦那のおまけ扱いだから、入れても痛くもかゆくもないということらしい。なるほど、たしかに舐められているし、それを見込んだ上でウィルマも俺を派遣した訳か。
それにしても……。
「で、俺が今回この服なのはなんか理由があるのか?」
その日の俺は、真っ黒なゴシックドレスに赤いバラのコサージュをあしらった出で立ちをしていた。心なし、いつもよりも黒いレースが三割増しアップしているし、ヘッドドレスにもレースと赤バラのコサージュが欠かせない。たしかに吸血鬼っぽいデザインだとは思うけれど、これじゃいくらなんでも夫人ってイメージからは程遠いだろう。なんというか可愛いから。
それにミヒャエラは「嫌ですねえ、ご主人様」と笑った。
「あの変態……マルティン様は若い娘が趣味ですから。ご主人様の夫人としての品格よりも、若さを優先させたんですよぉ」
「……なる、ほど?」
「見てなさい変態、このご主人様の溢れんばかりの男の娘オーラにむせび泣いて果てるといいわぁ!」
「だからミヒャエラはいったいマルティンとのフェチの方向性の違いにどんな恨みがあるんだよ!?」
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