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人属編-27

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翌朝朝ごはんを食べてすぐに出発した

結構な道になるので、休憩をはさみつつ、夕方には人属大陸へ到着したいようだ
うさぎ地区領主のリリー様はバレッタさんと一緒に人属で合流予定だ

「マキア、人属のことを少し話しておく」
馬車で簡単な人属講義をジアンからうける

「まず、人属は王政。そのトップが、シドニー・リンドラルシェ王だ。彼は獣人肯定派として、人属と獣人属との間を円滑に取り持ってくれている」

「シドニー王ね」
シドニー王、シドニー王と頭の中にたたきこむ

この名前は歴史の本や新聞でもよく取り上げられるからわかる

「で、その妃がミラ様だ。ミラ様は人属と獣人属のどちらにもつかない中立だな。どちらかといえば、自分の利益になるほうをいつも優先する」

なるほど
そういうタイプか

「そして子供たちが三人いる。第一王子のルド王子21歳。今回の結婚式は彼の結婚式だ。人属よりの考えを持っていて、少し大変になるだろう」

つぎの王様になる人が人属よりって大変だな~

「で、第一王女ナターシャ様、19歳。まだ結婚をしていないが、侯爵家との縁談が進んでいる。彼女は中立だ」

ほうほう。結婚適齢期ですね

「最後が第二王女のミレイ王女で13歳。まだ小さいが聡明だ」

うんうん
賢い子は好きだ

ルド、ナターシャ、ミレイの三人兄弟ね
覚えられるかな~顔もわからなし


「あ、そういえばこの間うさぎ地区のホテルでジアンがアンドレア様に~っていったその人は??」

確か、あたしを買いたいっていった人属に、ジアンがこれ以上なんかすんなら、アンドレア様に言いつけるぞ~って言っていたよね??

「ああ、アンドレア様は王の執務の補佐官をしている人で、宰相のような立場の人だ。彼は主に人属と獣人属の担当をしているから、彼のことを知らない人属はいないんだ」

なるほどなるほど
偉い人だったのね

人属と獣人属の担当をしているってことは、ジアン達とも会うことは多いだろうし、そんな人と知り合いってなると、そりゃ逃げるわな

「あとは?覚えておかないといけない人いる??」

「そうそう話すこともないだろうし、大丈夫だ。俺と一緒にいるとあいさつに回ることで話しかけてくる人属もたくさんいるが、覚えなくてもいい」

いいんかいw
まぁ今後接点はないしね~

ちょっといってお祝いして帰るくらいだし
しっかりと笑顔はりつけて、おめでとうございますといっていればいいか


何も問題起きないといいな~

って考えることがフラグか

「で?そのルド王子は誰と結婚したの?」

「ルド王子は、イースラント公爵家の長女ケリー様だ」

ちなみに彼女はバリバリの人属派なと付け加えられた

「その、人属派とか獣人派とか、どういう区別があるの?」

「簡単に言えば、獣人が好きか嫌いかだな。人属派の過激な連中はいまだに人属至上主義として転化も認めていないし、獣人の奴隷制度を復活させようとしている。人身売買もかれらが行っているだろう」

「うわ~」

そういうのまだいるんだ・・・

何百年もたっているのに、変わらない人もいるんだね
新しいのを受け入れるって変化も起きるし難しいけど

なにかしらの変化をさせなければ人属だって発展しないのに

改革は挑戦、保守は衰退・・・どっちも大変だけど、時代の流れには逆らえないと思うんだけどね
まぁ人属が衰退しようがなんだろうがどうでもいいけど

ぶっちゃけあたしは今の生活と獣人属さえよければいいと思っているし



その後もずっと予定を細かく話された

誰と話す、会議がある、この時には一緒にいられない
ここは観光できる、何時に夕食会といろいろと予定があるようだ

もっとお気楽なものかと思ったんだけど・・
ジアンが疲れそうだな~

「ジアン、疲れたら言ってね」

「おう、大丈夫だ。このくらい」

「これが終わったら、帰りがてらうさぎ地区によって、孤児施設の話し合いをすぐに始める予定だから」

「うん!ありがとう!あたしに手伝えることがあったらいつでも言って!なんでもするから」

頭をポンポンとなでられた

少しでも役に立たないとね
気合入れてがんばるか




がたがたとずっと揺れていた馬車の振動が少なくなった
舗装された道に入ったとわかる

「ジアン様人属地区へ入りました」
御者の声がした

「わかった。気を付けて運転してくれ」
ジアンも返事を返す

「気を付けて?」

「今はもうほとんどないが、昔は獣人ってだけで馬車を襲うやつらもいたんだ」

大変だな~

もうなんか人属にいいイメージがないぞw


窓の外をみるときらびやかなネオンが光っている

電気だ・・・

久しぶりに見た

獣人地区では魔法を使ってのライトや、蠟燭での生活がまだまだ普通だ

人属のものは便利だが高いために、あまり獣人地区では流通していない

ストーンは便利だが有限だ
空の魔石だって、いつまでも採れるとは限らないしね


人属がたくさん歩いている

みんな比較的小柄な印象だ・・・まぁ獣人属に比べたらだけど
ジアンもそこそこ大きいし、グレゴリー様やガロなんて2メートル近くあるし、体格もいいしね


「どこに泊まるの?」

またホテルかな??

「あぁ、王宮だ」

「王宮??」

予想外

「俺らも地位があるからな、問題がおきたらあっちも困るだろう」

なるほど
なるべく行動範囲を狭めるのね

人属派の過激派が下手なことをしたらそれこそ協定問題になるだろうし

「見えるか?あれだ」

馬車の窓の外を指さされた場所には巨大な城があった
これは・・・すごい

想像以上だ

領主の館は本当に、普通の家を大きくした感じだったが・・・

城だ。巨大な

居住地区やら商業地区を抜け、王宮は一番奥まったところにあった
丘の上にあるのか、王宮への道はなだらかな坂になっている

力の象徴だろうか。圧巻のたたずまい
ライトアップされていて城の大きさに圧倒される

「・・・大きいね」

「ああ、これ見よがしだよな」
苦笑いしているジアン

言いたいことはよくわかるわ
門をくぐり、王宮の出入り口までさらに馬車で移動をする

ようやくとまり、ドアが開いた

「マキア、足元気をつけてな」

「うん」

ちょっとおしゃれをしたドレスを踏まないように気を付けてジアンの手を借りて降りる

「ジアン様、ようこそいらっしゃいました」

顔をあげると、メイドさんたちがずらりと並んで出迎えてくれていた
白髪交じりの銀髪をきれいに束ねた小柄な年配の女性が立っていた

ドレスだが、簡素な服装が動きやすそう

「アンドレア様、お久しぶりです。こちらこそよろしくお願いします」

ジアンも礼式にのっとったあいさつをする

「こちらが」
ぱちりと目が合う

「初めまして、マキア・イーグルと申します。アンドレア様にご挨拶申し上げます。」

しっかりと膝を折りスカートの端をつまみ上品にお辞儀をする

「まぁ、あなたが。ジアン様にお聞きしていた通りかわいらしい方ですね」
にっこりと微笑まれる

鋭い目だが、特に獣人に対しての嫌悪感というのはないようだ

「恐縮です。アンドレア様にお会いできて光栄です」

「長旅お疲れでしょう。どうぞお部屋へ案内させます」とメイドをよんだ

「シドニー王にご挨拶することは可能でしょうか?」

「もちろんです。皆様お揃いになりましたら、お声がけさせていただきますね」

その後部屋へ案内された
客室はとても広く、これが二人一部屋で用意されている

「(マキア~あとで探検しようぜ)」
リンクが廊下の奥で小声で叫んでる

おいおいw探検ってww

「だめだwお前少し緊張感もて」
ジアンに即却下されてるw

「(リンク~新しいゲーム考えたから、あとでやろうね~)」
あたしも小声で叫んでみる
「マジで!?やるやる!!」
もう小声とかどこいったww


部屋で一息ついて、王様への挨拶するための洋服へ着替えた
カーラがいてくれてよかった・・・

正装のドレスは一人では着られない

「マキア様、髪の毛を編み込みますね」

「うん、かわいいな」
ジアンがうしろで見ながらうなずいている

ジアンの仕事用の正装がかっこよすぎて直視できない
髪の毛とか・・ワックス?

なにそのヘアスタイル~かっこいいって王道すぎだろ
それにくらべてあたしは・・・ちんちくりんだわな~

でもカーラのおかげでしょっぼいあたしでも、少しはかわいく見えるだろう




トントン

「ジアン様、皆様そろいました。シドニー王との謁見となります」
王宮のメイドさんが伝えてにきてくれた

どきどきしてきた

「エルデ様もきたようだな」

エルデ様おつきの宰相やメイドがあわただしく動いている

みんな一同に集まるなんてそうそうないよね
すごいな~豪華フルメンバーだ

「こちらが玉座になります」
大きな扉の両側に剣を携えた兵隊がいる

目を合わせないようにただ職務を全うするためか、まっすぐと廊下の奥を見ている

「・・・ご苦労様です」

扉が開き、通り過ぎるときに一応ペコリと頭をさげ、挨拶をしておいた
あたしはバスを降りる時もお礼をちゃんというできる子だぞ




アンドレア様に続き、中央のカーペットを歩き奥に座っているシドニー王へ向かう

すごいオーラだ
さすが王様

緊張してくる
隣には赤いドレスを着ている女性がいる

あれが・・・王妃ミラ様か
じっと観察しているかのような視線だ

ジアンに習い、王様の座る玉座の手前で膝をつき、右手を胸におき、頭を下げる

「シドニー王にご挨拶申し上げます」

「ジアン!堅苦しいことはいい!顔をあげよ!」

ジアンがなおるのをみてから、あたしもなおる
うう~~こういうのは苦手だわ

とりあえず・・・黙って、静かに笑顔・・・

「おお!そちらが番のマキア殿だな!」

「初めまして、マキア・イーグルです」
スカートの端を持ち、再度お辞儀をする

目が合うとにっこりと笑ってくれる

なんだか・・そうだ!ダンブルドア先生のようなww
髭がたっぷりで、おなかもたっぷりだけどw

「噂はかねがね!マキア殿のお菓子が大好物でな~」

髭をもっさもっさと触りながら、DULCISのお菓子の話題を振ってくれている

「大変光栄でございます。この度もお持ちいたしましたので、ぜひお召し上がりくださいませ」

「それはそれは!!楽しみだ!!!」

・・・声もデカイw
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