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使命編-2

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「では、早速まとめた内容で話し合う」



あたしもカーラと先に犬地区へ戻っていてもよかったんだけど、魔力がまた暴走したら困るからって

ジアンと一緒にいることにした
しないと思うんだけどね




会議はリリー様の領主館
孤児施設についての話し合いだ

「いくつかすでにまとめていた通りの概要をのせておいた」

人属地区での移動中や空いた時間もつかって、みんなでちょこちょこ会議をして詰めていたらしい
時間の有効活用だな

「まず、全獣人地区の孤児施設の管理の責任者は領主とする。領主が任命した施設長を通して運営をする・・・」

大まかにまとめていたようだ

施設人数を決めて、上限を超えた場合には新たに施設を作るようにすること

教育と仕事を与えて技術を学ばせ、独り立ちできるようにしっかりと施設でサポートをすること

協賛システムを導入し、減税の金額を決める

故意で孤児とする場合には成人まで決まった金額を施設へ納入すること

領主間で年に二回、状況把握と連絡交換を行う

といった内容だ

初期投資はかかる
施設の改善、人員確保、施設への協賛の告知、施設の運営が軌道に乗るまでの資金

「まず、獣人地区での予算から割当よう。マキア様のおかげで今年度は余裕がある」

あたしの魔石が役に立っているようだ

「あの、こちらも使ってください」
小切手を出す

「・・・これは・・・」
ジアンをちらりと見ている

「これは!あたしの個人資産です。ジアンとは別なので、安心してください」

DULCISやリンクの石鹼事業での売り上げがどんどん入ってくるけど、使い道がいまいちなかったし
役に立ててよかった

ジアンにもびっくりされたけど、あたしがいいというならと納得してくれた

「マキア殿、この金額ですと数年の運営が可能になりますよ?」

「あの・・・あたしは人属から来ました。・・・こっちにきて本当に右も左もわからない状態だったあたしをみんなが温かく迎えてくれたんです。何かできることがあるなら、喜んでお手伝いさせてもらいます」

意思が固いとわかってくれたのか「では、こちらも運営費に割り当てていきます。本当にありがとうございます。おかげで速やかに施設の改修も備品の整備も行えます。」

エルデ様がうけとってくれた

「早速、各担当者に連絡して施設の改革に入ります」




なんとかうまくいくといいな

リリー様の隣に立っていたバケットさんが安心した顔で胸をなでおろしている

ぱちりと目が合う
深く頭を下げてきた

これからだけどね
上手くいくといい



エルデ様の手配ですぐに全獣人地区に告知がはいる
孤児施設の改革と新聞が一面にとりあげてくれた

協賛をつのり、改革に前向きな印象を与える


獣人地区の人たちの反応も良かった

もともと困っている人は助けてくれるような人たちがほとんだ
孤児施設をまるまる援助できるわけもない

結局中途半端に手を出せないから放置となるという悪循環を絶てるならと、みんな協力してくれる


「孤児施設出身だからといってぞんざいな扱いをされるんじゃなくて、技術を持っていると歓迎されるような状態にしたい」

ジアンが概要の用紙を見ながらつぶやく

そうだね
まだまだ偏見な目が多いだろうが、人属と違って柔軟な獣人属なら近い将来可能になるだろう




数日滞在して様子を見ていたがさすが仕事が早かった

すぐに施設に業者が入り、壁紙の交換や電気、水道の整備、人数分のベットを入れてもらい、教室や作業部屋も作り道具も運び入れた

食道のテーブルも人数分座れるように椅子も新しくなり、調理器具も全部新しいのをいれてもらう
かけている食器は捨て、新しい皿にナイフやフォークもそろえた

お風呂もきれいなお湯が出るようにしてもらったし、清潔なタオルも十分すぎるほど用意した
リネン類に衣類も新しいものをサイズ別に用意して靴も全員分揃えた

基本的な生活に必要なものを全部そろえるだけですごい時間がかかる
それだけ放置されていたということだ

子供たちはびっくりしてたが、暖かいスープが作られた時には我先にと何度も並んでいた
これからは飢えずに暖かい布団で寝られるね


「・・・あぁそうか。なるほど・・・」


「マキア様?」
一緒に様子を見ていたバケットさんがどうかしましたか?と声をかけてくれた

「あぁ、いえ、なんであたしこんなにと思ったら、きっと自分が望んでいたことだったんだなって思って」

「マキア様が?」

「あたしもほら、あんな親に育てられて、食事も寝る場所も服もない生活だったから・・・痛いほどわかるんだよね。この子たちの気持ちが」

それをいったらバケットさんもか

「だから、きっと同じような思いをしている子がいると自分を見ているような気がして・・・」

見ていたくなかったのかも
昔の嫌な自分を思い出しちゃうし

だからきっと・・・
「自己満足だよね」

「マキア様!」

びっくりした
急に大きな声をだされた

「マキア様、自己満足だなんておっしゃらないでください・・・マキア様のおかげでどれだけの子が救われたか・・・!」

あぁ、まぁそうなんだけど
きっと見なかったらさ、何もしなかったよあたし

たまたまたなんだよ

「何とかしてあげたいという気持ちだけじゃ救われないんです。何かしてくれる人にしかこの子たちの未来はないんです」

バケットさん・・・

「そうですね・・ごめんなさい。ちょっといろいろとみんなを巻き込んでしまったから」

「そんなことはないぞ!!」
おおっと、後ろからガハハハ!!とグレゴリー様がやってきた

「いつかはいつかは・・とないがしろにしていた我々の問題だ!!よく言ってくれたとむしろ感謝だぞ!!」

「・・・はい。ありがとうございます」



「そういえば・・・グレゴリー様、帰らなくていいんですか?」

すでにうさぎ地区に滞在して4日目だ

「いや~やることをやってからと思ったら時間がな!!ガハハハ!!」

「奥様、帰ってくるの待っているんじゃないですか??」

「そ・・そうか!?そうだな・・そろそろ・・帰るか・・」

そわそわしだしたぞ
帰りたかったのかな??

「今日私たちも戻る予定ですよ」

「よし、帰るか!」



リリー様に挨拶をして私たちも犬地区へ戻ることにした

「猫地区も通って様子を見ていくか?」

馬車に揺られながらジアンに猫地区の孤児施設の進捗確認を提案されたが、そろそろ本当に家に帰りたい

「ん・・・グレゴリー様なら大丈夫でしょ?」

「どこも大丈夫だ。一斉に取り掛かっているから、みんな今頃暖かいベットに入っているはずだ」

安心した・・
それならいいよね

「ジアン、あたしも家に帰りたい」

あたしたちの家に

「よし、帰るか」

「うん!」

そろそろ自分の枕で寝たい

リッタさんにも会いたいし



ホームシックとはこのことだな
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