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使命編-1

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「いえ~い!帰りは一緒~」
リンクが隣で騒いでいる

昼食会の事件があったから、人属地区を出るまでは護衛を兼ねて一緒に乗ることになった

「そういえば、あの犯人サイフォリー伯爵の次男だったんでしょ?」
突然何の話??

「そうみたいだな」
ジアンも書類を見ながらうんうんとうなずいている

「え・・・?待って待って、何の話?」
あたしだけ知らないのかよ

「ほら~あの昼食会での暴動の犯人のリーダーがサイフォリー伯爵家の次男だったんだよ」

??
昼食会の時に王族を狙った人だよね?

「え?だからそれだれ??」

「え」

「え」

ジアンとリンクが目が点になっている

「マキア・・人属の貴族資料渡しただろう」
・・っく・・やべ

あまり読み込んでいないのがばれた

「あ~あ~、勉強不足~」
リンクがケタケタ笑っている

だって・・すごい分厚い量なんだよ
貴族全員覚えてその関係図まで・・・って無理よ・・・涙

「サイフォリー伯爵家の次男、アイザックは、ケリー様の幼馴染だ」

「え?!!!まじで!!?」

「まじまじ~」

「どういうこと?なんで昼食会を邪魔するの?」

「ふふふ・・まだわかってないね」とリンクが笑っている

「ルド王子とケリー様は政略結婚だったんだ。もともとケリー様はサイフォリー伯爵家の次男アイザックと将来を約束していたんだがな」

ジアンの説明によると、ケリー様の政略結婚を、父であるイースラント公爵が決めてきたらしく、アイザック様との結婚を白紙にしたらしい

イースラント公爵は娘の幸せよりも王家とのつながりをとったのだ

ケリー様とアイザック様は泣く泣く別れたが、ケリー様を取り戻すために獣人反対派のメンバーをあつめ、王族襲撃の段取りをつけたらしい


そこにも恋があったのか
報われない恋って悲しいな

番のほうがよっぽど・・わかりやすいよ


「多分・・・アイザックを利用した人がいるだろう。それが王家の実権争いをしている王弟ではないかという話だが・・・確実ではないから不問だ」

「あの時、ケリー様を傷つけるつもりはなく、そのまま一緒に逃げる気だったらしい」

あたしがシールドを張った時だ
短剣を投げてきた人だよね?

じゃぁ・・あの攻撃は確実にあたしに向けての攻撃じゃん!!
サーっと血の気が引く

こえーよ!!

「それで、アイザック様はどうなるの?」

「死刑だそうだ」

「!?」

え!そんな
本当に?!

「そんな驚くことではない。理由はなんであれ皇族への反逆は極刑だ」

あ~・・何とも言えない

だからケリー様めっちゃ顔色悪かったんだ・・・
泣くに泣けないのかな・・・

ただ、好きな人と一緒にいたかっただけなのにね


「そうなんだ・・・」


頭をぽんぽんとなでられたが、気分が落ちる話だ
好きでもない人と結婚して、好きな人が死ぬって・・

これが政略結婚だわな



「マキア~はい」

リンクが小袋から金平糖を出してきた
キラキラといろいろな色がついている

「いつ買ったの?」

貴族のお菓子らしい
かわわいい小さなお星さまのようだ

「今朝の朝食のテーブルに乗ってた~」

「もってきたの!?」

いいじゃん~って10個くらいいっきにたべてぼりぼりしている

「こんくらいしかないんだね~お菓子」

確かに・・・チョコレートがあったが・・・あったが食べられないし涙
はぁ・・・

「いろいろと大変だったけど、帰ったらゆっくり寝たいね~」

「何言ってるんだ」

ジアンが突っ込んできた「まずは測定だ」

え・・・

「だよね~絶対魔力値あがってるもん」

っく・・迷惑をかけたしな
おとなしくがんばるか

「シェイクにまたつくってもらいなよ~」

腕輪・・調子よかったのに

予備で持ってきてあったものもはめている

「ぜ、全然落ち着いているんだけど」

「今だけな。なんかあった時に溢れ出るのはまずい」

「そだよ~常に7割くらいにしておいて、暴走しても漏れないくらいにしておかないと」

そんな器用なことできないよ・・・
そもそもさほど使い道ないじゃん

泉のように湧き出てきているし
このコントロールが上手くできなかったらそれこそ大変だったろうな

早めに訓練しておいてよかったってつくづく思う





ガタン!!!




馬車が止まった
ジアンが窓の外を見る

「ちょっと、そのまま動くな」

「ラジャ~」
リンクと二人で待機させられ、ジアンが様子を見に行った


外が騒がしい
「ここ・・どこら辺?」

「う~ん、多分まもなく人属地区を越えるあたりかな~」

なにしたのかな



ガチャリと扉があき、ジアンが疲れた顔をしている

「どうしたの??」

「あー・・・リゾーレスト伯爵だ」





外に出るとリゾーレスト伯爵が大声で怒鳴りわめいていた

「え~・・もういい加減いい迷惑なんだけど」

「・・・!?・・・!!!」
顔を真っ赤にして叫んでいる

数人護衛も連れてきているが、体格的に獣人属に囲まれていて多少ビビっている感じがする

こっちは獣人属のメインメンバーにさらに護衛メイドとかなりの人数での移動だ
人属地区を出るまでは王家からの護衛もついているし

「行った方がいい?」

「・・・お前を出せといっているんだが、出なくてもいいぞ」

「いや、もう早く離れたいし」
馬車から降りてリゾーレスト伯爵の前に進み出る

「・・・!?マキア!!」
ようやくきたかという顔だ

「どうなさいましたか?リゾーレスト伯爵」

「なんだ!そのいい方は!?おとうさまと呼べ!」

「・・・いえ、戸籍も離れておりますし、もう他人ですので」

・・っく!!
顔を真っ赤にして血管が浮き出ている

「それで?私たちの帰路の邪魔をなさる理由はなんでしょうか?」

「ふん!!そんなの知らん!勝手に帰れ!!ただ、お前は家に帰るぞ!」

何を・・言っているんだ・・?

「えっと・・・わたしの家は獣人地区にございます」

「!!!・・お前のせいで、サナの婚約は破棄になるし!あちこちから借金したんだぞ!」

え~・・・・
それあたしのせいなの??

「・・・で?」

「で?じゃないだろう!お前の責任だ!帰ったらしっかりと働け!!」

「王宮の審問会での決議をお忘れですか?」

「お前が自分のせいだったと言えばえばいいだけけだろう!すぐに家に戻って魔力を出すんだ!そうすれば王宮への借金はすぐに返せる!!」

「・・・はぁ、あの、何度も言っておりますが、もう一度言います。もうあなたとはなんの関係もないんです。関係のない人のためになぜ私が働くんですか?」

「な!!どこまでお前は・・!!育ててやった恩も忘れたか!!」

「・・・マキアが・・・私が、どのような生活をしていたかご存じですか?」

「そ、そんな過去のことはいいだろう!これからは食事も部屋も与えてやろう!そうだ!エドガー君がな!やはりお前とやり直したいといっていたぞ!!」

どうだ!素晴らしいだろう!?って顔で提案している
どこまでもひどい

あたしを何だと思っているんだ

「結構です」

「・・・っこの!!!」

殴りかかりそうになってきたが、間にジアンやガロが立ちはだかってくれた
ばっちり王宮からきている護衛も見ている

「何をなさるつもりですか?」

ジアンの冷たいオーラがバシバシと流れ出る

「っく!!これは!!家族の問題だ!犬はどけ!!」

うわ~
言葉が悪いね

「リゾーレスト伯爵、もう私たちは家族でもありません。私の大切な人たちの暴言を撤回してください」

「なんだと?!調子に乗りおって!お前は!黙って!わしの言う通りにすればいいんだ!!」

もう支離滅裂なんだろうな
なんとか金になるものを連れて帰るのに必死な感じ

「犬になったんなら少しは人間のために役立て!!」

マキアの目をギラギラとにらんで叫んでいる

「いいんですか?王宮に報告すこともできるんですよ?」
最後の通告だ

「駄犬が!!!黙って人間の言うとおりにしろ!!!」


はいきた

アウト


周りの温度が一気に冷える

「・・・!!」

地雷を踏んだことに気づいた伯爵が一瞬我に返るが、もう遅い

「・・・申し訳ありませんが一緒に連れ帰っていただけますか?一部始終報告をしてくださいね。それと記録を書いて送ります」

王宮からきている護衛に用紙をわたし、一緒にリゾーレスト伯爵を連れて帰るようにたのんだ

「っ!まて!!まだ話は済んでおらんぞ!!」

凄い叫んでいる

もうどうでもいい
踵を返して馬車向かう






その瞬間何かがぶつかる様な衝撃が走った





「マキア!!!」
ジアンの声が聞こえたが一瞬意識が飛ぶ

なにかぶつかった??
でも、痛くない・・・

「・・・あ・・・」

頭が・・・
マキアの人属の時の思い出がどんどんよみがえる

「マキア!大丈夫か?!」

立っていられない
あふれ出すように涙が流れる

これは・・あたしの涙じゃない
マキアの涙だ

悲しいんだね
お父さんにこんな扱いをされて

あぁ・・マキアは最後まで期待していたんだ

本当は愛されているはずだったと
自分をいつか迎えに来てくれるはずだったと

「そのまま、マキアをこちらへよこせ」

リゾーレスト伯爵の手には銃が握られている
衝撃はリゾーレスト伯爵によるものだった

一発目は装備しているアクセサリーで防いだが次はない
ジアンがシールドを張る
しかしあたし以外が打たれる可能性もある

「死んでも魔力が取れればいいのだが・・・」

カッ・・・・!!!

ぼそりとつぶやいたその瞬間
マキアの体から大量の魔力が一直線にリゾーレスト伯爵へ向けてでた

見えない衝撃派を全身で受け、数メートル吹き飛ぶリゾーレスト伯爵

一気に体が軽くなる
すぅっと鉛が体から抜けていく感じがした






その後すぐにリゾーレスト伯爵を縛り上げ、そのまま王宮からきていた護衛へ引き渡す

「最後まで大変・・・失礼を致しました」

同じ人属がえらいことをしたと思っているのだろう
さすがに今回の件はひどかった

「いえ、あなたが謝罪することではありません。気を付けてお戻りください。ここまでお付き合いいただきありがとうございました」

「この件はすぐに報告し、またご連絡申し上げます」

ジアンがシドニー王とアンドレア様あてに手紙を書き、護衛へ手渡した


護衛は敬礼をし、意識を失っているリゾーレスト伯爵を馬車へ投げ入れ戻っていった





「大丈夫か?」
ジアンが心配してのぞき込んでくる

「うん、平気。一瞬大量に出たけど、おかげですっきりした」
暴走するかと思ったけど、大丈夫だった

「すごいな。今まで癒の魔力を攻撃魔法にしたのを見たことはないぞ」

「いや、癒の魔力自体少なく検証もできなんだが、本来なら我々と同じように攻撃魔法にも使用できるものなのかもしれない」

「シールドを張った時といい、コントロールがずば抜けているな」

「少し鍛えて・・・うちの戦闘部「リリー様、だめです」」
リリー様とグレゴリー様の話にとジアンが止めに入る

まぁ無駄に魔力量は多いからね
がつんと消費できるなら攻撃魔法としてもいいかな

魔獣とか・・勘弁だけど・・




それにしても

「みんなごめんなさい・・・」
みんなの前であやまる

「マキア殿があやまることではない」

リリー様がフォローしてくれるが、まだ魔力がバリバリと肌を刺すように痛いくらいとがっている

「そうだそうだ!きにすんな!!」

ガロが剣をしまった
それで・・・刺す気だった??

シェイクの周りに咲いている花には10㎝ほどのトゲが出現している
それは・・ローズウィップじゃぁないですか・・


「はいはい~おしまいね~みんな帰ろ~」
リンクが金平糖を配っている

これ食べればイライラしないよ~って・・・リンク・・・



最後の最後までいい気持のしないまますぎる人属地区

もう少しいい思い出が欲しかったよ・・・







すぐにうさぎ地区へ入り、ホテルへ向かう

「一度私は領主館へ戻る。明日また例の件に関してあらためて会議を開こう」

リリー様が戻っていく

会議にはエルデ様とグレゴリー様、リリー様とジアンがいれば問題ない
他は自由解散となった

残ってもいいし、帰ってもいいし、遊んで行ってもいいしって
リンクは猫地区に行ってる~と別れた

シェイクもうさぎ地区の様子を見た後、すぐに犬地区へ戻るといって別れた
カーラたちも自宅の準備をしておりますと戻っていった


うさぎ地区の中心までくればう人属の出入りは本当に少ない
懐かしい空気にほっとする



はぁ・・・

疲れた

もしかしてリゾーレスト伯爵が生きているうちってずっと迷惑かけられる感じかな・・

勘弁してほしいわ


「リゾーレスト伯爵か?」

ジアンのお風呂上り萌え~
したたるいい男だ

「うん~バカな家族だったね~」

考えていることもバレバレのようだ

「お前の家族は俺だ」
ぎゅっと抱きしめられる

「は~補充~久しぶり~」とめっちゃ甘い
確かにここ数日ずっとバタバタしていたしね

ぎゅ~っとしたあげる

「体調は?魔力大丈夫?」

「うん平気~今安定している・・はず」

「すんげー増えたな~」

「ね~びっくりだよ」

自分でも驚く

「はい。少しあげる~」
ブオンとジアンに癒の魔力を渡す
きっとジアンも疲れただろう

回復回復


「ハハハ!俺元気だけどwあぁ・・何?もっと元気になってほしいわけ?」


が・・・!!!





やべー違う~~~~




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