暁のユニゾン

音羽 藍

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苦難逃走編

第18話

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あれから数日後……

精霊にお返しの品を渡したり色々いつもの作業をしていたり、ゴロゴロしたりとしていた。

私はそろそろまた足りなくなってきてる物をメモに記しながら、ため息をついた。

外へ出れば彼に知られてしまう。

‥…


どうすればいいのか。

そろそろ、布も卸に行かなきゃだし。

「むむ……」

またデコイ作戦はさすがにバレそうだし……

しかしそもそもなんで彼が生きているのだ。

彼が生きていた時代より、今はかなり未来なはず。

彼も一緒に転生してきたということなのか。

………嫌な妄想をしてしまった。

あのVRの電源を強制終了した時の特殊エンドのその先のルートなのかもしれない。

始めから詰んでる。


生と死の負のループをまた繰り返している。

しかも今度はセーフティーとリセットボタンなしというデッドオアアライブ方式。

信じて話してみる?
いや……いつも不吉な事が起きたり悲惨な結果になる……


私は良い方法がないかごろごろしながら考えたがあまり思いつかなかった。





朝、私はバッグを持ち転移した。

辺りをそっと観察し、安全だと確認して歩き出した。

最小限の魔力量で転移したのでバレないよねと渋々買いに来たのだ。

買い物を済ませた私は後ろから肩を掴まれて、びっくりした。

「ひえぇぇ」
「どうした?私ですよ?」
「ダーヴィドか、びっくりした」
「あはは、他に君に話しかける人でもいるんですか?」

チラリと彼は妖艶に微笑んだ。
聞きたそうにしているが、余り彼の名前など呼びそうになるし話したくも無い。

「いえ、気にしなくて大丈夫よ。」




品物を渡したいと言い、倉庫へ向かいながらも、話した。

「……そうですか。あなたの"番"ねぇ?」
「えぇ、死んでるか、それとも……いないと思っていたのだけど。残念ながら生きてたみたいでね。」
「それはクッ……ふふっ、かなりその相手を嫌っているですね?」
「えぇ、あの人はダメなのよ。運命的にもきっと……ね」
「さて、こちらに納品してください。」

倉庫につき、商品を置いた後、ソファーに座り彼が品物を確認し終えたからか、向かい側に座った。

彼はあの異常な姿を以前みてからも、私対してにんまりと笑っているだけで、以前とさほど様子はない……と思う。

肌が艶々してて、生き生きとしているぐらいだろう。

「ぇえ、私の予想ですが、その相手がこの前調べた人ですかね?」
「……そうよ。ギリギリ刹那の時だったけど、視認できたから確信したわ。」
「……竜人族はかなり重いですからね。さらに……番となれば一層とね。それに私は心配してますよ?あなたをね。」
「ダーヴィド……それは重々承知よ。だからずっと逃げてるわ。諦めてくれると良いのだけどね。」
「……竜人族は諦める事は無いに等しいですよ。結婚していても相手を離縁させるという暴挙が有名ですし、それに死亡してからわかって墓荒らしして灰にキスをしたという噂まで聞きますからね。」

この世界は魔物にならぬ様に死亡した後は焼却するのが一般的だ。
私はその噂を聞いてゾッとして、私は顔を歪めた。

彼の足を組んだ足先が私のブーツに当たり私は避けようとしたが、つるりとした彼の尻尾がブーツに絡んできたので避けられない。

「ちょっとダーヴィド……当たっているのだけど。」
「ん?あぁ、思わずあなたを求めているようですね……私ならあなたを守れますよ?全てを使い、たとえ……竜人族を相手に対抗する術もありますし。私の元へ来ますか?」

そう言って私に手を差しできた彼は虎視眈々とチラリと舌舐めずりをしながら私を見て来ていた。

「言ったでしょ?番いるのよ?」
「えぇ、それでもと言っているですが?」

軽口ラインを超えてアウトなのだけど、私は顔を向けながら、彼の手を取るべきなのか?

私はダーヴィドという色々ありそうな彼の事は何も知らない。
それに、友達……としてではなくその手を差し出してきてる明確に好意(肉欲?)がある事は理解できる。

「もちろん……私の手の内に入れば何物からも護りますよ。」
「相手が竜人族最強かもしれなくても?」
「それは言い過ぎだと言いたかったですが、仮にもしその可能性があってもなくてもそれでも護りますよ。こう見えてただの商人ではないですし。」

ゆらりと彼がくすくすと知っているでしょ?とおかしそうに笑うので、少し背筋に冷や水をかけられたようにゾクッとした。

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