初恋の幼馴染に助けてもらったと思ったらヤンデレだった

音羽 藍

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4.人形

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夜も遅い時間だった。
時計の針は11時を回っていて、アパートの廊下はしんと静まり返っている。

その静寂を破るように、カタンと小さな音がした。

玄関のほうからだ。
私は慌てて立ち上がり、スマホをベッドに置いて向かう。


……郵便受け?

ドキリと心臓が跳ねる。
こんな時間に、誰が?

こんな時間に配達は普通はありえない。

恐る恐る玄関に近づいて、そっとポストをのぞく。
中には、薄いビニール袋に包まれた小さな荷物が入っていた。

宛名も差出人もない。
でも中身を恐る恐る開けて見た瞬間、息が止まった。

「……ローグ君?」

小さなシロクマのぬいぐるみ。

高さ約14~20cmくらいの見知った形。

青いリボンに、丸い目。
最近話題のキャラクター“ローグ君”の新作のもこもこ素材感の座る形をして、ニヘッと笑っている人形だった。

でも、どうしてここに?
私は、まだ買ってないのに。

頭の奥に、昼間のカフェでの会話がふっと蘇った。

「あ、そのキーホルダー!ローグ君ですよね、可愛いですね!新作もそういえば出るって……聞きましたよね?」
「はい、新作も欲しいんですけど、給料日が来たら買おうかなって……」

そう、あのとき店員さんと少し話した。
たわいもない世間話のつもりだった。

書店の給料なんで、余り新作が出る毎にたくさんは買えない。

なのに……

「……なんで、知ってるの?」

呟いた声が、震えていた。
どう考えても、これは偶然じゃない。
“私が欲しがっていること”を知っているあのカフェにいた誰かが、ここに届けた。

心臓がぎゅっと掴まれるように痛い。
手の中のローグ君が、妙に冷たく重く気持ち悪く感じる。

ローグ君は悪くないし、可愛いのに。

楓に連絡しようか迷う。
でも、こんな時間に電話するのも悪い気がした。
スマホを取りに向かうおうとしていた足を止めた。

そのとき、またカタンガタン。

扉が開けようとして、引っ張ったのか鍵が掛かっていたからかもう一度、小さく鳴った。

バタバタと遠ざかる足音がした。

反射的に顔を上げて、ゴクリと唾を飲み込み覗き穴を見たけれど、ドアの向こうには誰もいない。

ただ、ドアの覗き穴の向こう、ぼんやりと安いアパートの廊下の照明が滲んで見えるだけだった。

もう、気のせいじゃなかった。

震える指でドアの鍵を二重にかけ、私はリビングの明かりを全部つけた。

机の上に置かれた“ローグ君”が、
やけにこちらを見つめている気がした。
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