愛が重いなんて聞いてない

音羽 藍

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新たな草木が靡く風の章

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「………早く起きて……」

ゆらゆらと揺れる意識はただよう。

ユリウスが呼ぶ声が聞こえて私はのろのろと起き上がり、目を開けると自宅のベッドの上だった。

重たい身体を起こしてバスルームに向かい用を足した後、ベッドに戻ろうとするとガチャリと扉が開いて、ユリウスのびっくりした顔を見て私は嬉しかった。

「おはようユリウス」

なんだが久しぶりな気さえして私は微笑んだ。
瞬きして、目を開けた時にはガシッと抱きつかれて私は早いなと感心しながらユリウスの背中を撫でる。

「……ぜんぜん目覚めないし心配したんだ。ベッドに戻るよ。」
「うん……少し疲れが出たのかもしれない。」

ユリウスに抱えられてベッドに戻されて、おでこに優しくキスをしてくれて、彼は食事をとろうとしていたのか離れようとしていて、私は寂しくて少し彼の服を引っ張った。

「……ん、どうした?シア」
「少しで良いから一緒に居てくれる?」
「シア……少しなんて言わなくていいよ。ずっと居るから。」

ベッドの上に上がってきたユリウスに寄りかかり私はくんくんと少し番の匂いをかいで安心する。
最近してなかったからか、少し番の誘う匂いが少し強い。
微睡む様な気持ちよさに私はくたりと寄りかかりながら満喫した。

「………本当になにも抱えられた以外はあの男と関わりはないよな?」
「ないよ、少し気を失った時に運んでくれただけだと思う。」
「……気を失った?」

あ、しまったと口を滑って言ってしまった事に彼が私の方を向き、ガクッと押し倒されてベッドに沈む。
目が据わった青い瞳が薄暗いランプの光に当たりきらきらと虹彩が輝いていて眩い。
問い詰められているはずなのに、何処か甘くセクシーに感じるのは私が煩悩に塗れているからだろうか。

「危ない事はしないって約束したのに?」
「………してないよ。不可抗力だったの。色々巻き込まれてね。」
「……あぁ……あいつか。」

私達の間はキスができる程の至近距離で、彼の熱い息が首筋にかかりくすぐったい。
私は身を捩り彼の手と手の間から逃げようとしたが、縫い止める様にユリウスの手が胸から首筋を撫でて行き、顎から頰を撫で優しく添わされた。
これは……キスが来るという慣れた予感が当たり、彼は角度を変えて私と唇を重ね合った。
私は目を閉じて、彼が安心するならばと交わした。
彼の唇で唇をこじ開けられたがいをむさぼり合い、私の足りてなかった愛と欲が満たされていく様な気がして彼の背中に手をそわせた。

舌と舌が絡み合った、私の口の中を全てを我が物の様に、彼の尖った舌が入念に探りながら動いてぐじゅぐしゅと彼の唾液と私の唾液が混ざり合う。

彼の腰が私の下半身へとズリズリと熱く硬いモノが推し当てられて、彼が性的欲望を抱えているのは明白だった。

言葉を交わさずとも伝わる狂気的なまでの彼の深い愛と欲がそこにあって、私を求めてくれて必要とされ私はゾクゾクとする程二つの喜びと悦びが混ざり合い、さっきまで眠っていた重く眠たい身体の奥深くに燻くすぶっていた性欲に着火した。

まだ学園の事も聞きたいのにと、頭の片隅に思い描いていたが、それよりも大好きな彼に求められて応えない私はいない。

唇が離れて行き、目を開けると彼の目が爛々らんらんと輝き、今まさにしようとしていたなにか嫌なジワッとした感覚が下半身にきて、え?っと思いごめんと小さく素早く言い、下着の中を見ると来ており、私はタイミングが悪いと少し泣きたいような気持ちだった。

ユリウスは不思議そうにしていたが私がトイレに行こうといるのを見て察したらしく、大丈夫だと言い抱き上げてくれて連れて行ってくれた。



ベッドで1人で横になり、諸々の処置をした後、ユリウスが食事を持ってきてくれて、ソファーに座り、2人で食べていた。

「あの後どうなったの?」

卵と白身魚のスープを食べながら、私はユリウスに聞いた。

「……先生達に伝えて、オリエンテーリング事態は続行したよ。あの氷穴は予定されていた本来の氷穴では無く、偶然にも土砂崩れで入り口が開口した新しい氷穴だった。中に冬眠していた魔物が主となっていった感じかな。今は奥底で眠っているからそのままにして、入り口を封印する事にしたらしい。」
「アルマさんはどうなったの?」
「あぁ……グライナーはその後ルール違反で失格になった。あの後左に行かず、彼女の班は氷穴から出たらしくてな。班と別行動していただろ?それに自然破壊をする様な動きをシアの班のメンバーからの証言もあってだから失格になった。シアのいた班は氷穴に留まっていたのだがな。本人が意識不明だったから棄権という事にしたよ。でも、沼地の大岩までは同行したという名目はあるから成績には入るから安心して。」
「そうだったんだ……」
「それに、さっきの事も気にしなくて良い。君の身体が一番だから。少し気が流行ってしようとしてしまったけど、良かったかもしれない。無理をさせてしまうから。」

頭を撫でてられてから、横から抱きしめられて私は少しズーンと落ち込んでいた気持ちが温まる。

「ユリウス……ありがとう」

持っていたスプーンを取られてしまい、え?っと思っているとスープの入ったスプーンを差し出され、まだ食べれる?と言われ私は赤面した。

「じ、自分で食べれるからっ」
「……やだ、ほらあーん?」
「ぁぁ………もう」

私はにんまりとさっきの腹いせかと言う様に笑いながら差し出されたその甘い嫌がらせに私はただ求められた通りに口に含んだ。

口の中に広がる卵と白身魚が広がり、出汁の効いたスープが美味しかった。

咀嚼して飲み込み、私は横で笑いながら私の右手を握る彼の手が温かく、キラキラとする青い瞳に惚けた。

「……俺のシアに手を出そうとしてなくて良かった。もし出していたら……」
「なにか言った?」

私はぼぉと眺めていたので聞きそびれてしまい、こそっと小声で何かを言っていた彼の言葉は聞き取れず、首を傾げた。

「いや、なんでもない。それより、だいぶ復旧作業も進んだと聞いたよ。」
「……あ、うん。なんとかやってるよ。」

私は頭の片隅にあの嫌な予感のする彼の事を思い浮かべて、少し表情に出しかけていたので引き締めて出さない様にした。

ジッと彼の眼差しが向けられており、彼が一瞬私の見せた眉を顰しかめたを見たのか、なにか問いたそうに目を向けている。

「……シア、本当になにもないよな?」
「大丈夫よ、みんな優秀だもの。」

私は笑いながら、ユリウスの方へ顔を向けると睨まれながら仕方ないなと彼は言って、残りの最後のスプーンを差し出した。

私は恥ずかしいなと思いながらも、それを口に含みながら、ヒヤヒヤとした内心だった。

「……アレは今すぐに絶対やるべき事でも無いし、もう少し静養して元気になったら学園に戻れば良い……それになにかあったら俺に言ってくれ。どうにかするから。」
「うん……ありがとうね。」

私はだからユリウスには話したく無いと思いながら、大好きな人の手をギュッと掴んでいるふわふわとした気持ちに浸かりながらも、オリエンテーリングという一つの大きな悩みは終わりを告げてさっぱりとした気持ちだった。
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