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第三話 世界は俺の前に跪いた

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「では次の人。個人テーマの達成状況について発表して下さい」

 俺の報告順が来た。壇上に立つと、参加者を見渡しながら俺はプレゼンを始めた。


「プロジェクトの達成を確実にするためには、正しくゴールを設定する必要があります。私のゴールは――」

 俺は胸一杯に息を吸い込んでから叫んだ。

「世界征服であります!」

 会議室が凍り付いた。総務担当者も驚いて言葉を失っている。
 俺は構わずプレゼンを進める。

「世界征服の定義とは何か? それは世界中の人々が私の命令に服従することであります。抗命は許されず、私が死ねといえば死なねばなりません」

 聴衆はますますポカンとする。何を言っているのか整理ができない。

「世界征服を我が目標として以来、私は毎朝全人類に命令を発したのである。『生きよ』と」

「えっ?」
 ようやく聴衆に反応が現れだした。意味を理解しかねて混乱しているようだ。

「皆に生きろと命じたのだ。ほとんどの者は我が命令に従ってくれた」

 そりゃそうだよね。皆生きたいに決まっている。反抗する訳が無い。

「しかし! 残念ながら一部の者は命令に背いた」

 つまり死んだってことだね。そりゃ残念さ。

「私は彼らを許せない! 断じて許せない!」

 机を叩いて怒鳴ってやった。最前列の女性はビクンと飛び跳ねていた。

「反逆者には死を! 私は彼らに死ねと命じた」

 ていうか、勝手に死んだ人達なんだけどね。生きろという命令に従わなかったっていうことは、死んでしまったっていうことなので。

「私は世界の支配者である! 反逆者は一人残らず死を迎えた」

 完全無欠の支配ですよ。逆の証明は不可能ですから。

「以上を持ちまして私のテーマ達成状況に関する報告を終了致します。」

 私は堂々と壇を降り、席に着いた。


 ──後で教育担当者にメチャクチャ怒られた。真面目にやりなさいと。



(完)
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