うちのAIが転生させてくれたので異世界で静かに暮らそうと思ったが、外野がうるさいので自重を捨ててやった。

藍染 迅

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第38話 アンデッドのお城に突入だ!

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「ふふふ。ふはははは。ぐははははは。わーっはっはっはっはっ!」
「アリスさん、マッドサイエンティスト乗りが強烈すぎてツッコミ切れないっす」
「ついに、ついに完成したニャ!」
「約1時間でしたけどね」

「ゴーストが何ニャ? 我が電マ砲の前では、お誕生ケーキに立てられた年の数だけのローソクの火と同じニャ!」
「『風前の灯』で良いんじゃないでしょうか?」

 後、「お誕生ケーキ」て。「バースデイ・ケーキ」で良いんちゃうん? 昭和のおばちゃん感が強烈なんですけど。

「ふははは。イクぞ! 電マ砲だけに!」
「ちょっと何言ってるかわかりません」

 サイエンティスト・ハイになったアリスさんを引き連れて、我らトーメー探検隊は獲物を求めて侵攻した。

 とにかく頼りは、1にバリア、2に電マ砲である。我々はストーンズを前面に立てて進む。
 地下牢チックな通路を進むと、ぽっかりと開けた空間に出た。馬鹿でかい空間の中央にいかにもな洋館が佇んでいた。

「このゴシック建築はドラキュラ城的な演出なんだろうなあ」
「城の中を探索させるという趣向ニャ」
「城ならダンジョン(地下牢)とかもあるだろうし、拷問器具とか、暗闇、蜘蛛の巣、きしむドア……。ホラー要素は満載だなあ」
「ビビリーのジジイを迎えるにはうってつけの素材ニャ」

 そういうのは人それぞれの性向ですからねえ。みんながホラー映画好きなわけじゃないでしょ?

「嫌いだっていうだけで、耐えられないわけじゃないからね? でも嫌いだから、極力ホラー要素を排除して行こうか」
「どうするニャ?」

 俺たちは玄関の前に立った。

「まず、『きしむドア』には潤滑剤『スラ556』だ!」
「ぷるる!」

 スラ1はドアの蝶番目掛けてぶしゅっと霧を飛ばした。

 ほーら。ギギギとか言わずに、するする動くよ。

「でもって、ホーリーライト!」
「目が~、目が~……ニャ」
 
 アリスさんご協力ありがとうございます。ナノマシンが発光しただけですけどね? ホタルイカ的な?
 空間が光ると言うきらきら演出ですよ。

「あららら。天井とか、壁の隅とかに蜘蛛の巣が張ってますわねぇ。嫌だわ、美佐江さん。お掃除が足りないんではなくて?」
「かしこまりましたニャ。一気にお掃除致しましょうニャ」

 アリスが尻尾を振ると、スラ1がしずしずと前に進んだ。どたばたしたところを見たことないけど。
 にゅにゅにゅっと背中から触手が多数伸びて来て、前方各方向に広がる。

「スラ1。我が家は石造りです。思い切りお掃除をなさいニャ!」
「ぷぷる!」

 しゅごぉぉおおお!

 生体火炎放射! スラ1君の最新スキルが炸裂しました。聖なる炎の威力を見よ!

「ぷるるる」
「ふむ。ちなみに今回はアルコールを噴霧しながら燃焼させたと。除菌にも気を使ったのね。良くってよ!」

 良いですねぇ。アルコール殺菌。この火を「ホーリー・フレイム」と名付けましょうか。

「美佐江さん、空気が汚れているようですよ? 空気清浄もお願いするわ」
「お任せくださいニャ。ストーンズ、プラズマ空気清浄ニャ」
「ま゛っ!」
 
 ストーンズは横1列になって放電を開始した。そうそう。くさい臭いは元から絶たなきゃだめ!

 バリバリバリ……!

 閃光が走り、オゾン臭が漂う。高圧電流はアークとなりプラズマを発生させた。本物のプラズマが火の玉となって浮遊し、埃だの臭いの元だのを焼き尽くす。

「あっ? 何か変なのが焼けた?」
「壁から顔を出した浮遊体がプラズマに撃たれて分解したニャ」
「ぷるぷる」

 何? 精神活動を表わす電気信号を受信した?
 じゃあ、あいつがゴーストか? ちょっと、出て来るタイミング悪すぎ―!

「ゴルァアア! 何してくれてんねん? 人が苦労して発明した電マ砲使う前に自滅してどないすんニャ!」

 ああ、そうか。プラズマって電子の塊みたいなもんだよね。高温、高電圧の人口雷みたいな。
 ゴーストが電気信号でできているなら、一発でぶっ飛ばせるじゃん。ECMとか要らんわ。

「まあまあ、美佐江さん。はしたないですわよ。落ち着きましょう。お掃除が行き届いたら、ゆっくり害虫退治をしましょうね?」
「お任せニャ。ストーンズ整列! 電マ砲構え! 前進にゃ!」

 害虫退治だけに「コンバット」的な展開ですわね。

 精神攻撃にプラズマ放電が有効と判明した以上、トーメー探検隊に死角はない。物理でも魔法でも持って来いってんだ!

「前方の1室にゴミムシ発見! ゾンビ5体ニャ。ドア越しに電マ砲発射、腐った脳みそを煮てやるニャ!」
「ま゛っ!」

 あー、レンチン的攻撃ですね? 確かに、木製のドアなんかあっても関係ないですねえ。
 使い方の趣旨が変わってきている気がしますが……。

 ぼんっ。ぼんっ。ぼん、ぼんっ、ぼんっ!

「チーン! ゾンビ・グラタン完成ニャ! 具がこぼれた・・・・・ので、このまま置いて行くニャ」
「アリスさん、進路上の敵には使わないようにお願いします。部屋中びちゃびちゃになっちゃうので」
「ふむぅ。一発ぶっ放してすっきりしたのニャ! これからはエコモードで前進するニャ」

 そうですね。節電は大切ですよ。ウチは意識高い系冒険者を目指しましょう!

「ピコーン! 廊下を曲がったところにスケルトンの小隊が控えているニャ! 総勢8! 武装は盾と剣」

 うーむ。ウチの斥候が優秀すぎる。戦闘とは情報戦なのだ。敵の状況をこっちだけ知れるとなれば、一方的な蹂躙ができてしまうのである。

「スケルトン相手なら殴り放題だよね? ストーンズに見せ場を作って上げたら?」
「わん!」
「え? 『骨』が相手ならボクも行くって?」

 モンスターにそういう・・・・食物連鎖があるのかしら? ま、いいか?

「カルシウムを摂って丈夫に育ちなさい。コビ1、行ってヨシ!」
「ストーン5、遅れるニャ!」

 いつの間にかストーンズの名称がまた変わったのね。えっ? 「宝石戦隊ストーン5」だって?
 ありそうな名前だね。お母さま方の受けも良さそうな。通販CMが入れやすいよ?

「その輝きはフローレス! ストーン・ダイヤモンド!」
「あっ、そういう登場シーン的なやつは大丈夫です」

 5人分見てられないから。時短でお願いします。

「5人揃って、ストーン5!」
「はい、オッケー! 頂きました! では、戦闘開始!」

 サファイア、エメラルド、アレキサンドリアが廊下一杯に並んで前進。盾を構えて押し込むぞ。
 敵も負けじと4体のスケルトンが並んで突っ込んできた。

 盾と盾のぶつかり合いだ! 野蛮だねえ。
 こうなったらウチの子は強いよ? なぜなら、肉弾戦とは質量と質量のぶつかり合いであるからだ!

 見よ、純粋なる質量の威力を! ぶははははは!
 引かない。1ミリたりとも引かんぞ! 押せ、ストーン5!

「アリスさん、カッコいい名前を付けたものの、宝石的な要素がまったく見受けられないんですが……」
「むう。どう見ても御影石ニャ」
「動く墓石感がすごいです」

 造形が造形だけに、「墓地よりの使者」的な風情が漂うね。

「こうなったら、せめて技だけでも華麗に宝石感を漂わせるニャ!」
「大丈夫でしょうか?」
「任せるニャ! やれ、ダイヤモンド!」

 ほっ? ピカッと光ったー!

「ダイヤモンド・フラーッシュ!」
「技名はアリスさんが叫ぶんですね?」

 たぶんスタン・グレネードですよね、あれ?

「説明しよう! ダイヤモンド・フラッシュとは……」
「いや、スタン・グレネードでしょう?」
「……的なものである」

 いいか? 演出的な効果があれば。なぜかスケルトンが視力を失って混乱してるし。
 あいつら目があるのか? 目が見えなきゃ動けないだろうけど。

「わおおおおおおーん!」

 戦隊物に動物ヒーロー登場か? ローブみたいな衣装を用意して上げようかしら?
 メイ・ザ・フォース、ビー・ウィズ・ユー!

 またまた、ストーン5を足場にして天高く飛び出したぞ、われらがコビ1。
 天井が高いゴシック建築で良かったね。日本家屋でやっちゃだめよ。危ないから。

 わあ! 骨ガム食べたから、ジャンプ力が2倍になってるね。飛んでる時間が長いだけで、ほぼ意味ないけど。

 ようやく、今、着地! ぱきっと。ちゃっかり鎖骨食べたのね。スケ1が剣を取り落としたよ。

「貴様を『骨抜き』にしてやろうか?」
「そんな決め台詞はいらにゃいニャ」
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