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四杯目 大蛇を噛みしめて味わう。

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「そうだよね。山人と里人の争い、というか里人が一方的に蹂躙されていた悲劇を里人側から描いた・・・・・・・・のが八岐大蛇伝説ということになる」
「うん。大蛇つまり『おろち』の描き方をよく見ると、山人の属性が比喩的に散りばめられているね」

 須佐がいうように里人側による山人への反撃と勝利を描くことが、伝説の物語のメインテーマである。

 私がつつきたい大蛇の属性とは――。

「まず若い女や酒を好むというところ。蛇には関係ないだろう。これはもう蛮族の性癖だ」
 古今東西、蛇に対するイメージの悪さといったら。爬虫類愛好家の人たちに申し訳ないくらいだ。

「スサノヲが大蛇を退治してその尾を切ると、中から剣が出てくる。これは山人が鉄剣を作っていたということでしょう」
「草薙剣ね。天皇家三種の神器の一つだもんね。そんな大事なもんが蛇から出てくるかっていうね」

 この辺がなかなかに滋味が深い。噛めば噛むほど味が出るのだ。

 出てくる場所が「尾」からというところがまず渋い。尾とは多くの場面で「末端」を表す。

「鉄穴流しの末端で鉄が採れるという象徴だよ、これは」
 酒がうまい。ぐびり。

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