24 / 694
第1章 少年立志編
第24話 ひとまずの別れ。
しおりを挟む
「小物相手とはいえ、今日は20人を2人で片付けたそうだな?」
俺達の代わりに悪党を片付けてくれて礼を言うと、真顔で告げた。皮肉ではなく、衛兵長は本気で2人に感謝しているらしい。
小蝿のように湧いてくる悪党共を、守備隊だけで取り締まるのは大変な苦労であったのだ。
「この街で悪さをしていながらガル老師に手を出すとは、間抜けな奴らでしたな」
「たまたま田舎者が集まったのか、たかが爺と侮ったものか? 対魔術師戦の何たるかも知らぬ連中じゃったよ」
「ふうむ。おかしな話ですな。よそ者が混ざっていたのだろうか?」
衛兵長が首を傾げた。
地元の盗賊がよそ者と手を組むなど、普通ではありえないことだ。ガル師は口に出さなかったが、ネルソンが運んでいたという「物」に原因があるのかもしれない。
「旅の疲れも癒えぬ内から引き留めてすまなかった。引き取ってもらって結構だ」
これ以上聞き出せる情報は無いと見切りをつけ、衛兵長は一同を帰した。
「やれやれ。ようやく解放されたぜ」
詰め所を出るや、ダールは大きく背伸びをした。曲がりなりにも命を狙われた直後である。事情聴取の間も気が張っていたのであろう。
「ご苦労じゃったの。今日はゆっくり休むがよかろう」
ガル老師がダール達を労った。ネルソン商会には明日顔を出してくれと言われていた。
「ここでお別れだな」
クリードが脚を止めて言った。
「世話になった。暫くはこの街で用心棒をして暮らすつもりだ。何かあったら口入屋で探してくれ」
口入屋とは現代でいう職業斡旋所のような所であった。クリードのように人に雇われて働く人間の情報が自ずと集まっていた。
「俺もいずれ口入屋さんのお世話になると思います。また会いましょう」
ステファノは旅を通じて知己となったクリードに別れを告げた。
表通りを外れる所でガル老師一行とも別れ、ダールとステファノは厩に向かった。ステファノの塒が決まるまで数日はダールに泊めて貰えることになっていた。
「何もねえが、まあゆっくりして行け」
ダールの住処は厩に隣接した長屋で、数人の馬丁が寝泊まりしていた。
言葉の通り、狭い部屋にはベッドの他は殆ど何もなかった。盗まれる物が無いので戸締りも最低限だった。
「すみません。世話になります」
ステファノは律儀に頭を下げた。宿に泊まればそれだけ金が出て行く。狭かろうと汚かろうと、泊めて貰えるだけでありがたいことであった。
馬の世話を終え体を清めると、後は飯を食って寝るだけだ。旅の疲れで遠出をする気力もなく、近所の飯屋で夕食を掻き込むと二人は早々と眠りに就いた。
次の日、ダールは1日骨休めをすると言って朝から寝坊を決め込んだ。馬の世話はステファノが代わってやり、落ち着いた所でネルソン商会を訪ねて行った。
薬種問屋という商売柄か、ネルソン商会の店構えは地味な物であった。間口も建物の高さも控えめで大店然とした所は無い。見る人が見れば目立たぬ所に金を掛けているのがわかる。そういった造作だった。
「よう、ステファノじゃないか。よく来たな」
店のドアを開けて店内を覗き込んでいると、ネルソンの息子コッシュが声を掛けて来た。
「コッシュさん、おはようございます」
「旅じゃ世話になったな。昨夜はよく寝られたか?」
「はい。早めに休んでぐっすり。お陰で疲れも取れたようです」
「そいつは何よりだ。親父に話があるんだろ? そこに座ってちょっと待っててくれ」
「おい。こいつはうちの知り合いでステファノだ。お茶でも出してやってくれ。俺は親父の都合を聞いてくる」
コッシュはてきぱきと使用人に茶の接待を命じると、自分は奥へと歩いて行った。
「すみません。頂きます」
出された紅茶に口を付けながら、ステファノは見慣れぬ店内を見回した。薬種問屋という商売は初めて目にする。
薬草の匂いが混ざり合っているのか、店内には独特の香りが漂っていた。
俺達の代わりに悪党を片付けてくれて礼を言うと、真顔で告げた。皮肉ではなく、衛兵長は本気で2人に感謝しているらしい。
小蝿のように湧いてくる悪党共を、守備隊だけで取り締まるのは大変な苦労であったのだ。
「この街で悪さをしていながらガル老師に手を出すとは、間抜けな奴らでしたな」
「たまたま田舎者が集まったのか、たかが爺と侮ったものか? 対魔術師戦の何たるかも知らぬ連中じゃったよ」
「ふうむ。おかしな話ですな。よそ者が混ざっていたのだろうか?」
衛兵長が首を傾げた。
地元の盗賊がよそ者と手を組むなど、普通ではありえないことだ。ガル師は口に出さなかったが、ネルソンが運んでいたという「物」に原因があるのかもしれない。
「旅の疲れも癒えぬ内から引き留めてすまなかった。引き取ってもらって結構だ」
これ以上聞き出せる情報は無いと見切りをつけ、衛兵長は一同を帰した。
「やれやれ。ようやく解放されたぜ」
詰め所を出るや、ダールは大きく背伸びをした。曲がりなりにも命を狙われた直後である。事情聴取の間も気が張っていたのであろう。
「ご苦労じゃったの。今日はゆっくり休むがよかろう」
ガル老師がダール達を労った。ネルソン商会には明日顔を出してくれと言われていた。
「ここでお別れだな」
クリードが脚を止めて言った。
「世話になった。暫くはこの街で用心棒をして暮らすつもりだ。何かあったら口入屋で探してくれ」
口入屋とは現代でいう職業斡旋所のような所であった。クリードのように人に雇われて働く人間の情報が自ずと集まっていた。
「俺もいずれ口入屋さんのお世話になると思います。また会いましょう」
ステファノは旅を通じて知己となったクリードに別れを告げた。
表通りを外れる所でガル老師一行とも別れ、ダールとステファノは厩に向かった。ステファノの塒が決まるまで数日はダールに泊めて貰えることになっていた。
「何もねえが、まあゆっくりして行け」
ダールの住処は厩に隣接した長屋で、数人の馬丁が寝泊まりしていた。
言葉の通り、狭い部屋にはベッドの他は殆ど何もなかった。盗まれる物が無いので戸締りも最低限だった。
「すみません。世話になります」
ステファノは律儀に頭を下げた。宿に泊まればそれだけ金が出て行く。狭かろうと汚かろうと、泊めて貰えるだけでありがたいことであった。
馬の世話を終え体を清めると、後は飯を食って寝るだけだ。旅の疲れで遠出をする気力もなく、近所の飯屋で夕食を掻き込むと二人は早々と眠りに就いた。
次の日、ダールは1日骨休めをすると言って朝から寝坊を決め込んだ。馬の世話はステファノが代わってやり、落ち着いた所でネルソン商会を訪ねて行った。
薬種問屋という商売柄か、ネルソン商会の店構えは地味な物であった。間口も建物の高さも控えめで大店然とした所は無い。見る人が見れば目立たぬ所に金を掛けているのがわかる。そういった造作だった。
「よう、ステファノじゃないか。よく来たな」
店のドアを開けて店内を覗き込んでいると、ネルソンの息子コッシュが声を掛けて来た。
「コッシュさん、おはようございます」
「旅じゃ世話になったな。昨夜はよく寝られたか?」
「はい。早めに休んでぐっすり。お陰で疲れも取れたようです」
「そいつは何よりだ。親父に話があるんだろ? そこに座ってちょっと待っててくれ」
「おい。こいつはうちの知り合いでステファノだ。お茶でも出してやってくれ。俺は親父の都合を聞いてくる」
コッシュはてきぱきと使用人に茶の接待を命じると、自分は奥へと歩いて行った。
「すみません。頂きます」
出された紅茶に口を付けながら、ステファノは見慣れぬ店内を見回した。薬種問屋という商売は初めて目にする。
薬草の匂いが混ざり合っているのか、店内には独特の香りが漂っていた。
10
あなたにおすすめの小説
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる