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第2章 魔術都市陰謀編
第40話 何が幸いするか分からないもんだな。
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結局、ダニエルのお陰でその夜はぐっすり眠れた。
「何が幸いするかわからないもんだな」
日の出と共に目覚めたステファノは、手ぬぐいを片手に表の井戸まで顔を洗いに行った。
部屋に戻って着替え終わる頃、ダニエルが目を覚ました。
「おう、早いな。寝られたか?」
「お陰様で」
皮肉に聞こえるかなと気を使ったが、ダニエルが気に留めた様子は無かった。
1人になった時間を利用して、ステファノはノートを開く。既に寝る前に頭の中で整理をしてあるので、後はペンを走らせるだけだった。
王子に関わる密談の内容は記録に残せない。自分だけの符丁にして、ポイントを書き出した。
「やっぱり文章にすると、わかりやすくなるな」
話だけでは見過ごしていたポイントが浮かび上がって来る。
王子を殺したいと考える動機:(1)王位継承権争い、(2)過去の恨み、(3)金や財産を手に入れるため、(4)政治的姿勢の対立、(5)色恋沙汰、(6)学問・宗教など意見の対立、(7)その他。
「(1)とか(3)はないと思うけど。他の理由は調べてみないと何とも言えないな」
王子という立場を考えると、(4)や(6)の可能性は否定できない。年頃を考えると、(5)も可能性はある。
ソフィアさんに聞いてみたいが、どこまで答えてくれるだろうか?
ノートを片付けた所にダニエルが戻って来た。寮のあれこれを教わっていると6時の鐘が鳴った。
「こいつが新しく入ったステファノだ。仲良くしてやってくれ」
食堂ではダニエルが他の入寮者にステファノを紹介してくれた。寮ではダニエルが最年長だった。
「俺は来月退寮することになっている」
19歳の誕生日に独り立ちする仕来りだそうだ。ダニエルの場合はそのまま通いで商会勤務を続ける。
「薬の行商を始める奴もいるがよ。俺は田舎が苦手なんでな」
生まれも育ちも呪タウン。仕事で外に出たことはあるが、その時に田舎の不便さを思い知ったそうだ。
「王都以外なら、ここが一番だ」
魔術のメッカであるこの街は文明の最先端にあると言って良い。ステファノもそう思った。
もちろんいつか王都にも行ってみたいが。
朝食後の掃除では、ステファノの手際良さが目立った。
「何年も店の掃除をやらされて来たんで」
ステファノとしてはできて当たり前のことなので、褒められると却って照れ臭い。
そうこうしている間に、約束の8時がやって来た。
「おはようございます。体調はどうですか?」
マルチェルは下の者に対しても態度を変えない人のようだ。だから優しいとも限らないが。
「よく眠れたんで、体調は良さそうです」
「結構。お前にはまず外で働いてもらう訳ですが、一応店のことを一通り説明しておきましょう」
曰く、当商会はネルソン会長が一代で築いた物であること。曰く、王室御用達の商人であること。王立病院、診療所、薬店などへの卸が商売の中心であること。メイドなど内勤の使用人を除き従業員は基本的な薬種調合の技術を身につけること。その中で優秀者には王立病院と協力して新薬剤の開発に当たらせていること。
「当商会はこの国の医療を支える存在であると理解して下さい」
ステファノは驚かされた。そこまでネルソンの影響力が強いとは思っていなかった。
「あの、旦那様はどこでそれだけの知識を学ばれたのでしょうか?」
「王立アカデミーです。ご卒業後は王立病院で医学の研究をなさっていました」
「それでは旦那様は、元お医者様ですか?」
「広い意味ではそうです。病人を直接治療するのではなく、治療法を開発する研究者のお立場でした」
その時に開発した数々の処方がネルソン商会の礎となっている。
「ご実家は立派なおうちだったのでしょうね」
「お前なら想像が付くでしょう。お生まれは貴族の一員でした」
「何が幸いするかわからないもんだな」
日の出と共に目覚めたステファノは、手ぬぐいを片手に表の井戸まで顔を洗いに行った。
部屋に戻って着替え終わる頃、ダニエルが目を覚ました。
「おう、早いな。寝られたか?」
「お陰様で」
皮肉に聞こえるかなと気を使ったが、ダニエルが気に留めた様子は無かった。
1人になった時間を利用して、ステファノはノートを開く。既に寝る前に頭の中で整理をしてあるので、後はペンを走らせるだけだった。
王子に関わる密談の内容は記録に残せない。自分だけの符丁にして、ポイントを書き出した。
「やっぱり文章にすると、わかりやすくなるな」
話だけでは見過ごしていたポイントが浮かび上がって来る。
王子を殺したいと考える動機:(1)王位継承権争い、(2)過去の恨み、(3)金や財産を手に入れるため、(4)政治的姿勢の対立、(5)色恋沙汰、(6)学問・宗教など意見の対立、(7)その他。
「(1)とか(3)はないと思うけど。他の理由は調べてみないと何とも言えないな」
王子という立場を考えると、(4)や(6)の可能性は否定できない。年頃を考えると、(5)も可能性はある。
ソフィアさんに聞いてみたいが、どこまで答えてくれるだろうか?
ノートを片付けた所にダニエルが戻って来た。寮のあれこれを教わっていると6時の鐘が鳴った。
「こいつが新しく入ったステファノだ。仲良くしてやってくれ」
食堂ではダニエルが他の入寮者にステファノを紹介してくれた。寮ではダニエルが最年長だった。
「俺は来月退寮することになっている」
19歳の誕生日に独り立ちする仕来りだそうだ。ダニエルの場合はそのまま通いで商会勤務を続ける。
「薬の行商を始める奴もいるがよ。俺は田舎が苦手なんでな」
生まれも育ちも呪タウン。仕事で外に出たことはあるが、その時に田舎の不便さを思い知ったそうだ。
「王都以外なら、ここが一番だ」
魔術のメッカであるこの街は文明の最先端にあると言って良い。ステファノもそう思った。
もちろんいつか王都にも行ってみたいが。
朝食後の掃除では、ステファノの手際良さが目立った。
「何年も店の掃除をやらされて来たんで」
ステファノとしてはできて当たり前のことなので、褒められると却って照れ臭い。
そうこうしている間に、約束の8時がやって来た。
「おはようございます。体調はどうですか?」
マルチェルは下の者に対しても態度を変えない人のようだ。だから優しいとも限らないが。
「よく眠れたんで、体調は良さそうです」
「結構。お前にはまず外で働いてもらう訳ですが、一応店のことを一通り説明しておきましょう」
曰く、当商会はネルソン会長が一代で築いた物であること。曰く、王室御用達の商人であること。王立病院、診療所、薬店などへの卸が商売の中心であること。メイドなど内勤の使用人を除き従業員は基本的な薬種調合の技術を身につけること。その中で優秀者には王立病院と協力して新薬剤の開発に当たらせていること。
「当商会はこの国の医療を支える存在であると理解して下さい」
ステファノは驚かされた。そこまでネルソンの影響力が強いとは思っていなかった。
「あの、旦那様はどこでそれだけの知識を学ばれたのでしょうか?」
「王立アカデミーです。ご卒業後は王立病院で医学の研究をなさっていました」
「それでは旦那様は、元お医者様ですか?」
「広い意味ではそうです。病人を直接治療するのではなく、治療法を開発する研究者のお立場でした」
その時に開発した数々の処方がネルソン商会の礎となっている。
「ご実家は立派なおうちだったのでしょうね」
「お前なら想像が付くでしょう。お生まれは貴族の一員でした」
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