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第2章 魔術都市陰謀編
第41話 人間とはそういう物なのです。
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「それではソフィアさんも?」
「もちろんソフィア様も貴族のお生まれです。旦那様は家名を捨て平民として暮らしていらっしゃいますが、ソフィア様はギルモア家の子女でいらっしゃいます」
成程。そのコネで王族に関する情報に詳しいし、ステファノを側仕えとして送り込むこともできるのか。それにしても相当な信用である。
「さて、お前には本来であれば当商会で扱っている商品全般を教え込むべきなのですが……」
翌日から王子つきとなるステファノは店の取引を手伝うことはないし、もっと実践的な知識を必要としていた。
「警戒すべき毒と、その解毒剤について勉強してもらいましょうか」
マルチェルは木箱と事典のような目録をテーブルの上に置いた。
「マルチェルさん、1つだけ聞いておいてよろしいですか?」
「何ですか?」
箱の蓋を開けようとした手を止めて、マルチェルは尋ねた。
「毒殺の実行犯は捕まったんですか?」
「……。いや、誰が犯人か割り出すことができなかったそうです」
「そうですか。それなら良かった」
「良かったとは? どういう意味ですか?」
マルチェルはステファノの言葉を聞いても、目くじらを立てなかった。人と違う感性を持つステファノの言動を理解し始めたらしい。
「直接毒を盛れる立場の人間は潔白を証明されたということでしょう?」
「確かにその通りです」
料理人、料理を運ぶメイド。王子が口にする食品を取り扱う人間には疑わしい所が無かった。勿論徹底的な身辺調査を行った上で役目につけている。互いの目もあり、一服盛るなどという行為は不可能なのだ。
「ということは、素材として調理場に入った時点で既に毒物が混入しているのでしょう」
それは捜査に当たったメイド長や相談を受けたネルソン自身が到達した結論であった。
「それにしても早すぎる。お前の推量は手品のようだ」
手にした情報の量が違いすぎる。ステファノは料理長に会ったこともないのだから。
「でも、ネルソンさんは十分事情をご存じでしょう? ならば、自分にとっては同じことです」
ネルソンがこう判断したからには、事態はこうであったはずだ。そこまで想像できるというのか。
「答えが出ていることを後からなぞるだけですから。簡単なことです」
マルチェルにはステファノを取り巻く違和感の正体が、少し見えた気がした。
「誰でも答えが見える訳ではないのですよ」
「え?」
「目の前にある物でも見えない人間がいるのです。私とて人のことは言えない。人間とはそういう物なのです」
人は知覚する物を無意識に選択している。心理学において「選択的認知」と呼ばれる事実である。
「お前の想像力とやらは他人の視点まで再現することができるようですね」
マルチェルは再び箱の蓋に手を掛けると、中身をテーブルの上に並べた。
「これらが考えられる毒物とその解毒剤です」
6本のガラス瓶。3種の毒とその解毒剤。
「毒はいずれも無味無臭、熱を通しても毒性を失わないという特徴を持っています」
無味無臭。味見をしても発見できない。
「解毒剤を混ぜて使うことはできますか?」
それができれば、1本に纏めてしまえる。毒の種類を確かめなくとも解毒ができる。
「残念ながらできません。薬同士が反応し、薬効が失われてしまいます」
「厄介ですね。解毒剤を飲ませるためには毒の種類を知らなければならないんですね」
ステファノは腕組みをして思案した。
「やはり毒を持ち込ませぬようにするしかありませんね」
「もちろんソフィア様も貴族のお生まれです。旦那様は家名を捨て平民として暮らしていらっしゃいますが、ソフィア様はギルモア家の子女でいらっしゃいます」
成程。そのコネで王族に関する情報に詳しいし、ステファノを側仕えとして送り込むこともできるのか。それにしても相当な信用である。
「さて、お前には本来であれば当商会で扱っている商品全般を教え込むべきなのですが……」
翌日から王子つきとなるステファノは店の取引を手伝うことはないし、もっと実践的な知識を必要としていた。
「警戒すべき毒と、その解毒剤について勉強してもらいましょうか」
マルチェルは木箱と事典のような目録をテーブルの上に置いた。
「マルチェルさん、1つだけ聞いておいてよろしいですか?」
「何ですか?」
箱の蓋を開けようとした手を止めて、マルチェルは尋ねた。
「毒殺の実行犯は捕まったんですか?」
「……。いや、誰が犯人か割り出すことができなかったそうです」
「そうですか。それなら良かった」
「良かったとは? どういう意味ですか?」
マルチェルはステファノの言葉を聞いても、目くじらを立てなかった。人と違う感性を持つステファノの言動を理解し始めたらしい。
「直接毒を盛れる立場の人間は潔白を証明されたということでしょう?」
「確かにその通りです」
料理人、料理を運ぶメイド。王子が口にする食品を取り扱う人間には疑わしい所が無かった。勿論徹底的な身辺調査を行った上で役目につけている。互いの目もあり、一服盛るなどという行為は不可能なのだ。
「ということは、素材として調理場に入った時点で既に毒物が混入しているのでしょう」
それは捜査に当たったメイド長や相談を受けたネルソン自身が到達した結論であった。
「それにしても早すぎる。お前の推量は手品のようだ」
手にした情報の量が違いすぎる。ステファノは料理長に会ったこともないのだから。
「でも、ネルソンさんは十分事情をご存じでしょう? ならば、自分にとっては同じことです」
ネルソンがこう判断したからには、事態はこうであったはずだ。そこまで想像できるというのか。
「答えが出ていることを後からなぞるだけですから。簡単なことです」
マルチェルにはステファノを取り巻く違和感の正体が、少し見えた気がした。
「誰でも答えが見える訳ではないのですよ」
「え?」
「目の前にある物でも見えない人間がいるのです。私とて人のことは言えない。人間とはそういう物なのです」
人は知覚する物を無意識に選択している。心理学において「選択的認知」と呼ばれる事実である。
「お前の想像力とやらは他人の視点まで再現することができるようですね」
マルチェルは再び箱の蓋に手を掛けると、中身をテーブルの上に並べた。
「これらが考えられる毒物とその解毒剤です」
6本のガラス瓶。3種の毒とその解毒剤。
「毒はいずれも無味無臭、熱を通しても毒性を失わないという特徴を持っています」
無味無臭。味見をしても発見できない。
「解毒剤を混ぜて使うことはできますか?」
それができれば、1本に纏めてしまえる。毒の種類を確かめなくとも解毒ができる。
「残念ながらできません。薬同士が反応し、薬効が失われてしまいます」
「厄介ですね。解毒剤を飲ませるためには毒の種類を知らなければならないんですね」
ステファノは腕組みをして思案した。
「やはり毒を持ち込ませぬようにするしかありませんね」
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