飯屋のせがれ、魔術師になる。

藍染 迅

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第4章 魔術学園奮闘編

第323話 ステファノ、空気圧縮器について語る。

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「スールーさん、お待たせしました。やっと、合流できましたよ」
「時間通りだね。待ちかねたよ」

 気送管の展示ブースでは4時からの空気圧縮器の説明を聞こうと、魔術学講師たちが待ち構えていた。大半は既に個人発明品や発表の部でやり取りをした先生たちであった。

「みなさん、お待たせしました。魔道具部分担当のステファノが到着しました。空気圧縮器については彼からご説明いたします」
「こんにちは、魔術科のステファノです。まず、こちらの絵をご覧ください。空気圧縮機の断面図を表わしたものです」
 
 ステファノは解説図を描いたボードを掲げて観覧者に示した。そこにはがらんどうの空気タンクの断面が示されていた。

「ご覧のように中は空洞になっています。空気を取り込む吸気弁と、圧縮した空気を送り出す排気弁を備えています」

 操作者が魔力を送り込むと、空気の圧縮と吸排気弁の操作を連動して行うように術式が組まれていた。

 それ以外は非魔術式・・・・の空気圧縮器と同じ動作をする。それによって、互換性を保って交換することができた。

「魔道具式と非魔術式の空気圧縮器は状況によって選択できるようにしてあります。魔術師が操作に従事できる場合は労力の要らない魔道具式が便利でしょう。反対に、魔術が使えない環境では誰でも使える非魔術式が有用です」

 ステファノは魔道具式空気圧縮器の実物を持ち上げた。

「これが実物です。どなたか、これに魔力を送り込んで頂けますか?」

 手を上げた観覧者に、ステファノは空気圧縮器を手渡した。

「属性は何でも良いのだね? 力の大きさは?」
「動作には影響ありません。ごく小さな魔力で十分です」

 空気圧縮器を手にした魔術科講師は、静かに呪文を唱えた。

「我は命ず。小さき炎の力をここに」

 手の上の空気圧縮器が、きしっと音を立てた。

「ありがとうございます。こちらにいただきます」

 圧縮機を受け取ったステファノは、排気口を上に向け、その上に厚手の布をかぶせた。
 
「ここにあるバルブを開くと、圧縮された空気が解放されて排気口から吹き出します。行きますよ?」

 バシュッ!

 思ったよりも大きな音を立てて排気口から吹き出した空気が、被せられた布を高々と吹き飛ばした。
 ひらひらと落ちてくる布を受け止め、ステファノは聴衆にお辞儀をした。
 
「これが魔道具式空気圧縮器です」

「ふむ。面白い発明品だね。しかし、魔道具にする必要はあるのかな?」
「そうですな。魔術師が使うのであれば、風魔術で空気を圧縮すれば済むことに思えますな」

 ユニークな発明品であり、貴重な魔道具であることを認めつつも、観覧者からは魔道具にする必要性を問われた。
 
「いくつか理由があります。1つ目の理由は、非魔術式圧縮器との互換性維持です」
「なるほど。同じように作動するためには同じような大きさの力で圧縮することが必要だと」
「その通りです。誰が使っても同じ動作をさせるための工夫です」

 もっともな説明に、観覧者たちは頷いた。

「2つめの理由は、風属性を持たない魔術師にも使えるようにするためです」
「確かに、それは魔道具の優位性だな。属性に縛りがあっては使える者が限られてしまう」

「3つ目の理由は、魔術の使用が制限された場所でも使用できるようにするためです」
「それももっともな理由だね。アカデミーでも大半の場所では魔術の一般的使用が禁じられているわけだし」

 3つめの理由も、頷けるものであった。
 ステファノは自分の説明が受け入れられたことを見届けて、締めくくりの言葉を述べた。

「我々情革研は、できるだけ多くの人が制約なく使える技術を目標としています。優れた発明品でも一部の人だけが使えるものでは不十分だと考えます。世の中全体を豊かにするために、汎用性と普遍性を追求いたします。ご清聴ありがとうございました」

 魔術と非魔術、その双方をバランスよくと入れているところに情革研の特長があった。それはメンバー構成の妙であり、メンバーが共有する価値観でもあった。

 仕事の分担や進め方についても同じことが言えた。

 情革研は近代的な分業制を上手く取り入れていた。製作面におけるキムラーヤ商会の存在が大きかったが、全体としての調整はスールーの手腕によるところが大きい。
 現代的な意味におけるプロデュース力を発揮していると言えた。

「その辺の総合的な目標達成方法についても論文の中で触れていますからね。皆さん、ぜひお読みになっていただきたい!」

 ステファノの説明を引き取り、スールーはプロモーションに力を入れることも忘れなかった。

――――――――――
 ここまで読んでいただいてありがとうございます。

◆次回「第324話 マジ・アタッカーズの苦難。」

「……ということで、3人1組の運用を行うことにより再詠唱に必要なクールタイムを実質上ゼロにするという戦術的魔術攻撃が可能になるのであります!」

「続きまして、『攻撃魔術師集団マジ・アタッカーズ』との質疑応答タイムに移らせていただきます。質問がある方は、挙手にてお申し込みください」

 ジロー・コリントとその取り巻き2名による発表が終了し、質疑応答が始まった。
 しかし、一向に質問者の手が上がらない。

 会場を見渡してそれを見て取ったマリアンヌ魔術学科長が、仕方なく自ら手を挙げた。

「それでは、マリアンヌ魔術学科長、ご質問をどうぞ」
 
 ……

◆お楽しみに。
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