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第一章 追放と仲間探し
48話「傭兵案内所の頭領は人狼?」
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頭領とアリスによる腕相撲勝負が開始されると互の腕には、血管が太く浮き出るほどに力が込められているのが見ていて分かる。そして両者ともに一歩も譲らない膠着状態を見せると頭領は、
「ほう、この私に力で張り合うとは中々に素質のある者だな」
そう言いながらまだまだ余裕が残されているような雰囲気を見せつけていた。
「あら、そうですか? あまり力に関しては気にしたことがありませんが、その言葉は褒め言葉として受け取らせて頂きますわ」
笑顔で答えながら静かに力を手に込めていく仕草をアリスは見せると一気に勝負を畳み掛ける姿勢を見せていた。
しかし力に関しては気にしたことがないというは、絶対に嘘なのではないかと思えてならない。
あれだけ傭兵達を雑魚モブのように次々と薙ぎ倒しては力自慢をしていたというのにだ。
だが勝負を決めに来ているのは何もアリスだけではく頭領も同様の様子であり、彼女の表情が一瞬だけ柔らかいものから険しいものへと変化すると、それはまるで研がれたナイフのように鋭く鋭利な威圧感を放出していた。
けれどこれは俺の見間違いの可能性が大いにあるのだが、頭領の腕が先程と比べて一回り大きく、そしてより筋肉質へと変化しているような気がしてならないのだ。
だがそんなことはあり得る筈もないだろうとして、これは酒の飲みすぎで起こした一種の幻覚だとして割り切る考え方をすると直ぐに意識から外した。それから二人の勝負に決着がつきそうになると彼女らの周りに覇気のような雰囲気が立ち込めて、
「これでお仕舞いですわっ!」
アリスは声を張り出すと共に自身の体を傾けて腕に更なる力を与えていた。
「ははっ。この私に勝つことなんぞ、まだまだ早いことだよ。お嬢ちゃん」
軽く笑みを浮かべると頭領は彼女の動きに紙一重の感覚で反応したのか、余裕綽々の言葉を使いつつも自身の腕を微動だにさせていなかった。
そう、アリスがあれだけ力を乗せた腕を彼女は涼しい顔をして受けているのだ。
「ふむ、これで終わりだな」
そして頭領がその言葉を呟くと同時に、まるで赤子の腕を捻るが如く軽やかな動きで押していくと、やがて彼女の手の甲は机の上へと触れさせられていた。
「な、なんですって!?」
自身の手を見ながらアリスは負けたことが信じれないような表情を見せていて、それは生まれて初めて与えられた敗北というものなのかも知れない。
しかし二人の勝負に思いのほか熱中してしまうと俺は酒を飲むことすら忘れていて、これではつまみがどうこうので一杯やるどころの問題ではないだろう。
そもそもうちの脳筋お嬢様が単純に力業で負けるとは……。
そんなことがあり得る日が来ようとは、にわかには信じ難い事実である。=(区切り)
「はははっ! いやぁ、中々に楽しめたよ。まさか力の8パーセントを使わされることになろうとはな」
机の上に置かれていた木製のジョッキを手に取ると頭領は盛大に笑いながら、勝利の美酒と言わんばかり一気に酒を胃の腑へと流し込んでいた。
「あ、あれで半分の力も出していないんですの……?」
それは自身のプライドが少なからず傷ついた事を意味していたのだろうか、アリスは震える声で呟くと露骨に狼狽えていて酔も覚めたように感じられる。
だがそんな彼女の姿を目の当たりにすると、ここは仲間として何か声を掛けるべきかと思い、椅子から腰を上げてアリスの元へと近づいていく。
「そんなに強かったのか? 怪力女のお前でさえ厳しいのか?」
肩に手を乗せながら頭領の強さについて単純な質問をすることにした。けれどこの選択はどうやら間違いなようで透かさず拳が視界の真ん中に飛んでくると、それは普段の俺ならば避けること自体は容易いことだろうが、生憎と今回は酒により感覚が鈍り回避することは不可能である。
それ故にアリスからの拳を顔面で諸にめり込ませることになると、
「わたくしは怪力女ではございませんわっ! まったく、もう! 失礼なことを言わないでくださいまし!」
あたかも自身の力が普通であるかのように言うが一般的な女性は拳を固めて一番に顔は狙わないと思うのだ。
「ま、前が見えねえよ……」
顔中に広がる理不尽な痛みのせいで自然と涙が零れ落ちていく。
「ですが……そうですわね。まるで人と戦っているような気がしませんですの。あれそう例えるなら、まるで野生の狼と戦っているような……」
先程の戦いを振り返るようにして彼女は独り言を漏らしているが、頭領が野生の狼なわけがないだろうとしてアリスから意識を外した。恐らく彼女は戦いに負けたという事実を認めたくないが故に、そんな現実逃避のような事を妄想しているのだろう。
「あれ、本人から聞いてないんっすか? 頭領ってああみえて人狼の一族なんすよ!」
しかし背後から突如として軽い口調の女性傭兵が話しかけてくると、俺とアリスの耳はその言葉を聞き逃すことはなく見事までに同じ動きを見せた。
「「じ、人狼!?」」
そう、同時に振り返りながら滅茶苦茶気になる言葉を訊き返したのである。
「……あっ、もしかして二人とも人狼については知らない感じっすか?」
俺達の反応を見て色々と察したのか女性は首を傾げていたが、人狼という言葉自体をこの異世界で聞いたのは紛れもなく初めての事実であり、気になることにアリスも同様に驚いていることから、人狼というのは珍しい部類の言葉に入るのかも知れない。
「俺は知らないけど……アリスも知らないのか?」
「一応話のみでは聞いたことがありますわ。でも詳しいことはなにも……」
この世界の住人でもあるアリスでさえ話のみでしか人狼については知らないらしく、やはり人狼というのは中々に希少性が高い言葉であることは確かのようである。
「あー、だったら教えてあげるっす! でもアタシから聞いたとういのは内緒にしてくださいね! あとで見つかったら色々と面倒なので! あははっ!」
なんともお気楽な性格をしているような女性ではあるが、人狼という知識が得られることについては正直に言えば利点でしかなくて、名もしれぬ彼女に感謝の念を捧げることにした。
「ほう、この私に力で張り合うとは中々に素質のある者だな」
そう言いながらまだまだ余裕が残されているような雰囲気を見せつけていた。
「あら、そうですか? あまり力に関しては気にしたことがありませんが、その言葉は褒め言葉として受け取らせて頂きますわ」
笑顔で答えながら静かに力を手に込めていく仕草をアリスは見せると一気に勝負を畳み掛ける姿勢を見せていた。
しかし力に関しては気にしたことがないというは、絶対に嘘なのではないかと思えてならない。
あれだけ傭兵達を雑魚モブのように次々と薙ぎ倒しては力自慢をしていたというのにだ。
だが勝負を決めに来ているのは何もアリスだけではく頭領も同様の様子であり、彼女の表情が一瞬だけ柔らかいものから険しいものへと変化すると、それはまるで研がれたナイフのように鋭く鋭利な威圧感を放出していた。
けれどこれは俺の見間違いの可能性が大いにあるのだが、頭領の腕が先程と比べて一回り大きく、そしてより筋肉質へと変化しているような気がしてならないのだ。
だがそんなことはあり得る筈もないだろうとして、これは酒の飲みすぎで起こした一種の幻覚だとして割り切る考え方をすると直ぐに意識から外した。それから二人の勝負に決着がつきそうになると彼女らの周りに覇気のような雰囲気が立ち込めて、
「これでお仕舞いですわっ!」
アリスは声を張り出すと共に自身の体を傾けて腕に更なる力を与えていた。
「ははっ。この私に勝つことなんぞ、まだまだ早いことだよ。お嬢ちゃん」
軽く笑みを浮かべると頭領は彼女の動きに紙一重の感覚で反応したのか、余裕綽々の言葉を使いつつも自身の腕を微動だにさせていなかった。
そう、アリスがあれだけ力を乗せた腕を彼女は涼しい顔をして受けているのだ。
「ふむ、これで終わりだな」
そして頭領がその言葉を呟くと同時に、まるで赤子の腕を捻るが如く軽やかな動きで押していくと、やがて彼女の手の甲は机の上へと触れさせられていた。
「な、なんですって!?」
自身の手を見ながらアリスは負けたことが信じれないような表情を見せていて、それは生まれて初めて与えられた敗北というものなのかも知れない。
しかし二人の勝負に思いのほか熱中してしまうと俺は酒を飲むことすら忘れていて、これではつまみがどうこうので一杯やるどころの問題ではないだろう。
そもそもうちの脳筋お嬢様が単純に力業で負けるとは……。
そんなことがあり得る日が来ようとは、にわかには信じ難い事実である。=(区切り)
「はははっ! いやぁ、中々に楽しめたよ。まさか力の8パーセントを使わされることになろうとはな」
机の上に置かれていた木製のジョッキを手に取ると頭領は盛大に笑いながら、勝利の美酒と言わんばかり一気に酒を胃の腑へと流し込んでいた。
「あ、あれで半分の力も出していないんですの……?」
それは自身のプライドが少なからず傷ついた事を意味していたのだろうか、アリスは震える声で呟くと露骨に狼狽えていて酔も覚めたように感じられる。
だがそんな彼女の姿を目の当たりにすると、ここは仲間として何か声を掛けるべきかと思い、椅子から腰を上げてアリスの元へと近づいていく。
「そんなに強かったのか? 怪力女のお前でさえ厳しいのか?」
肩に手を乗せながら頭領の強さについて単純な質問をすることにした。けれどこの選択はどうやら間違いなようで透かさず拳が視界の真ん中に飛んでくると、それは普段の俺ならば避けること自体は容易いことだろうが、生憎と今回は酒により感覚が鈍り回避することは不可能である。
それ故にアリスからの拳を顔面で諸にめり込ませることになると、
「わたくしは怪力女ではございませんわっ! まったく、もう! 失礼なことを言わないでくださいまし!」
あたかも自身の力が普通であるかのように言うが一般的な女性は拳を固めて一番に顔は狙わないと思うのだ。
「ま、前が見えねえよ……」
顔中に広がる理不尽な痛みのせいで自然と涙が零れ落ちていく。
「ですが……そうですわね。まるで人と戦っているような気がしませんですの。あれそう例えるなら、まるで野生の狼と戦っているような……」
先程の戦いを振り返るようにして彼女は独り言を漏らしているが、頭領が野生の狼なわけがないだろうとしてアリスから意識を外した。恐らく彼女は戦いに負けたという事実を認めたくないが故に、そんな現実逃避のような事を妄想しているのだろう。
「あれ、本人から聞いてないんっすか? 頭領ってああみえて人狼の一族なんすよ!」
しかし背後から突如として軽い口調の女性傭兵が話しかけてくると、俺とアリスの耳はその言葉を聞き逃すことはなく見事までに同じ動きを見せた。
「「じ、人狼!?」」
そう、同時に振り返りながら滅茶苦茶気になる言葉を訊き返したのである。
「……あっ、もしかして二人とも人狼については知らない感じっすか?」
俺達の反応を見て色々と察したのか女性は首を傾げていたが、人狼という言葉自体をこの異世界で聞いたのは紛れもなく初めての事実であり、気になることにアリスも同様に驚いていることから、人狼というのは珍しい部類の言葉に入るのかも知れない。
「俺は知らないけど……アリスも知らないのか?」
「一応話のみでは聞いたことがありますわ。でも詳しいことはなにも……」
この世界の住人でもあるアリスでさえ話のみでしか人狼については知らないらしく、やはり人狼というのは中々に希少性が高い言葉であることは確かのようである。
「あー、だったら教えてあげるっす! でもアタシから聞いたとういのは内緒にしてくださいね! あとで見つかったら色々と面倒なので! あははっ!」
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