聖十字騎士学院の異端児〜学園でただ1人の男の俺は個性豊かな女子達に迫られながらも、世界最強の聖剣を駆使して成り上がる〜

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3話「この世界の常識とは」

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 大勢の女子に席を取り囲まれて質問責めに遭遇した俺だったが、全ての質問に答え終えた今現在でも自分の席を離れることは不可能であった。何故なら未だに多くの女子達が動物園のパンダを見るような何とも言えない視線を向けつつ、四方を女体の壁を築いて塞いでいる状況であるからだ。

「な、なあ? まだ俺に何か質問とかあるのか?」

 ついに視線の圧力に耐えられなくなり、一体なんでそんなにも見てくるのかと理由を尋ねてみた。

「な、何でもないよ!」
「うんうん! 本当に何でもないよ!」
「ただハヤト君を眺めてるだけだからっ!」

 すると一斉に女子達はそう答えて頷いたあと表情を僅かに緩ませていたが、これでは本当に動物園の見世物となんら変わらないのではと思えてくる。

 それに俺を眺めているだけとはなんだろうか。そんな言葉は生まれて初めて聞いたし、きっとこの先も聞くことはないであろう言葉な気がする。

 しかしこうも女子達から凝視され続けると緊張感というものがじわじわと押し寄せてきて動不審になりそうで困る。既に右まぶたが小刻みに痙攣を起こし始めている始末だ。

 これは実に危ない傾向と言えるだろう。
 故にここは女子達の興味が薄れるまで現実逃避に走ろうと思う。

 そう、それはずばり俺がこの世界で暮らし始めて知り得た事を、頭の中で纏めながら時間を潰すことだ。

 最初にこの世界の小学校にあたる【聖初等部学園】で習った事だが、どうやらこの世界では人族が住む場所【リナルカ大陸】という人界があり、他にも魔族が住む場所【オベルエ大陸】という魔界が存在するらしいのだ。

 そしてオベルエ大陸は俺達が済むリナルカ大陸のちょうど真裏に位置する場所に存在するらしいのだ。例えるのならば日本の裏側がアルゼンチンということに似ているかも知れない。
 だがその例えは諸説ある事からはっきりと断言はできないが、そういう感じだということ。

 それからリナルカ大陸では多くの王国や帝国が存在していて、そこで暮らす人々は西洋人や東洋人という見た目を差別することは一切なく皆が仲良く互いに協力しながら毎日を生きているのだ。
 
 これもわかりやすく言うのならばリナルカ大陸というのは、アメリカやロシアや中国や日本を混合させて一箇所の大陸に纏めた感じである。

 しかし皆が仲良く互いに協力して生きているというのには少し語弊があるのも事実。
 確かに一部の者は協力的だが大半の者は女尊男卑の思考を第一として考えているのだ。

 この世界では女性にのみ聖なる力が宿るとされており、それが聖剣を扱える条件でもあるからだ。故に必然的に男性というのは地位が低くなり、国王や皇族は古来から女性がなる者とされているらしいのだ。

 あとはオベルエ大陸も似たようなもので初等部の教科を読んだ限り魔界では人間と同じ見た目をした魔族が暮らしていて、向こうでは女性が魔の力を宿すとされているようなのだ。
 恐らく魔界の男性達も苦労を強いられていることは間違いないだろう。

 ちなみに魔界でも人界のような聖十字騎士学院があるらしく、名前は確か【悪十字魔剣士学院】だったような気がする。これは【聖中等部学園】で習った事だから事実の筈だ。

 それと言わずもがな人界と魔界は仲が悪くて大昔には種族間を賭けた戦争も起きたそうだが、今は互いに深く干渉しないことを条件に休戦状態となり平和が訪れているようだ。
 
 だけどこの世界に来てこれらの事を多く学んだり実際に目の当たりにすると、まだまだ覚えることは多くありそうだと否応なしに実感させられる。主に聖剣の扱い方とかを。

 ……さて、そろそろ現実逃避を辞めて現実の世界へと意識を戻すとするか。
 流石にもう女子達も興味を失って早々に散った筈だろう。逆にそうでないと色々と困ることになるが。
 
「ね、ねえハヤト君! 質問ってまだしても大丈夫かな!」
「えっ……」

 現実逃避の為に閉じていた瞼をゆっくりと開けると、横から聞こえてきた第一声は再び質問を尋ねてこようとする女子の声であった。どうやら俺の考えは大きく外れていたらしい。
 寧ろ現実逃避をしていた間に人数が増えているような気すら感じられる。
 
「だ、ダメかな?」
「い、いやその……えーっと……ん?」

 首を傾げながら弱々しく再度尋ねられると俺としても非常に断りずらくなるのだが、咄嗟に視線を逸らしてヒカリの元へと向けると彼女は徐に席を立ち上がり教室を出て行こうとしていた。

「あー……ごめん! ちょっと用事があるから質問はまた放課後に!」

 そう言いながら席を立つと意思を決して女子達の壁の間を縫って進んでいくと急いでヒカリの後と追うべく一組の教室を後にした。その際に数人の女子が俺の後を追うように一緒に付いて来たが、今は気にしている場合ではないだろう。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ! なあヒカリ!」

 廊下に出て直ぐに彼女の後ろ姿を見つけると急いで駆け寄り声を掛ける。

「……なんだ?」

 依然として不機嫌なのか表情を顰めながら返事をするヒカリ。
 一体なにを先程から怒りを顕にしているのだろうか?

 俺には皆目見当もつかないが今は自己紹介の時に助けを求めて無視された理由を聞くのが先である。これでも無視された事に対しては意外と心を抉るようなダメージがあるのだ。というより普通に悲しいまである。

「いや特に用事っていうほどのものがある訳ではないんだが……。俺が自己紹介をしていた時に視線を逸らした理由をだな?」

 頬を掻きながら言葉を濁して口にすると不思議と何か後ろめたさがある訳ではないのだが単刀直入に聞く勇気が出なかった。

「ふんっ。大勢の女子に囲まれて鼻の下を伸ばしているような男なんぞ知らん。勝手に困り果てるがいい」
 
 そしてヒカリは姉貴のように冷たい声色と共に道端に転がるゴミを見るような視線を向けて言い放った。しかし彼女には自己紹介の時の俺がどんな風に見えていたのだろうか。

 一瞬たりとも鼻の下を伸ばした自覚はないし、そもそもこっちは逆に女子に囲まれて冷汗を流していたほどである。

「え、えぇ……って待ってくれ! 何処に行くんだよ?」

 ヒカリは話が終わったとものかと勘違いしたのか再び何処かに向かうべく足を進め始めると、つい反射的に俺は右手を伸ばしながら呼び止めてしまう。

「っ……トイレだ。一々言わせるな。それと後を付いてくるな! あと一歩でもその場を動いたら永遠に変態認定するからな」

 すると彼女は足を再度止めて振り返ると肩を小刻みに揺らして、人差し指を俺の顔に向けながら怒涛の言葉責めをお見舞いしてきた。

「は、はい! すみませんでした!」

 その勢いのある言葉遣いに自然と背筋が正しく伸びていくと、最後に張りを持たせた声と共に腰の骨を砕く覚悟でお辞儀という謝罪の意を披露した。いくら俺とて女子にトイレという言葉を使わせるのは普通に恥辱を与える事とだと言うのは理解している。

「まったく……ああ、そうだ。昼食は私と一緒に食堂で食べるぞ。だから誰とも約束はするな。いいな? わかったな?」

 急に思い出したかのようにヒカリが怒りの表情から一変させて引き締め直した様子で言うと、一瞬だけだが周りの空気が鉛のように重くなったのを感じた気がした。

「えっ? ああ、うんそれはいいけど……急にどうした?」

 けれどそれは気のせいだろうとして意識から外すと、俺としてもそれは昼食の時間に言おうとしていたことで何の問題もない。だけどそれと同時に何故今このタイミングで言うのかという疑問が湧いてしょうがない。

「別に深い意味はない。強いて言うのならば周りを見れば分かると思うが、鈍感なお前では難しいかもしれんな」

 視線を周囲へと向けてヒカリは僅かに微笑むような仕草を見せると、それに釣られて俺も周囲に視線を向けてみるが……そこには大勢の女子が居るだけで特に答えと言えるべきものは見つからなかった。

 一体ヒカリの言っていた言葉の意味とはなんだろうか?
 答えが分からないということは俺が鈍感だというのは唯一、確証のある答えなのかも知れないが。
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