聖十字騎士学院の異端児〜学園でただ1人の男の俺は個性豊かな女子達に迫られながらも、世界最強の聖剣を駆使して成り上がる〜

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6話「幼馴染は涙を流す」

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 ヒカリに事情を問い詰められると俺は誤魔化す事は不可能だとして洗いざらい先程まで出来事を全て伝えると、それを聞いて彼女の表情は次第に蒼白していくどころか口を半開きにして目を丸くさせて全身を膠着させているようであった。

「――ということなんだ。いやぁ、まさかこんなにことに……っ!?」
「ッ……こっちに来いッ!」

 全ての話を聞き終えたヒカリは何を考えたのか口元を引き締めると俺の右腕を鷲掴みにして何処かへ連れて行くように引っ張り出すと、今の彼女の力は普段の数十倍強いように感じられて為すすべもなく連行された。

 その際に周りに居た女子達が明らかに呆気に取られているような表情を浮かべて視線を向けていたが、一部の女子達が『なんなの? あの女。ハヤト君を独り占めする気なの?』という風に妙に刺のある言葉を呟いたらしく僅かに流れ聞こえてきた。しかし残念ながら誰が言ったとかまでは分からなかった。

 それから俺はヒカリに腕を掴まれて五分ほど無理やり歩かされると、場所は一学年校舎の外で人気のない端の方へと立たされている。雰囲気的には恋人同士が秘密裏にイチャイチャ出来そうな感じはあるが、どうにもそんな緩いものではないことはヒカリを見ていて容易に理解できる。

「お前は……本当に大馬鹿者だ! 貴族に決闘を挑まれるなんて相当な大罪なんだぞ! 分かっているのか!」

 俺に背中を見せて立ち尽くしていたヒカリが振り返りながら怒声混じりの言葉を口にした。
 その余りにも勢いのある言葉に全身の筋肉が強張るが、ここは場を和ませて彼女の怒りを宥める方が先決だとして口を開く。

「さっき同じような事を他の女子達からも言われたばかりだよ。あははっ」

 何でもいいから笑みを見せる事で場の雰囲気を無理やり変えようとするが、ヒカリの表情は緩むことはなく寧ろ姉貴のように鉄仮面のような顔を見せて視線を合わせてくる。

 これはもしかしたら俺は地雷を踏んでしまったのかもしれない。
 場の雰囲気を和ませようとしたのはヒカリに要らない心配を掛けさせたくないからなのだが、今の彼女を見るに和ませる所か更に怒りを倍増させてしまっているように見える。

「なにをヘラヘラと笑っているのだ! このままではお前は決闘の場で命を落とす事になるのだぞ! お前は深く知らないと思うが貴族が行う決闘と言うのは、どちらかが息絶えるまで続く命の奪い合いをする戦いなのだぞ! 子供がするようなごっこ遊びとは訳が違う!」

 今までに見たこともないほどの剣幕でヒカリは怒涛の言葉の数々を言うと、怒りの感情が体に溢れ出ているのか左手が握り拳となり口元は震えていた。

「……そんなの嘘だろ。俺だってこの国で生活してそれなりになるが、一度もそんなこと聞いたことないぞ」

 ここパルメシル王国に俺と姉貴が住み着いて結構の月日が経過したが、そんな噂話のような事は一度も耳にしたことはなく初等部や中等部でさえ習ったことはない。
 本当にそんな命の奪い合いのような決闘があるのだろうか。

「それは当たり前のことだ。なんせ貴族が決闘を挑むこと事態、本来ならばありえないことだからな。挑んだ時点でどちらかが死ぬ事になるからだ。故にこれは一般教養で習うことではなく、親から子へと伝えられるものであるのだ」

 そう言うと両腕を組みながらヒカリは依然として鋭い眼光を向けてくるが、先程までの頂点に達していたような怒りは瀬戸際で収まっているようで俺としては一安心だ。

 しかし一般教養で習うことなく親から子へ伝えられるという事は、それは日本で言う夜中に口笛を吹いてはいけないとうものと同じなのだろうか。だとしたら色々と納得できるが流石に命に関わるものは教えて欲しいところではある。

「じゃあ一体がそんな酷なルールを作ったんだよ?」

 けれど俺としてはその話に納得する以前の問題として誰が何の目的があってそんな残虐なルールを制定したのかという方に疑問が一杯でならなかった。

「それは……この国の二代目国王らしい。歴史書によれば二代目が統治していた時代が一番多くの死者が出て血も沢山流れたと記されていたからな。……だが今はそんなことはどうでもいいのだッ!」

 組んでいた腕を解いてヒカリは右手を横一直線に振るうと、そのまま瞳を潤ませて目尻から涙を大粒の涙を流し始めて顔を俯かせた。そして彼女は肩を震わせて左手で額を抑えると、

「私はハヤトに死んで欲しくない……」

 そう掠れた声で呟くとその後も何度も同じことを繰り返し口にしていた。

 だが俺はそれを目の当たりにした瞬間に本当に貴族同士の戦いでは命の奪い合いとなるのだと認識させられた。あの気の強いヒカリがこんなにも泣きながら弱々しい声を出すのは小さい頃に街で迷子になった時以来だからだ。つまり事態は俺の想像を遥かに越えて緊迫しているということ。

「大丈夫だ。俺は絶対に死なない。信じてくれヒカリ」

 しかしそれは今は深く考えるとことではなく、今一番大事なのは彼女を慰めることである。
 俺のせいでヒカリが涙を流すのは心に幾千ものナイフが突き刺さるような痛みを感じるのだ。
 だから何よりも先に彼女の心に落ち着きを取り戻させるのが優先なのだ。

「信じたい……。だけどお前が聖剣を扱った事なんて適性の時だけじゃないか! それをどう信じればいいと言うのだ……」

 俯かせていた顔を上げて涙で赤く染まった瞳を向けつつヒカリは至極当然の事を言うと、俺の中でそれは確かに一理あるとして納得出来てしまう。
 けれどそれでもどうにか信じて貰うために口を開くと、

「ま、まあ確かにそう言われると何も返す言葉はないんだが……。あっ! だったらヒカリが俺に聖剣の扱い方を教えてくれよ!」

 話している途中に妙案のようなものが雷鳴の如く脳内に駆け巡る。
 そしてこれは自分で言っといてなんだが、かなり良い案だとして言い知れない気持ちが込み上げてくるほどだ。

 ただそうした場合必然的に最強の聖剣使いでもある姉貴から教わった方が効率がいいのではという考えが浮かぶが、仮にそうした場合どうして聖剣の扱い方を学びたいと聞かれ、そこから芋蔓式に根掘り葉掘り聞かれて結局ベアトリスとの決闘の話にたどり着くことになるだろう。
 
 しかしそれはなんとしても避けないといけない事であり、決闘にまで至った理由が姉貴を侮辱されて反論したからでは弟の俺としては何か気恥ずかしい所があるのだ。
 例えそれが命を失い兼ねないことだとしても絶対に姉貴には理由を話せない。

「わ、私がお前に聖剣の扱い方を教えるのか!?」

 目の前でヒカリが涙を滲ませた顔で驚愕の反応を見せると、その考えは彼女の中では全く無いものだったのか声が多少なりとも上擦っていた。

「なにか問題でもあるのか?」
「別に問題はないが……私だってそんなに聖剣を扱った事は……」

 手の甲で涙を拭うとヒカリは声を小さくさせて小言らしきものを零す。
 だが俺は知っているのだ。彼女が聖剣を手にして戦えば強いことを。

「大丈夫だ! だってヒカリは中等部の時に聖剣大会でベストスリーに入ってたじゃないか! 逆に言えばそれだけの実力を持っているということだっ!」

 そう、ヒカリは過去の大会でベストスリーにまで上り詰めて常に上位を死守していたのだ。
 ならばベアトリスに勝てないなんて通りはないだろう。

 確かに順位では負けていたとしても勝負というのは最後まで何が起こるか分からないものであるが故に。まあこれは日本でたまたま見ていた漫画の抜粋だけどな。

「そ、それはそうだが……相手はあのベアトリスだぞ! 常に一位を守備している奴だ! そんな相手を倒す為に私がお前に聖剣を……」

 責任の重さが彼女に押し寄せているのか息苦しそうに胸元に手を当てると、最後は苦悶とした表情を浮かべて教えるという事に対して葛藤している様子であった。

 ……だが大丈夫だろう。必ずヒカリは俺に聖剣の扱い方を教えてくれると信じている。
 これは直感的なものだが確かに分かるんだ。
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