抱かれてみたい

小桃沢ももみ

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授業

朝食

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 「アーロン様あ!」

 呼ばれた方を見るとタイスケが此方へ走って来る所だった。後ろにはイチロウの姿も見える。

 「おはよう」

 挨拶すると、怪訝そうに立ち止まり「あれ?」と首を傾げイチロウに報告した。

 「若、アーロン様襲われてないっす」
 「だから、ちょっと待てと言っただろう」

 イチロウの方は呆れた様子だ。それにメガネをくいっと上げながら寮長が近付いて行く。

 『某は男爵家寮の一年生の寮長を仰せつかったスミス家のフランクと申す者。火の国からの学徒殿とお見受けするが相違無いか』
 
 (火の国の言葉だ!)

 アーロンは三番目の兄ケビンに習っているので、なんとなく話している内容は理解出来る。寮長の問い掛けにイチロウが答える。

 『然り。丁寧な挨拶痛み入る。拙者はタマノ家のイチロウである』

 イチロウの返事に、ふとお互いで微笑み合い火の国流の深く頭を下げるお辞儀をし合うと、それからはこの国の言葉に切り替えて二人は話し出した。
 
 「良かったら朝食をご一緒しませんか? 今、我々は男爵家の子息同志で結束を固めていた所なんですよ」
 「是非。なんと、もしやそれに自分達も参加させて頂けるのですか?」

 そしてそのまま二人並んで歩き出す。

 「え、どうなったんすか?」
 「ん? 多分一緒に行くんじゃないかな」

 タイスケの疑問にアーロンが答えていると、イアンがタイスケに挨拶する。

 「おはよう」
 「おはようございます」
 「同じクラスのイアン」
 「おいらタイスケっす」
 「よろしく。行こ?」

 と促すので、イチロウ達の後ろを三人でついて行く。アーロンを真ん中にしてのっぽとぽっちゃりで両側から挟む。他の生徒達もその後に続く。
 イアンは臆する事なく異国の風貌をしたタイスケに話し掛けるが、他の生徒はちょっと遠巻きに見ている様だ。

 「てっきり、朝からアーロン様が男達に絡まれてると思ったっす」
 「えー、何でそうなるの?」
 「何となく?」
 「大丈夫。アーロン様は皆から大事にされている」
 「そうなんすか?」
 「男爵家の寮の銀妖精」
 「確かに! アーロン様は妖精みたいっす!」
 「え、何それ」

 アーロンは渋い顔になったが二人は盛り上がっていて、何だか周りもそれに同調しだして、アーロンには不満な二つ名が付けられてしまった。
 


         ☆


 食堂に着くと、まだ人は殆ど居ない。一番乗りでは無いがそれに近い様だ。

 「ああ、丁度良い時間に来たかな」
 「そうですね」

 寮長とイチロウはお盆を持ってカウンターへ向かう。
 朝食は昼と違って定食では無く、カウンター越しに厨房側に並んでいる鍋やトレーの中から欲しい物を指差して好きな量を入れて貰う。アーロンは朝から揚げた芋を沢山食べたい気分だったので、ハッシュドポテトを皿に山盛りにして貰った。後はぶっといソーセージを三本と、葉っぱを少し。野菜を食べないと美容に良くないと三番目の兄、ケビンにいつも叱られるので。それと果物は葡萄。飲み物は牛乳。ドーナツも見つけたので、二つ程貰って行く。

 「うわあ、アーロン様、朝からもりもりっすね」

 席につくとタイスケが驚いた様に声を上げたが、此れでも控え目にしたつもりだ。それにタイスケだってもりもりだ。米が無いと駄目だと言っていただけあって大きな皿に山盛りの米、アーロンのハッシュドポテトの代わりがそれで、後はほぼ同じ。違うのは、葉っぱの代わりにミニトマトが沢山。

 「二人とも良く食べる」

 のっぽのイアンは驚いた様に目を丸くしている。そのお盆にはドーナツが二つとオレンジジュースだけ。イアンは背は高いが、ひょろひょろしているだけあって、余り量は食べない様だ。
 そしてイチロウは全てを少しずつ満遍なくとドーナツ二つ。寮長は山盛りのサラダと目玉焼きが一つ、ソーセージが一本、それと葡萄だった。

 (あの葉っぱ、いっぱい食べる人っているんだ)

 アーロンは昨日の昼食にあった大盛りサラダの定食を思い出した。こんなの頼む人居るのだろうかと思ったが、寮長は頼みそうな気がした。
 給仕が回ってきて、紅茶かコーヒーを入れてくれる。男爵家の寮の生徒達もいつの間にかアーロン達の周りで食べ始めている。

 「今日って、講義の選択だっけ?」
 「まだ。今日は説明だけ。後、課外活動の説明と、施設の案内」
 「Cクラスから上に上がるつもりなら、講義選択は考えた方が良いよ」

 アーロンとイアンが話し出すと、寮長が話に入って来た。それにタイスケが飛び付く。

 「え、そうなんすか?」
 「うん。成績が上がりやすい講義とそうで無い講義があるから。例えばタイスケ様が火の国語を取ったら、他の生徒より良い点が取れるだろう?」
 「そうっすね」
 「後の事を考えて、自分が点を取り易い講義を取るとか、後は点数の付け方に甘い所がある講師を選ぶとか、人数が多い講義が良いとか奥義があるらしい。今晩の夕食後に寮の談話室で先輩達が教えてくれるそうだ」
 「へえ、いいっすね」
 「君達も興味あるなら、参加出来るか聞いておこうか?」
 「是非お願いしたいっす。アーロン様も行きますよね?」
 「え、うーん、どうしようかなぁ」
 「え、何でそこで迷うんすか?」
 「いや」

 折角だから貴族学院では学びたい事を選びたいとアーロンは考えていた。
 もし卒業後に王宮勤めや他家で雇って貰う事を目指しているなら良い成績を取る事は重要だ。
 が、アーロンが興味あるのは語学と魔道具だ。家で語学は少し三番目の兄ケビンから学んだけれど日常会話程度だ。出来たらもう少し本格的に学びたい。魔道具については自分で本を読んだ位、学院で学んで作れる様になりたいと考えていた。そしていずれは海を渡って西の国にまだ残っていると聞く魔法を学んでみたいと考えている。魔道具は魔法が使えなくても使えるが、元々は魔法使いから伝わった物だとされている。
 ただ、西の国はそう簡単に行ける場所では無いし、魔法もこの国では廃れて久しいので、それを学びたいと口に出すのは夢物語の様で恥ずかしい。
 タイスケが不満そうなので、アーロンはイアンに話を振った。

 「イアン様は参加する?」
 「一応聞くけど、参考にするかは別」
 「そうなんだ」
 「アーロン様もそうすれば?」
 「それもそうだねえ」

 言われてみればそうだとアーロンは思った。他の男爵家の子息と交流したいし。迷っていると寮長が、

 「人気の講義とか、良い講師も教えてくれるそうだから、取り敢えず聞いてみたら良いんじゃないかな?」
 
 と教えてくれたのでアーロンは参加する事に決めた。

 
 

 

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