抱かれてみたい

小桃沢ももみ

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ライム先輩との冬

出発の朝

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 次の日の朝、アーロンが目を覚ますと隣に寝ていた筈のマクマは居なかった。寝ている間に蹴飛ばしたかと思って、布団を捲って足元を探したり、寝台の隙間を見てみたりしたが落ちて居なかった。まあ、あのマクマが大人しくアーロンに蹴飛ばされるままになっている筈がないのだが。
 首を捻りながらアーロンは朝の支度をした。多分昨晩と同じ謎の侵入経路があるのだろう。汚れていなかったから鼠穴や通気口では無いのだろうけれど、不思議だ。けれどアーロンにはマクマの事を考えている暇は無い。お手入れは続いているのだ。以前、ライム先輩と買い物に行った時はこんなに気を遣わなかった。自分一人だけで、しかも肌を晒さないといけないという心配がアーロンをいつもより丁寧にさせた。
 今日はちゃんと水だけでなくお風呂で使っている液体石鹸を泡立てて顔を洗った。洗顔に使う水の温度もかなりぬるめが良いとケビンには言われていたのでそれもちゃんと守る。いつもはあまり気にしていなかった。そしてどちらかを忘れてしまう事が多いのだが、今日はちゃんと両方、化粧水と全身に使っている乳液を塗った。そう言えば、と思い出して日焼け止めも塗った。ケビンに、毎日つけろと言われているのだが、夏場以外は結構忘れてしまう。匂いが気になるので、髪にラベンダーの香りのするオイルをつけるのは食後にして今はとかすだけにした。

 朝食後、寮に戻って来ると、今日家に帰る生徒達(イアンや寮長を含め)、は足早に自室に引き上げて行ったが、アーロンはジョンとセドリックに誘われて談話室に残った。
 帰らない生徒達は何となく談話室に屯って居た。アーロンは家に帰れない事に対して何も思う所は無かったのだが、談話室には取り残される寂しさの様な湿りっ気が少し、漂っている様な気がした。
 アーロンは二人に誘われてソファに座ってしまったが、部屋に戻って昨晩マクマが来たせいで試し損ねたあれをやるべきでは無いだろうかと考えていた。

 「アーロン様、イアンと寮長が居ない間、僕等と一緒に食事に行きましょうね!」
 「えっ? あ、あ」

 ジョンに話し掛けられて、アーロンは動揺した。

 「え? 僕等と行くの嫌ですか?」
 「はー、ジョン、残念だな。アーロン様は僕と行くんだ」

 セドリックがジョンの肩を叩いて自慢げにする。

 「えー、僕も一緒じゃ駄目なの?」
 「勿論! ねー、アーロン様、僕と二人だけが良いよね?」

 お調子者の二人に挟まれてアーロンが、どうしよう、誘ってくれるのは嬉しいけど、明日のお昼からなら平気なんだけど、今日のライム先輩との予定を話すのが恥ずかしい、と応えられないでいると、アーロンの背後からコートの腕が伸びて来た。アーロンに抱きついて来たふわふわの茶色い髪の持ち主が代わりに応える。

 「残念でした。今日のお昼から明日の朝迄アーロン様はライム様と予定があるの! あ、もしかしたら、明日のお昼も駄目かもね?」

 うふふ、と笑うアレックスの言葉にアーロンは頬を染めて下を向いてしまう。
 ジョンとセドリックはそれを聞いて、「あらあ」と領民の奥さん達が誰かのおめでたい噂話を聞いた時みたいな反応をして両手を口に当てた。

 「アーロン様の肌、いつもよりもちもち」

 アレックスは嬉しそうにほっぺをすりすりして来て、その後は指で弾力を確かめる様に突いて来た。アーロンはくすぐったくてやめて欲しいが、ライム先輩との予定を暴露された恥ずかしさで顔も上げられないしでどうして良いか分からない。

 「アレックスは家に帰るんじゃないのか?」

 とジョンが尋ねると、

 「うん。帰るよー。お祖父様が僕に会いたがってるから」

 とアレックスが答えた。今度はセドリックが、

 「アレックスの実家って、そこそこ遠かったんじゃ無かったっけ?」

 と尋ねる。アレックスはアーロンにくっついたまま嬉しそうに話し出す。

 「そうなんだー、だからにお迎えに来て貰って、お祖父様と一緒に王都で泊まってから帰るの」
 「そうなのか?」
 「うん。色々おねだりするつもり」
 「うぇー、あんまり高い物頼んだら駄目よ」
 「大丈夫! 僕が欲しいものはお祖父様何でも買って下さるから!」
 「全然大丈夫じゃない!」
 
 アレックスは三男だが末っ子で、家族には大分甘やかされ可愛がられているらしい。
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