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第1話
「エリアス、君との婚約は僕にとって本当に大切なものだった…。だからこそ僕は、こうして君の事を愛し続けてきた…。だが、それももう終わりだ。君は僕を裏切ったのだから」
冷たい表情を浮かべながらそう言葉を発するのは、私の婚約者であるガーフ男爵様。
彼の言う裏切り行為とは、私にとって全くそうとは思えないものだった…。
「僕は何度も何度も言ってきたはずだ…。僕以外の男とは話をするなと…。だというのに君は、他の貴族家の男と話をしていたな。これは明らかに、僕に対する裏切り行為だ」
「……」
話をするだけで裏切りになるだなんて、そんな話聞いたことがない…。
そもそもガーフ男爵様が私の事を放っておくから、私に気を遣っていろいろな方が話しかけてくださったというのに、そんな気持ちまで否定されるのでしょうか…?
「君がここまで下品で恩知らずな女だったとは…。過去の自分の判断を恥じたいよ…。こうなるくらいなら、婚約関係などするのではなかった…。母から執拗に相手を持つ事を勧められ、仕方なく君との婚約関係を結ぶこととしたのが運の尽き…。この未来を予見できなかったものだろうか…」
そんな事情は私にはどうでもいいことなのですけれど…。
私たちの関係は、貴族食事会の場でガーフ様が私に話しかけてくださったことから始まる。
あの時男爵様はかなりそわそわされていたご様子で、会場で私の顔を見るや否やこう言葉を告げてきた。
「あ、あなたは僕にとって運命の人だ…!どうか僕と一緒に話をしていただけませんか!?」
そして、それに続けてさらに…。
「僕はあなたの事を絶対に幸せにして見せましょう!嘘は言いません!僕は男爵として、その責任を負いたいのです!どうか僕の事を信じてください!」
私はその言葉をそのまま信じた、というわけではないけれど、ここまでストレートに愛情表現をしてくれる事を、うれしく思っていた。
それから何度か二人きりでの食事を重ねて、私は男爵様からのアプローチを受け入れる事を決めた。
男爵様がここまで言ってくださっているのだから、私はその言葉を信じる事にしたのだった。
…けれど、その言葉は偽りのものだった。
男爵様は私に裏切られたと言っているけれど、裏切られたのは私の方…。
「やれやれ…。僕の思いは一体どこに…」
「(男爵様の思いは…。口だけのものでしたね…。婚約関係になるやいなや、人が変わったように私の事を冷遇されはじめました…。結局、婚約関係なんて形だけのものだとしか思われていない何よりの証拠…)」
そう思いきるだけの考えが、すでに私の中にはあった。
だって本当にあの言葉が本物で、私の事を愛してくれているというのなら、少なくとも私の言葉を聞きもしてくれないことなんてありえないのだから…。
「エリアス、この僕の思いをたぶらかしてどうだった?楽しかったのか?そんなことをして何になるのか僕には全く分からないが」
「(わからないもなにも、私はそんな事何もしていないのですけど…。男爵様が勝手に勘違いをして、勝手に私の事を悪者に仕立て上げているのですけれど…)」
私は心の中にそう言葉をつぶやいた。
本当ならこれらの言葉を、男爵様に対して直接ぶつけたくって仕方がなかった。
けれど、それをすることは許されなかった。
なぜなら私がここで男爵様に反論を行ったところで、結局それも含めて私の裏切りだと言われてしまうことは想像がつくのだから。
「さて、今日をもって正式に君との婚約関係は破棄させてもらうことにするよ。エリアス、なにも文句はないだろう?君が始めた裏切り行為なのだから、その罰を受けるのは当然の事。僕には恨まれる筋合いなどなにもないからな?」
こういう男爵様の雰囲気を見て、私はうっすらとその狙いを察することができた。
私が他の男性と話をしたから婚約破棄、なんていうのはどうでもいい理由にすぎなくて、形だけのもの。
結局は私の事を婚約破棄することがメインで、その理由は何でもいいんだろうと思う。
それは例えば、私が挨拶を大きな声で返さなかったからとか、朝起きる時間が期待よりも遅いからとか、なんでもいいんでしょうね。
あなたは相手の事なんて何とも思っていないんでしょうから、追放の理由なんてなんでもいい。
私と最初にあった時に言っていた言葉は、全部嘘。
私にかけてくれた思いや態度も、全部嘘。
あなたはただ、両親に対して言い訳をしたかっただけ?
自分はきちんと婚約者を持ったけれど、相手がひどい人だったという言い訳が欲しいだけ?
自分を悲劇のヒロインにしたいだけ?
「そうですか、分かりました。婚約破棄ですね」
「飲み込みが早いじゃないか。やっぱり僕の事を裏切るつもりだったんだろう?だからこそあきらめもつくんだろう?最後くらいそうだったと認めたらどうだ?」
「どうでしょう…。私にはよくわかりませんから」
「まあいいさ。これで決着はついたのだから」
私は短くそう言葉を告げると、そのまま男爵様の前から姿を消した。
もうこれ以降、男爵様の姿を見る事はないと信じて。
冷たい表情を浮かべながらそう言葉を発するのは、私の婚約者であるガーフ男爵様。
彼の言う裏切り行為とは、私にとって全くそうとは思えないものだった…。
「僕は何度も何度も言ってきたはずだ…。僕以外の男とは話をするなと…。だというのに君は、他の貴族家の男と話をしていたな。これは明らかに、僕に対する裏切り行為だ」
「……」
話をするだけで裏切りになるだなんて、そんな話聞いたことがない…。
そもそもガーフ男爵様が私の事を放っておくから、私に気を遣っていろいろな方が話しかけてくださったというのに、そんな気持ちまで否定されるのでしょうか…?
「君がここまで下品で恩知らずな女だったとは…。過去の自分の判断を恥じたいよ…。こうなるくらいなら、婚約関係などするのではなかった…。母から執拗に相手を持つ事を勧められ、仕方なく君との婚約関係を結ぶこととしたのが運の尽き…。この未来を予見できなかったものだろうか…」
そんな事情は私にはどうでもいいことなのですけれど…。
私たちの関係は、貴族食事会の場でガーフ様が私に話しかけてくださったことから始まる。
あの時男爵様はかなりそわそわされていたご様子で、会場で私の顔を見るや否やこう言葉を告げてきた。
「あ、あなたは僕にとって運命の人だ…!どうか僕と一緒に話をしていただけませんか!?」
そして、それに続けてさらに…。
「僕はあなたの事を絶対に幸せにして見せましょう!嘘は言いません!僕は男爵として、その責任を負いたいのです!どうか僕の事を信じてください!」
私はその言葉をそのまま信じた、というわけではないけれど、ここまでストレートに愛情表現をしてくれる事を、うれしく思っていた。
それから何度か二人きりでの食事を重ねて、私は男爵様からのアプローチを受け入れる事を決めた。
男爵様がここまで言ってくださっているのだから、私はその言葉を信じる事にしたのだった。
…けれど、その言葉は偽りのものだった。
男爵様は私に裏切られたと言っているけれど、裏切られたのは私の方…。
「やれやれ…。僕の思いは一体どこに…」
「(男爵様の思いは…。口だけのものでしたね…。婚約関係になるやいなや、人が変わったように私の事を冷遇されはじめました…。結局、婚約関係なんて形だけのものだとしか思われていない何よりの証拠…)」
そう思いきるだけの考えが、すでに私の中にはあった。
だって本当にあの言葉が本物で、私の事を愛してくれているというのなら、少なくとも私の言葉を聞きもしてくれないことなんてありえないのだから…。
「エリアス、この僕の思いをたぶらかしてどうだった?楽しかったのか?そんなことをして何になるのか僕には全く分からないが」
「(わからないもなにも、私はそんな事何もしていないのですけど…。男爵様が勝手に勘違いをして、勝手に私の事を悪者に仕立て上げているのですけれど…)」
私は心の中にそう言葉をつぶやいた。
本当ならこれらの言葉を、男爵様に対して直接ぶつけたくって仕方がなかった。
けれど、それをすることは許されなかった。
なぜなら私がここで男爵様に反論を行ったところで、結局それも含めて私の裏切りだと言われてしまうことは想像がつくのだから。
「さて、今日をもって正式に君との婚約関係は破棄させてもらうことにするよ。エリアス、なにも文句はないだろう?君が始めた裏切り行為なのだから、その罰を受けるのは当然の事。僕には恨まれる筋合いなどなにもないからな?」
こういう男爵様の雰囲気を見て、私はうっすらとその狙いを察することができた。
私が他の男性と話をしたから婚約破棄、なんていうのはどうでもいい理由にすぎなくて、形だけのもの。
結局は私の事を婚約破棄することがメインで、その理由は何でもいいんだろうと思う。
それは例えば、私が挨拶を大きな声で返さなかったからとか、朝起きる時間が期待よりも遅いからとか、なんでもいいんでしょうね。
あなたは相手の事なんて何とも思っていないんでしょうから、追放の理由なんてなんでもいい。
私と最初にあった時に言っていた言葉は、全部嘘。
私にかけてくれた思いや態度も、全部嘘。
あなたはただ、両親に対して言い訳をしたかっただけ?
自分はきちんと婚約者を持ったけれど、相手がひどい人だったという言い訳が欲しいだけ?
自分を悲劇のヒロインにしたいだけ?
「そうですか、分かりました。婚約破棄ですね」
「飲み込みが早いじゃないか。やっぱり僕の事を裏切るつもりだったんだろう?だからこそあきらめもつくんだろう?最後くらいそうだったと認めたらどうだ?」
「どうでしょう…。私にはよくわかりませんから」
「まあいいさ。これで決着はついたのだから」
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もうこれ以降、男爵様の姿を見る事はないと信じて。
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