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第5話
それ以降もオードリーの傍若無人な振る舞いは繰り返されていき、次第に王宮では彼女とその夫であるクルガーに対する反発心が大きくなっていく…。
「聞きましたかユーベンさん、最近王宮が大変なことになっているそうですが…」
「セフィリア様のお耳にも入っていますか。その通り、セフィリア様が去ってからの王宮はそれはそれは見るに堪えない状態が続いております。…これはもう下手をすれば、二度と持ち直すことのできない状態になってしまうかもしれません…」
「そ、そこまですごいことになっているんですね…。それじゃあやっぱり、混乱の原因というのは…」
「はい、かのオードリー様でございます…」
王宮から離れてしばらく経つセフィリアであったが、そんな彼女の耳にも届くほど王宮の惨状はすさまじいものであった。
セフィリアの家とて貴族家であるためその影響を受けることもあり、直接的な接点こそないもののそういった話は日に日に勢いを増していき、今やクルガーでさえも手が付けられない状態になってしまっていた。
「しかし最近、クルガー様は決心を固められたようなのです」
「決心?なんのですか?」
「オードリー様を婚約破棄するという決心を…」
その言葉はセフィリアにとって意外なものだった。
きっとクルガーには私に行った婚約破棄をもう一度繰り返せるような勇気はないだろうと踏んでいたためだ。
「オードリー様に対する臣下の不満は日に日に増していくばかり…。それに対してクルガー様が、そのマイナスを埋め合わせるだけの報酬を臣下に与えている姿も見られません。互いに生じた亀裂は日に日に大きくなっていき、いつ決壊してもおかしくない段階にあります…。だからこそクルガー様は、その身を切る決断を選ばれたのではないかと…」
「けれど、オードリーに婚約破棄を告げたとしてもあの性格じゃ素直に受け入れはしないんじゃ…?」
「はい…。王宮の者たちは心にしみていることでしょう。d第一王子婚約者としてのセフィリア様の姿が、どれほど理想的であったか…」
「い、いえ私はなにも…」
「…実は、どうやらクルガー様はそこに勝機を見出している様子なのです。ただ単にオードリー様に婚約破棄を告げるだけなら納得を頂けない可能性が高いですが、すでに婚約関係にあるセフィリア様との関係のためにオードリー様を追い返すと言えば、まだ話の筋は通るからです」
「…はい?」
どうにも聞き流せない言葉をユーベンは口にした。
オードリーはそんな彼の言葉をもう一度耳にするべく、確認を行う。
「そ、それってまさか…」
「…はい。どうやらクルガー様は、セフィリア様の事を王宮に呼び戻そうとされている様子で…」
「……」
その言葉は、セフィリアにとって全く想定外のものだった。
まさかこの期に及んでクルガーが自分の事を頼ってこようなどとは。
「クルガー様はもうその気でいるご様子で…。いくら一方的な婚約破棄を行った相手であっても、第一王子妃のイスをちらつかせればいつでも戻ってくるだろうと…。高をくくっておられる様子で…」
「はぁ…。私もかなり甘く見られているようですね…」
「申し訳ないです、セフィリア様…。しかし、私はセフィリア様を王宮に連れ戻すために来たわけではありません」
「???」
「あくまで私は、セフィリア様のお心を優先したいと思っております。ゆえに私は、セフィリア様のお言葉をクルガー様に伝えるだけの役目。説得に来たわけではありません」
「ユーベンさん…」
この状況であるならば誰でもその可能性を考える。
しかしユーベンは王宮の都合やクルガーの都合よりも、セフィリアの素直な思いを優先しようとしているのだった。
それは王宮に属する人間の行動としては失格なのかもしれないが、セフィリアにとってはこの上ないほど誠実な姿に映った事だろう。
「今回の騒動の直接的な原因はオードリー様にあるのに間違いはないのですが、ここまで王宮を腐らせてしまった原因は間違いなくクルガー様にあります。私はここでクルガー様がセフィリア様を頼ってこの波を超えたとしても、近い将来にまた同じことが起こるであろうことを確信しています。そうなるくらいなら、いっそこのままクルガー第一王子には破滅していただいた方がいいのかもしれません…。私はそう思っております」
それは、ユーベンが本心から想っている事だった。
彼の中では、自分が心から祝福したセフィリアとクルガーの婚約関係が終わりを迎えた時点で、すでに第一王子の存在は過去のものとなっていたのだ。
今のクルガーにユーベンが忠義を尽くせるほどの魅力などかけらもなく、ついていく筋合いもない。
そこに愛情がなくなってしまったのなら、もはやクルガーに尽くす理由もない。
「ではセフィリア様、お返事をお聞かせください。クルガー様からの再婚の申し出を私は預かっておりますが、あなたはそれにどう答えられますか?正直な思いをそのまま口にしてくださいませ」
「……」
それに対するセフィリアの返事は、ずっと前から決まっていた。
「聞きましたかユーベンさん、最近王宮が大変なことになっているそうですが…」
「セフィリア様のお耳にも入っていますか。その通り、セフィリア様が去ってからの王宮はそれはそれは見るに堪えない状態が続いております。…これはもう下手をすれば、二度と持ち直すことのできない状態になってしまうかもしれません…」
「そ、そこまですごいことになっているんですね…。それじゃあやっぱり、混乱の原因というのは…」
「はい、かのオードリー様でございます…」
王宮から離れてしばらく経つセフィリアであったが、そんな彼女の耳にも届くほど王宮の惨状はすさまじいものであった。
セフィリアの家とて貴族家であるためその影響を受けることもあり、直接的な接点こそないもののそういった話は日に日に勢いを増していき、今やクルガーでさえも手が付けられない状態になってしまっていた。
「しかし最近、クルガー様は決心を固められたようなのです」
「決心?なんのですか?」
「オードリー様を婚約破棄するという決心を…」
その言葉はセフィリアにとって意外なものだった。
きっとクルガーには私に行った婚約破棄をもう一度繰り返せるような勇気はないだろうと踏んでいたためだ。
「オードリー様に対する臣下の不満は日に日に増していくばかり…。それに対してクルガー様が、そのマイナスを埋め合わせるだけの報酬を臣下に与えている姿も見られません。互いに生じた亀裂は日に日に大きくなっていき、いつ決壊してもおかしくない段階にあります…。だからこそクルガー様は、その身を切る決断を選ばれたのではないかと…」
「けれど、オードリーに婚約破棄を告げたとしてもあの性格じゃ素直に受け入れはしないんじゃ…?」
「はい…。王宮の者たちは心にしみていることでしょう。d第一王子婚約者としてのセフィリア様の姿が、どれほど理想的であったか…」
「い、いえ私はなにも…」
「…実は、どうやらクルガー様はそこに勝機を見出している様子なのです。ただ単にオードリー様に婚約破棄を告げるだけなら納得を頂けない可能性が高いですが、すでに婚約関係にあるセフィリア様との関係のためにオードリー様を追い返すと言えば、まだ話の筋は通るからです」
「…はい?」
どうにも聞き流せない言葉をユーベンは口にした。
オードリーはそんな彼の言葉をもう一度耳にするべく、確認を行う。
「そ、それってまさか…」
「…はい。どうやらクルガー様は、セフィリア様の事を王宮に呼び戻そうとされている様子で…」
「……」
その言葉は、セフィリアにとって全く想定外のものだった。
まさかこの期に及んでクルガーが自分の事を頼ってこようなどとは。
「クルガー様はもうその気でいるご様子で…。いくら一方的な婚約破棄を行った相手であっても、第一王子妃のイスをちらつかせればいつでも戻ってくるだろうと…。高をくくっておられる様子で…」
「はぁ…。私もかなり甘く見られているようですね…」
「申し訳ないです、セフィリア様…。しかし、私はセフィリア様を王宮に連れ戻すために来たわけではありません」
「???」
「あくまで私は、セフィリア様のお心を優先したいと思っております。ゆえに私は、セフィリア様のお言葉をクルガー様に伝えるだけの役目。説得に来たわけではありません」
「ユーベンさん…」
この状況であるならば誰でもその可能性を考える。
しかしユーベンは王宮の都合やクルガーの都合よりも、セフィリアの素直な思いを優先しようとしているのだった。
それは王宮に属する人間の行動としては失格なのかもしれないが、セフィリアにとってはこの上ないほど誠実な姿に映った事だろう。
「今回の騒動の直接的な原因はオードリー様にあるのに間違いはないのですが、ここまで王宮を腐らせてしまった原因は間違いなくクルガー様にあります。私はここでクルガー様がセフィリア様を頼ってこの波を超えたとしても、近い将来にまた同じことが起こるであろうことを確信しています。そうなるくらいなら、いっそこのままクルガー第一王子には破滅していただいた方がいいのかもしれません…。私はそう思っております」
それは、ユーベンが本心から想っている事だった。
彼の中では、自分が心から祝福したセフィリアとクルガーの婚約関係が終わりを迎えた時点で、すでに第一王子の存在は過去のものとなっていたのだ。
今のクルガーにユーベンが忠義を尽くせるほどの魅力などかけらもなく、ついていく筋合いもない。
そこに愛情がなくなってしまったのなら、もはやクルガーに尽くす理由もない。
「ではセフィリア様、お返事をお聞かせください。クルガー様からの再婚の申し出を私は預かっておりますが、あなたはそれにどう答えられますか?正直な思いをそのまま口にしてくださいませ」
「……」
それに対するセフィリアの返事は、ずっと前から決まっていた。
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