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第4話
――ラドン視点――
「さて…。侯爵の管理する城を入手するには、これが正攻法だな」
セレスの願いを叶えるべく動き始めていた僕は、そのまま貴族会の集会所を訪れた。
ここは日ごろから意思疎通を求める貴族家同士の交流所となっており、互いに思っていることを伝えあったり、取引の用立てを行ったり、金銭のやりとりなどを行う上で非常に重要な場所だった。
僕は早速近くにいた人間をひっとらえ、話をしにかかる。
「あ、君。侯爵の持っている城があったはずだが、知っているね?」
「は、伯爵様…!?も、もちろん、存じておりますが…」
「その城を明日にでも僕のものとなるよう手続きを始めてもらいたい。できるな?」
「お、お待ちください伯爵様!?それは…」
「ああ、心配はいらない。僕は伯爵家として、越権行為は行わない。僕のもてる権利の中できちんと話を進めていく」
「し、しかし…。いくら伯爵様とは言いましても、あのお城は…」
僕の言葉を聞いてなお、どこか難色を示す男。
まぁ、それも事前に想定していたことではあった。
いくら僕が伯爵位の貴族であるとは言っても、やはりいきなり城の譲渡を行うともなれば、話が大きすぎると言いたいのだろう。
その気持ちは分からなくもないが、しかし僕は急いでいるのだ。
侯爵側の都合など聞いている時間は無く、そんな暇もない。
「僕が良いと言っているのだからいいんだよ。侯爵にはあとからそれ相応のものを贈ると言っておいてくれ。合わせて、この僕が明日にでも城に入城できる準備を整えておくように言っておいてくれ」
「う……」
「…なんなら、僕がこの場で権力を行使して君の事をこの仕事から追い出してやってもいいのだが?」
「わ、分かりました…。では、そのように取り計らいを…」
「よしよし、分かってくれればいいのだよ」
本当は僕だって、こんな強引なやり方は全く好むところではない。
しかし、僕の話が聞けないというのならこんなやり方に出ざるを得ないのだ。
「それで、どれくらいかかりそうだ?僕としてはもう今日にでもやってくれたって構わないのだが…?」
「そ、それは…。お相手様に話を通して見ない事にはなんとも…」
「お相手様…?侯爵の事なんて、別に気を遣う必要もないだろう。伯爵であるこの僕がそれを望んでいると知れば、喜んで城を差し出してくるに決まっている」
「い、いえ、お相手は侯爵様ではなく、第…」
「いいから、準備を進めるんだ。僕はもうすでにそのつもりで話を進めているのだから、できないなどと言うんじゃないぞ?きちんと用意を整えておいてもらわなければ、話にもならないのだからな」
「は、はい……」
これだけ強く言っておけば、こいつもスムーズに仕事にかかってくれることだろう。
さっきも言った通り、本当ならこんなやり方は取りたくないのだが、向こうがなめたような態度を取ってきたからには仕方がない事だろう。
…しかし、この時僕は気づかなかった…。
この時男がどうして僕の言葉に対し、渋るような雰囲気を見せたのかを…。
――フィーレア視点――
「えぇ!?あのお城を伯爵様が強引に奪おうとしているのですか!?」
「まったく、君の元婚約者には驚かされてばかりだな…。まぁ、君は初めからこうなることが分かっていたようだが」
「いえいえ…。まさかここまでだなんて…」
伯爵様の元を追い出された私は、自分が元いた場所に戻っていた。
それは、この国のトップに立たれるトリトス第一王子のおられる王宮、この国の中枢だった。
「そもそも、私と伯爵様の事を陰でつなげようとしていたのはトリトス様だったではありませんか…」
「う…。お似合いなんじゃないかと思っていたんだがなぁ。どうやらそうでもなかtったらしい…。それにまさか、僕が侯爵から譲り受けたお城にちょっかいをだしてくるとは…。この第一王子に楯突いてくるとは、命知らずなのか、それとも勇気があるのか…」
そう、あのお城はもうすでにトリトス様のものとなっているのだ。
しかし、すっかりセレスに夢中になってしまっている伯爵様はその事に気づかれておおらず、知らず知らずのうちにトリトス様に対して宣戦を布告するような行動をとってしまっているのだった…。
「伯爵様は、幼馴染であるセレス様のことが大好きみたいですからね…。真実の愛だって言い張ってますし…」
「もともとは浮気から始まった関係だろう?それを正当化するための言い訳にしか聞こえないがな」
「私も同感です」
きっとそれがそのまま真実なのだろう。
二人の間にあるものが真実の愛かどうかなんてどうでもいいけれど、少なくとも私が関わっている間に2人が浮気をしていた事だけは紛れもない事実だった。
「それで、どうされるのですか?」
「うーん…。フィーレア、君は僕にとって古くからの付き合いのある幼馴染だ。そんな君が彼の事を救ってほしいというのなら、僕はそれを聞き入れよう。しかし、その必要がないというのなら、その意見も尊重しよう。君はどうしたいんだ?」
トリトス様からかけられたその言葉に対し、私は…。
「さて…。侯爵の管理する城を入手するには、これが正攻法だな」
セレスの願いを叶えるべく動き始めていた僕は、そのまま貴族会の集会所を訪れた。
ここは日ごろから意思疎通を求める貴族家同士の交流所となっており、互いに思っていることを伝えあったり、取引の用立てを行ったり、金銭のやりとりなどを行う上で非常に重要な場所だった。
僕は早速近くにいた人間をひっとらえ、話をしにかかる。
「あ、君。侯爵の持っている城があったはずだが、知っているね?」
「は、伯爵様…!?も、もちろん、存じておりますが…」
「その城を明日にでも僕のものとなるよう手続きを始めてもらいたい。できるな?」
「お、お待ちください伯爵様!?それは…」
「ああ、心配はいらない。僕は伯爵家として、越権行為は行わない。僕のもてる権利の中できちんと話を進めていく」
「し、しかし…。いくら伯爵様とは言いましても、あのお城は…」
僕の言葉を聞いてなお、どこか難色を示す男。
まぁ、それも事前に想定していたことではあった。
いくら僕が伯爵位の貴族であるとは言っても、やはりいきなり城の譲渡を行うともなれば、話が大きすぎると言いたいのだろう。
その気持ちは分からなくもないが、しかし僕は急いでいるのだ。
侯爵側の都合など聞いている時間は無く、そんな暇もない。
「僕が良いと言っているのだからいいんだよ。侯爵にはあとからそれ相応のものを贈ると言っておいてくれ。合わせて、この僕が明日にでも城に入城できる準備を整えておくように言っておいてくれ」
「う……」
「…なんなら、僕がこの場で権力を行使して君の事をこの仕事から追い出してやってもいいのだが?」
「わ、分かりました…。では、そのように取り計らいを…」
「よしよし、分かってくれればいいのだよ」
本当は僕だって、こんな強引なやり方は全く好むところではない。
しかし、僕の話が聞けないというのならこんなやり方に出ざるを得ないのだ。
「それで、どれくらいかかりそうだ?僕としてはもう今日にでもやってくれたって構わないのだが…?」
「そ、それは…。お相手様に話を通して見ない事にはなんとも…」
「お相手様…?侯爵の事なんて、別に気を遣う必要もないだろう。伯爵であるこの僕がそれを望んでいると知れば、喜んで城を差し出してくるに決まっている」
「い、いえ、お相手は侯爵様ではなく、第…」
「いいから、準備を進めるんだ。僕はもうすでにそのつもりで話を進めているのだから、できないなどと言うんじゃないぞ?きちんと用意を整えておいてもらわなければ、話にもならないのだからな」
「は、はい……」
これだけ強く言っておけば、こいつもスムーズに仕事にかかってくれることだろう。
さっきも言った通り、本当ならこんなやり方は取りたくないのだが、向こうがなめたような態度を取ってきたからには仕方がない事だろう。
…しかし、この時僕は気づかなかった…。
この時男がどうして僕の言葉に対し、渋るような雰囲気を見せたのかを…。
――フィーレア視点――
「えぇ!?あのお城を伯爵様が強引に奪おうとしているのですか!?」
「まったく、君の元婚約者には驚かされてばかりだな…。まぁ、君は初めからこうなることが分かっていたようだが」
「いえいえ…。まさかここまでだなんて…」
伯爵様の元を追い出された私は、自分が元いた場所に戻っていた。
それは、この国のトップに立たれるトリトス第一王子のおられる王宮、この国の中枢だった。
「そもそも、私と伯爵様の事を陰でつなげようとしていたのはトリトス様だったではありませんか…」
「う…。お似合いなんじゃないかと思っていたんだがなぁ。どうやらそうでもなかtったらしい…。それにまさか、僕が侯爵から譲り受けたお城にちょっかいをだしてくるとは…。この第一王子に楯突いてくるとは、命知らずなのか、それとも勇気があるのか…」
そう、あのお城はもうすでにトリトス様のものとなっているのだ。
しかし、すっかりセレスに夢中になってしまっている伯爵様はその事に気づかれておおらず、知らず知らずのうちにトリトス様に対して宣戦を布告するような行動をとってしまっているのだった…。
「伯爵様は、幼馴染であるセレス様のことが大好きみたいですからね…。真実の愛だって言い張ってますし…」
「もともとは浮気から始まった関係だろう?それを正当化するための言い訳にしか聞こえないがな」
「私も同感です」
きっとそれがそのまま真実なのだろう。
二人の間にあるものが真実の愛かどうかなんてどうでもいいけれど、少なくとも私が関わっている間に2人が浮気をしていた事だけは紛れもない事実だった。
「それで、どうされるのですか?」
「うーん…。フィーレア、君は僕にとって古くからの付き合いのある幼馴染だ。そんな君が彼の事を救ってほしいというのなら、僕はそれを聞き入れよう。しかし、その必要がないというのなら、その意見も尊重しよう。君はどうしたいんだ?」
トリトス様からかけられたその言葉に対し、私は…。
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