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第3話
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「…とは言っても、いざこの時間が来ると緊張するな…。まぁ、大丈夫だとは思うけれど…」
セレーネを婚約破棄した事、さらにフィーナとの婚約を結ぶことを決めたユーレン第一王子は、その事を自身の父であるロードリー国王に伝えるベく彼の部屋の前まで訪れた。
…しかし、いざこの扉を前にするとやはり少し独特の緊張感に体を支配されていく様子…。
「(ま、まぁ大丈夫だろう…。いくらセレーネとの婚約を進めてきたのがお父様だと言っても、最終的な決定権はこの僕にあるんだ…。少しくらい偉そうな態度を取ったって、僕が第一王子であることには変わりないんだし…)」
気休めとも言える言葉を心の中でつぶやいたのち、ユーレンはゆっくりと国王の待つ部屋の扉を開け放つ。
部屋の中は非常に厳かな雰囲気に包まれており、国王の部屋らしいすさまじいオーラを感じさせる。
「お父様、本日はお時間を頂きました事、ありがとうございます。ユーレンです」
「おぉ、来たか。まぁ入れ」
「失礼します」
ユーレンの顔を見たロードリーはややうれしそうな表情を浮かべ、彼の事を自室の中へと招き入れる。
ユーレンはそんな国王の姿に妙な緊張感を抱きながらも、同時にこれは今の自分にとっては有利な状況なのではないかと考え至る。
「(お父様の機嫌がかなりよさそうだ…。これなら、婚約破棄の話もスムーズに聞き入れられそうだ♪)」
この状況をそう分析したユーレンは、早速自分の思惑通りに事が運ぶことを妄想する。
「お父様、今日はセレーネに関するお話がありここまで来ました」
「!!!」
これはいけるものに違いないと確信したユーレンは、早速セレーネの名前を出した。
すると国王はその名前を聞いた途端、その表情を一段とうれしそうなものにする。
「やはりそうか!そろそろではないかと思っていたんだ!」
「…はい?」
「別に隠す必要はない。二人の間に子供ができたという話なのだろう?」
「…え?」
完全に自分の思惑とは正反対の方向に進みそうなロードリーの口ぶり。
しかしそれを止められるほど、ユーレンに勇気があるはずもない。
「そうかそうか、二人の関係はそこまで進んでいたのか。さすがはユーレン、この私の考えをよくわかってくれている。私も国王として、これまで様々な女性たちをこの目で見てきたが、彼女ほど心が綺麗な女性は見たことがない。ゆえに、彼女がお前の隣に立って王宮を支えてくれるというのなら、これほどうれしいことはないと思っていたんだ。そしてユーレン、お前はそんな私の考えをきちんと理解し、彼女の事を大切にしてくれているのだろう?だからこそ今日のような報告を一番に私のもとに持ち込んできてくれたのだろう?」
「え、えっと……」
…自分が実際に国王に伝えようとしていたことは、子どもができたどころかむしろその反対、セレーネの事を婚約破棄して自分の元から追い出してしまったという事であった…。
すでに事態は過去のものであるため、これらは事後報告としてきちんと伝えなければならない。
…が、最初の時には持っていた大きな自信は、この時すでに半分以下にまで削れてしまっていた…。
「なんだユーレン、あまり顔色が良くないようだが?なにか他に私に言いたいことでもあるのか?」
「え、えっとですね、お父様…。実はその…セレーネとの婚約は…」
「あぁ、まさか…」
「……」
まさか、という言葉に何が続けられるのか、ユーレンはその心をドキリと震わせる。
「まさか、婚約式典に私が参加するかどうかを心配しているのか?それなら問題はない、他の予定などすべて上書きしてでもお前たちの方を選ぶとも。国王の仕事など婚約式典に比べればなんということはないさ」
「そ、そうですか……」
ユーレンは再び、セレーネとの婚約破棄を告白するタイミングを見失ってしまう。
「(い、今はとても婚約破棄の事を言えるような雰囲気じゃないな…。これは、タイミングを改めるべきか…?)」
後日に改めて報告すれば大丈夫だろう、この時ユーレンはその程度にしか考えていなかった。
しかし、そんなユーレンの淡い希望はすぐに打ち砕かれる。
「…ところでユーレン、最近何やら妙な噂を耳にしたんだ。もちろん私はお前の事を信用しているから、こんなものはただのうわさに過ぎないと確信している。が、一応確認しておかなければなと思ってな」
「は、はい??」
少し身構えるユーレンであったが、その後告げられた言葉は彼の心を激しくえぐりとった。
「お前がセレーネの事を冷遇し、そそのかされた幼馴染との関係を優先しているという話だ。…本当にそんなことがあったなら、私はお前を全力でつぶさなければならなくなる。まぁ、まさかそんなことをしているとは思っていないから、その点は心配しなくてもいいよな?」
「は、はは……」
「…どうしたユーレン?違うんだろう?」
「も、もちろんですよお父様!なにを言うんです!僕がお父様から導いていただいた婚約関係をないがしろにするはずがないではありませんか!冗談はやめてください!」
「はっはっは!それならよかった!ユーレン、これからもセレーネとの関係を大事にするんだぞ?」
「は、はは……」
…その時のユーレンの乾いた笑いは、恐怖と絶望に満ちていた。
すでに婚約破棄の上で追放までしてしまっている彼は、これからすぐに彼女を取り戻す行動に移ることを迫られた。
それがもう、実現不可能な事であるとは知らず…。
セレーネを婚約破棄した事、さらにフィーナとの婚約を結ぶことを決めたユーレン第一王子は、その事を自身の父であるロードリー国王に伝えるベく彼の部屋の前まで訪れた。
…しかし、いざこの扉を前にするとやはり少し独特の緊張感に体を支配されていく様子…。
「(ま、まぁ大丈夫だろう…。いくらセレーネとの婚約を進めてきたのがお父様だと言っても、最終的な決定権はこの僕にあるんだ…。少しくらい偉そうな態度を取ったって、僕が第一王子であることには変わりないんだし…)」
気休めとも言える言葉を心の中でつぶやいたのち、ユーレンはゆっくりと国王の待つ部屋の扉を開け放つ。
部屋の中は非常に厳かな雰囲気に包まれており、国王の部屋らしいすさまじいオーラを感じさせる。
「お父様、本日はお時間を頂きました事、ありがとうございます。ユーレンです」
「おぉ、来たか。まぁ入れ」
「失礼します」
ユーレンの顔を見たロードリーはややうれしそうな表情を浮かべ、彼の事を自室の中へと招き入れる。
ユーレンはそんな国王の姿に妙な緊張感を抱きながらも、同時にこれは今の自分にとっては有利な状況なのではないかと考え至る。
「(お父様の機嫌がかなりよさそうだ…。これなら、婚約破棄の話もスムーズに聞き入れられそうだ♪)」
この状況をそう分析したユーレンは、早速自分の思惑通りに事が運ぶことを妄想する。
「お父様、今日はセレーネに関するお話がありここまで来ました」
「!!!」
これはいけるものに違いないと確信したユーレンは、早速セレーネの名前を出した。
すると国王はその名前を聞いた途端、その表情を一段とうれしそうなものにする。
「やはりそうか!そろそろではないかと思っていたんだ!」
「…はい?」
「別に隠す必要はない。二人の間に子供ができたという話なのだろう?」
「…え?」
完全に自分の思惑とは正反対の方向に進みそうなロードリーの口ぶり。
しかしそれを止められるほど、ユーレンに勇気があるはずもない。
「そうかそうか、二人の関係はそこまで進んでいたのか。さすがはユーレン、この私の考えをよくわかってくれている。私も国王として、これまで様々な女性たちをこの目で見てきたが、彼女ほど心が綺麗な女性は見たことがない。ゆえに、彼女がお前の隣に立って王宮を支えてくれるというのなら、これほどうれしいことはないと思っていたんだ。そしてユーレン、お前はそんな私の考えをきちんと理解し、彼女の事を大切にしてくれているのだろう?だからこそ今日のような報告を一番に私のもとに持ち込んできてくれたのだろう?」
「え、えっと……」
…自分が実際に国王に伝えようとしていたことは、子どもができたどころかむしろその反対、セレーネの事を婚約破棄して自分の元から追い出してしまったという事であった…。
すでに事態は過去のものであるため、これらは事後報告としてきちんと伝えなければならない。
…が、最初の時には持っていた大きな自信は、この時すでに半分以下にまで削れてしまっていた…。
「なんだユーレン、あまり顔色が良くないようだが?なにか他に私に言いたいことでもあるのか?」
「え、えっとですね、お父様…。実はその…セレーネとの婚約は…」
「あぁ、まさか…」
「……」
まさか、という言葉に何が続けられるのか、ユーレンはその心をドキリと震わせる。
「まさか、婚約式典に私が参加するかどうかを心配しているのか?それなら問題はない、他の予定などすべて上書きしてでもお前たちの方を選ぶとも。国王の仕事など婚約式典に比べればなんということはないさ」
「そ、そうですか……」
ユーレンは再び、セレーネとの婚約破棄を告白するタイミングを見失ってしまう。
「(い、今はとても婚約破棄の事を言えるような雰囲気じゃないな…。これは、タイミングを改めるべきか…?)」
後日に改めて報告すれば大丈夫だろう、この時ユーレンはその程度にしか考えていなかった。
しかし、そんなユーレンの淡い希望はすぐに打ち砕かれる。
「…ところでユーレン、最近何やら妙な噂を耳にしたんだ。もちろん私はお前の事を信用しているから、こんなものはただのうわさに過ぎないと確信している。が、一応確認しておかなければなと思ってな」
「は、はい??」
少し身構えるユーレンであったが、その後告げられた言葉は彼の心を激しくえぐりとった。
「お前がセレーネの事を冷遇し、そそのかされた幼馴染との関係を優先しているという話だ。…本当にそんなことがあったなら、私はお前を全力でつぶさなければならなくなる。まぁ、まさかそんなことをしているとは思っていないから、その点は心配しなくてもいいよな?」
「は、はは……」
「…どうしたユーレン?違うんだろう?」
「も、もちろんですよお父様!なにを言うんです!僕がお父様から導いていただいた婚約関係をないがしろにするはずがないではありませんか!冗談はやめてください!」
「はっはっは!それならよかった!ユーレン、これからもセレーネとの関係を大事にするんだぞ?」
「は、はは……」
…その時のユーレンの乾いた笑いは、恐怖と絶望に満ちていた。
すでに婚約破棄の上で追放までしてしまっている彼は、これからすぐに彼女を取り戻す行動に移ることを迫られた。
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