愛せない婚約者だと言うなら、いなくなってしまってもいいですよね?

睡蓮

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第2話

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「セレーネ、君との婚約は今日をもって終わりにすることにした。とっとと荷物をまとめて自分の家に帰ってくれたまえ」
「……」

非常に冷たい口調で、一方的な言葉を告げるユーレン。
それに対してセレーネは、ただただ静かにその言葉を聞き入れていた。

「あぁ、お父様には僕の方から言っておくから君が出てくる必要はない。…まぁ、君が出てきたらお父様が僕に婚約破棄をやめるよう言ってくるだろうから、いてもらっては困ると言う方が適切な言い方かもしれないが」
「……」

ユーレンの中にはすでに、自分とフィーナが結ばれるという絵図が完成している。
だからこそ彼は、自分の選択が父である国王からどう思われるかを考え至らなかった。

「お父様から気に入られたからと言って、調子に乗られては困る。お前は周りから性格が良いだとか優しいだとか言われて持ち上げられすぎて、自分の事がよくわかっていないんじゃないのか?僕はそういう偽りの自分を作るような女は嫌いだからね。もう関係をここで終わりにすることにしたよ」

偉そうな口調でそう言葉を発するものの、それを決めたのはほとんどが彼の幼馴染であるフィーナであり、彼はそんな彼女の思惑にまんまと乗せられているだけであることに気づかない。

「これでもう会う事もなくなるだろうけど…。なにか最後に言いたいことはあるか?」
「………」
「…ないならこれで話は終わりだ。さぁ、出ていってもらおう」

それが、この場における二人の最後の会話だった。
2人は、特にユーレンの方は、これでもうセレーネに会う事もないだろうと思っていたものの、遠くない日に2人はある場所で再会を果たすことになる。
その時こそ、真に2人が最後の会話を行う時になる。

――――

「なんだって!?第一王子様から一方的に婚約破棄されただって!?」
「うん…。私、第一王子様の事を満足させられなかったみたい…」

王宮から出てきたセレーネの事を迎えに来たのは、同じくセレーネとは同郷で幼馴染の関係にあるユークだった。
彼はユーレンとセレーネの関係が最近芳しくないという噂を耳にし、心配のためにこうして王宮の前まで様子を見に来ていた。
すると偶然、そんな彼の前にセレーネが姿を現してきたのだった。
ユーレンから婚約破棄を告げられたという報告をセレーネから聞いたユークは、その顔に動揺を隠せない。

「満足って…。セレーネに限って、なにか落ち度があるはずもない。僕も君ほど心の綺麗な人物を知らないよ。…なら、絶対向こうの方に問題があるってことじゃないか…」

広まっていた噂話もまた、彼がそう考え至るに十分な根拠を持っていた。
ただ、セレーネはそんなユークの考えにそっとくぎを刺す。

「だめだよユーク、ユーレン様のせいにしたら…。どう考えたって、私の方に頑張りが足りなかったんだから…。私がもっとしっかりしていたら、彼の事を満足させられたに決まっている…。それができなかったのは、完全に私が彼の期待に応えられなかったからで…」
「セレーネ…」

セレーネがどれだけできた人間かを、ユークはよく理解していた。
だからこそ、この場でどんな慰めの言葉をかけたところで無駄であろうことも、彼はよく理解していた。
しかし、それでもユークはセレーネに寄り添わないわけにはいかなかった。

「セレーネ、もう僕らの街に帰ろう。君は十分よくやったさ。誰だって急に第一王子夫人になれだなんて言われて、満足の行く行動なんてとれるはずがない。だから早く帰ろう。みんな君の帰りを待っているよ?」
「ユーク……」

ユークのかけたその言葉は、自然とセレーネの心の中に溶け込んでいった。
2人はそのまま帰りの支度を整えると、一路自分たちの住んでいた町を目指して帰路についたのだった。

――――

「よしよし、これで完全に計画通りだ…。お父様には小言の一つくらい言われるかもしれないが、すでにセレーネを追い出してしまった後とあっては何も言えないだろう。そしてすでに新しい婚約相手も用意してあるのだから、なおさら文句など言えないはず…。僕とフィーナとの関係はこれで盤石だ…♪」

自室の窓から、王宮から出ていくセレーネの姿を見つめているユーレン。
その光景に心からの高揚感を抱きながら、彼はそう言葉をつぶやいた。
彼は当のロードリー国王にはまだ事態の詳細をなにも伝えていないものの、事後報告という形にすることですべて丸く収めようとしているつもりなのだろう。

「あの女が期待したほどのものではなかった、と言う話をすればお父様とて分かってくれることだろう。そもそも、僕自身が考える自分にふさわしい相手はセレーネではなくフィーナなんだ。そこにお父様の考えを受け入れる必要などこれっぽっちもないというもの」

自信満々にそう言葉をつぶやくユーレンであるものの、彼はまだ大事なことに気づいていない。
…それをこれからロードリーに教え込まれることとなるのであるが、そんな恐怖に満ちた未来を想像することは、今の浮かれた彼にはできないのだった…。
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