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第5話
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――ユーレンの思惑――
「お、おそらくこれで大丈夫なはずだ…」
セレーネへの使用人に伝言を伝え、早急に彼女の元まで届けるよう命じたユーレン。
おそらくはもすでに彼女の元までその言葉が届いているであろうことを考えながら、自分に言い聞かせるようにそう言葉をつぶやく。
「セレーネの事だ、おそらくこちらからもう一度婚約の話を持ち掛けたら、のっかってくるはず…。少なくとも第一王子夫人となることを嫌がる女なんて、この世界には一人もいないだろうからな…」
大丈夫と言ってはいるものの、その口調はやや震えている様子のユーレン。
彼がそこまで恐怖を感じる理由は、ひとつだった。
「まさかお父様があれほど僕とセレーネの婚約を受け入れてしまっていたとは…。僕の気の代わり一つで婚約破棄を受け入れてもらえるものと思っていたのに、こればかりは計算外だった…。軽い口調でその事実を伝えることをとどまったかこの僕をほめてやりたい…」
ユーレンの中では、事後報告であればロードリー国王は自分の決断を受け入れてくれるだろうという思いがあった。
しかし現実は正反対であり、ユーレンが想っている以上にロードリーはセレーネの事を想っており、二人の婚約関係を心待ちにしていたのだった。
「…まだ引き返せるところで本当に助かった…。本当に婚約破棄を完了させてしまった後にあんなことを言っていたら、それこそ僕はお父様に殺されていたかもしれない…。まだぎりぎり、神様は第一王子としての僕に味方をしてくれたというわけだ…。助かった…」
ひとまずユーレンは、婚約破棄の事実をすべて取り消し、セレーネとの関係を一旦これまで通りのものとすることでこの事態の解決を図ろうと考えた。
そこにはセレーネに対する思いなどかけらもないものの、ひとまず自分の方から声をかければ向こうは聞き入れてくれるだろうという、彼なりの思惑が存在していた。
「こうなると、セレーネがお人好しな性格をしていることが助けになるな。きっと人のいいセレーネなら、僕の言うことを断る勇気などありはしないだろう。ひとまずそれで関係を戻し、フィーナとの関係はその後ゆっくり考えることにしよう。彼女だって、そういう事情があるというのなら僕の事を理解してくれることだろう」
この時ユーレンは、自分の周りで起こっている事態の事を非常に甘く考えていた。
…現実には、自分の想っている方向とは全く正反対の方向に進みつつあるというのに…。
――――
「どうしてだフィーナ!!どうして分かってくれないんだ!!」
「嫌に決まっているでしょ!!なんで今更もう一度セレーネと一緒に生活しなくちゃいけないわけ!!」
「だ、だからそれはお父様の手前、仕方なくそうするしかなくって…」
「だって前にユーレン様私に言ったじゃない!これでもう私たち二人の関係を邪魔されることなんてありえないって!あの言葉はうそだったっていうの!?」
「そ、そうじゃない!!でもこればかりはどうすることもできないんだよ!」
フィーナはユーレンの言葉に激しく反発していた。
なぜ彼女がここまでヒステリックになるのか、それにはある理由があった。
「そもそもユーレン様、私との関係だって最初は浮気でしたよね?それに加えて今になって同じような事を言い始めたということは、まさかもう一度同じことを繰り返しているのではありませんか!!少なくとも今の私にはそう思われてならないのですが!」
「ま、まさかそんなことあるはずがないじゃないか!!」
二人の関係はそもそも、セレーネとの関係がありながら始まった浮気関係だった。
フィーナはユーレンが今になってなおそれと同じ事を行い、自分以外に愛人といえる人物がいるのではないのかということを疑っていたのだった。
…最初こそ楽観的に考えていたユーレンだったものの、彼を取り巻く状況は激しく変化していた。
さらにこの状況にあって、彼の心を一段と深い奈落に突き落とす知らせが持ち込まれる…。
「…ユーレン様、お取込み中のところ申し訳ございません…」
「見たらわかるだろう…!今はなにかの知らせを聞いているような余裕は…」
「ですが、緊急と言えるものです…。セレーネ様がユーレン様からのお誘いに対し、返事のお言葉を預けてくださいまして…」
「そんなもの聞かなくてもわかる!彼女は僕の誘いに乗るというんだろう!!わかりきったことをいちいち報告してこなくてもいい!!」
「い、いえそれが……」
「なんだ!!はっきりしろ!!!」
「それが…ユーレン様との婚約関係は、お断りする方向であると…」
「……………は???」
すでに彼女は自分の考えに乗ってくれるものとして話を進めていたユーレン。
しかしたった今彼のもとにもたらされた知らせは、その最前提となる条件を打ち崩すものであった…。
「お、おかしい……どうしてこんな……こんなことに………」
冷や汗をその顔全面に流し始めるユーレン。
ここからロードリー国王の言葉にどう言い訳をしようかと考え始める彼であったものの、もはやそんな方法はどこにも存在してはいないのだった…。
「お、おそらくこれで大丈夫なはずだ…」
セレーネへの使用人に伝言を伝え、早急に彼女の元まで届けるよう命じたユーレン。
おそらくはもすでに彼女の元までその言葉が届いているであろうことを考えながら、自分に言い聞かせるようにそう言葉をつぶやく。
「セレーネの事だ、おそらくこちらからもう一度婚約の話を持ち掛けたら、のっかってくるはず…。少なくとも第一王子夫人となることを嫌がる女なんて、この世界には一人もいないだろうからな…」
大丈夫と言ってはいるものの、その口調はやや震えている様子のユーレン。
彼がそこまで恐怖を感じる理由は、ひとつだった。
「まさかお父様があれほど僕とセレーネの婚約を受け入れてしまっていたとは…。僕の気の代わり一つで婚約破棄を受け入れてもらえるものと思っていたのに、こればかりは計算外だった…。軽い口調でその事実を伝えることをとどまったかこの僕をほめてやりたい…」
ユーレンの中では、事後報告であればロードリー国王は自分の決断を受け入れてくれるだろうという思いがあった。
しかし現実は正反対であり、ユーレンが想っている以上にロードリーはセレーネの事を想っており、二人の婚約関係を心待ちにしていたのだった。
「…まだ引き返せるところで本当に助かった…。本当に婚約破棄を完了させてしまった後にあんなことを言っていたら、それこそ僕はお父様に殺されていたかもしれない…。まだぎりぎり、神様は第一王子としての僕に味方をしてくれたというわけだ…。助かった…」
ひとまずユーレンは、婚約破棄の事実をすべて取り消し、セレーネとの関係を一旦これまで通りのものとすることでこの事態の解決を図ろうと考えた。
そこにはセレーネに対する思いなどかけらもないものの、ひとまず自分の方から声をかければ向こうは聞き入れてくれるだろうという、彼なりの思惑が存在していた。
「こうなると、セレーネがお人好しな性格をしていることが助けになるな。きっと人のいいセレーネなら、僕の言うことを断る勇気などありはしないだろう。ひとまずそれで関係を戻し、フィーナとの関係はその後ゆっくり考えることにしよう。彼女だって、そういう事情があるというのなら僕の事を理解してくれることだろう」
この時ユーレンは、自分の周りで起こっている事態の事を非常に甘く考えていた。
…現実には、自分の想っている方向とは全く正反対の方向に進みつつあるというのに…。
――――
「どうしてだフィーナ!!どうして分かってくれないんだ!!」
「嫌に決まっているでしょ!!なんで今更もう一度セレーネと一緒に生活しなくちゃいけないわけ!!」
「だ、だからそれはお父様の手前、仕方なくそうするしかなくって…」
「だって前にユーレン様私に言ったじゃない!これでもう私たち二人の関係を邪魔されることなんてありえないって!あの言葉はうそだったっていうの!?」
「そ、そうじゃない!!でもこればかりはどうすることもできないんだよ!」
フィーナはユーレンの言葉に激しく反発していた。
なぜ彼女がここまでヒステリックになるのか、それにはある理由があった。
「そもそもユーレン様、私との関係だって最初は浮気でしたよね?それに加えて今になって同じような事を言い始めたということは、まさかもう一度同じことを繰り返しているのではありませんか!!少なくとも今の私にはそう思われてならないのですが!」
「ま、まさかそんなことあるはずがないじゃないか!!」
二人の関係はそもそも、セレーネとの関係がありながら始まった浮気関係だった。
フィーナはユーレンが今になってなおそれと同じ事を行い、自分以外に愛人といえる人物がいるのではないのかということを疑っていたのだった。
…最初こそ楽観的に考えていたユーレンだったものの、彼を取り巻く状況は激しく変化していた。
さらにこの状況にあって、彼の心を一段と深い奈落に突き落とす知らせが持ち込まれる…。
「…ユーレン様、お取込み中のところ申し訳ございません…」
「見たらわかるだろう…!今はなにかの知らせを聞いているような余裕は…」
「ですが、緊急と言えるものです…。セレーネ様がユーレン様からのお誘いに対し、返事のお言葉を預けてくださいまして…」
「そんなもの聞かなくてもわかる!彼女は僕の誘いに乗るというんだろう!!わかりきったことをいちいち報告してこなくてもいい!!」
「い、いえそれが……」
「なんだ!!はっきりしろ!!!」
「それが…ユーレン様との婚約関係は、お断りする方向であると…」
「……………は???」
すでに彼女は自分の考えに乗ってくれるものとして話を進めていたユーレン。
しかしたった今彼のもとにもたらされた知らせは、その最前提となる条件を打ち崩すものであった…。
「お、おかしい……どうしてこんな……こんなことに………」
冷や汗をその顔全面に流し始めるユーレン。
ここからロードリー国王の言葉にどう言い訳をしようかと考え始める彼であったものの、もはやそんな方法はどこにも存在してはいないのだった…。
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