第一王子様が選んだのは、妹ではなく私でした!

睡蓮

文字の大きさ
1 / 6

第1話

しおりを挟む
「いやしかし、まさかエバー第一王子が我々の元に食事会の招待状を送ってくるとはね…」
「これはもう決まりではないですかお父様??エバー様はこの私の事をご自分の妃とすることを決められたのですよ!」
「やはりミリアもそう思うか?ならばこれはもう決まりと言ってもいいのでは…♪」

私の目の前で、二人の人物がその表情を非常に明るいものにしながらそう会話を繰り広げている。
1人は私のお父様であるコークス、もう一人は私の妹であるミリアだ。

「家族まとめて招待を受けるなんて、私たち以外にはいないのでしょう?これって、エバー様が私たちとの関係を家族ぐるみのものにしておきたいというお考えをお持ちであるということなのでしょう?それってもう完全に私の事を受け入れる準備に取り掛かっているということじゃないですか!!」
「それが実現したなら、俺はエバー第一王子を自分の息子だと言い張れるということか…。こんなに心躍るシチュエーションはないぞ…!!」

まだエバー様から食事会の誘いが来ただけだというのに、完全に浮かれてしまっている二人。
そんな光景を冷めた目で見ていた私に気づいたのか、二人はややその機嫌を落としながらこう言葉を続ける。

「…ただ問題なのは、こいつも連れて行かないといけないということだな…。家族ぐるみで招待をされている手前仕方のない事だが、これさえなければ完璧だったのだが…」
「はぁ…。お姉様、いくらエバー様から招待を受けているとはいえ、あなたが参加することをエバー様が本心から望まれていると思いますか?」
「……」

相手をしてもきりがないということを知っているので、私はただ静かに言葉をつぐむ。
しかし反対に、ミリアは思ったことを言わずにはいられないのか、とげとげしい口調のままこう言葉をつぶやく。

「エバー様の本命はどう考えても私なのです。にもかかわらずお姉様までお誘いしたのは、ただただ気を遣われただけのことでしょう?だというのにその優しさに甘えてずけずけと王宮に上がり込むのは、かえって失礼に当たるのではないですか?エバー様は私に来てほしいとお考えなのですからお姉様はいてもいなくても変わりません」
「……」

どこからそれほどの自信が来るのかはさっぱりわからないけれど、ミリアの中ではもう完全にエバー様と自分が結ばれるストーリーが出来上がっている様子。

「ミリアの言う通りだぞクレア。まさか自分も、エバー様との関係を近しいものにできるチャンスだとか思っているんじゃないだろうな?」
「まぁ、それこそ自意識過剰というものです。そんなに恥ずかしいことはないのですから、どうかやめていただきたいですね。こんな姉を持った妹だとでも思われてしまったら、私の評価まで悪いものになってしまいますから」

完全に私の事が気に入らない様子の二人。
するとそこに、もうひとりの招待者が姿を現した。

「あら、ついに来たのね。私にも見せてもらえる?」
「マリーナお母様、どうご、こちらです」
「ちゃんと君の名前もあるぞ」

少し遅れて私たちのいた部屋に姿を現したのは、私の母であるマリーナ。
彼女もまた二人に違わず私の事が気に入らない様子で、招待状の中身を見たとたんその表情を少し曇らせる。

「どうして4人で行かないといけないのかしら…。エバー様、優しすぎますわね…」
「たった今、私も同じことをお姉様にお話ししたところです。これを本気にするのはただただ恥ずかしい事ですよと」
「一体どういう性格をしていればそんな勘違いができるのかわからんが…」

決まって3人は私の事をさげすんでくる。
…その裏には緻密なまでのミリアの根回しがあるのだが、二人はその点に全く気づいてはいない様子。

「(私からすべてを奪って自分のものにして、今度はエバー様から私がいただいていたアプローチを自分のものにして…。小さい時からその性格は全く変わっていないのね)」

元々エバー様との関係が近しいものになったのは、エバー様が私の事を気にかけてくださったことが始まりだった。
貴族会が主催の舞踏会などに参加をしたとき、普通は家族でまとまって会場の中を動いて回り、挨拶などを行うのが通例。
しかし私はミリアのせいで完全に家の中で孤立させられてしまっていて、1人でいることを余儀なくされていた。
そんな時、私の事を見つけたエバー様がそのまま私に声をかけてくださったことで、こうして定期的に招待状をいただけるようになったのだ。
…しかし3人はそれを、私だけが邪魔者だと認識しているらしい…。

「まぁ、よく考えておくことね。別にあなたなんていなくても誰も悲しまないのですし、求められてもいないのですし。エバー様だってあなたの事を渋々誘ったのでしょうしね」
「お姉様、もう私の邪魔をするのはやめてくださいね?いくら私がエバー様とお近づきになるのが悔しいからと言っても、こんなことをするのは子どもの嫌がらせと変わりませんからね」
「それじゃあ早速、準備に取り掛かることとしようか。当然クレアは除いてな」

楽しそうな表情でそう言葉を発する3人。
そこに私の居場所は、やはりないのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

縁の切れ目が金の切れ目です!

あんど もあ
ファンタジー
「みすぼらしいお前とは婚約破棄だ!」 「じゃあ、貸してたお金を返してくださいね」 質素倹約がモットーのアナベルは、浪費家の婚約者に婚約破棄されてしまう。だがそれは想定内で……。

病弱令嬢…?いいえ私は…

月樹《つき》
恋愛
 アイゼンハルト公爵家の長女クララは生まれた時からずっと病弱で、一日の大半をベッドの上で過ごして来た。対するクララの婚約者で第三皇子のペーターはとても元気な少年で…寝たきりのクララの元を訪ねることもなく、学園生活を満喫していた。そんなクララも15歳となり、何とかペーターと同じ学園に通えることになったのだが…そこで明るく元気な男爵令嬢ハイジと仲睦まじくするペーター皇子の姿を見て…ショックのあまり倒れてしまった…。 (ペーターにハイジって…某アルプスの少女やんか〜い!!) 謎の言葉を頭に思い浮かべながら…。 このお話は他サイトにも投稿しております。

平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました

Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。 伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。 理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。 これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。

婚約破棄は既に済んでいます

姫乃 ひな
恋愛
婚約者に婚約破棄を言われてしまいました。 私にはどうすることもできません。何故なら既に両家の当主で婚約破棄についての話し合いは済んでおりますから… ※説明不足の部分がありますが実際の会話のテンポ感を感じながら読んでいただけると嬉しいです。 ※初心者のため手探りで始めています。よろしくお願いします。

愚か者が自滅するのを、近くで見ていただけですから

越智屋ノマ
恋愛
宮中舞踏会の最中、侯爵令嬢ルクレツィアは王太子グレゴリオから一方的に婚約破棄を宣告される。新たな婚約者は、平民出身で才女と名高い女官ピア・スミス。 新たな時代の象徴を気取る王太子夫妻の華やかな振る舞いは、やがて国中の不満を集め、王家は静かに綻び始めていく。 一方、表舞台から退いたはずのルクレツィアは、親友である王女アリアンヌと再会する。――崩れゆく王家を前に、それぞれの役割を選び取った『親友』たちの結末は?

婚約破棄して泥を投げつけた元婚約者が「無能」と笑う中、光り輝く幼なじみの王子に掠め取られました。

ムラサメ
恋愛
​「お前のような無能、我が家には不要だ。今すぐ消えろ!」 ​婚約者・エドワードのために身を粉にして尽くしてきたフィオナは、卒業パーティーの夜、雨の中に放り出される。 泥にまみれ、絶望に沈む彼女の前に現れたのは、かつての幼なじみであり、今や国中から愛される「黄金の王子」シリルだった。 ​「やっと見つけた。……ねえ、フィオナ。あんなゴミに君を傷つけさせるなんて、僕の落ち度だね」 ​汚れを厭わずフィオナを抱き上げたシリルは、彼女を自分の屋敷へと連れ帰る。 「自分には価値がない」と思い込むフィオナを、シリルは異常なまでの執着と甘い言葉で、とろけるように溺愛し始めて――。 ​一方で、フィオナを捨てたエドワードは気づいていなかった。 自分の手柄だと思っていた仕事も、領地の繁栄も、すべてはフィオナの才能によるものだったということに。 ボロボロになっていく元婚約者。美しく着飾られ、シリルの腕の中で幸せに微笑むフィオナ。 ​「僕の星を捨てた報い、たっぷりと受けてもらうよ?」 ​圧倒的な光を放つ幼なじみによる、最高に華やかな逆転劇がいま始まる!

婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話

ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。 リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。 婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。 どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。 死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて…… ※正常な人があまりいない話です。

だってあの子は欲しがりさん

Mag_Mel
恋愛
エレナとマルティナは貴族の姉妹。幼い頃から妹のマルティナは、姉が持つものを何でも欲しがり、両親の後押しもあって、それらを次々と奪ってきた。 そしてついには、エレナの婚約者までもが妹の手に渡ってしまう。 親友のトゥーリは憤るが、エレナはただ微笑み「仕方がない」とすべてを受け入れるだけ。 その姿に耐えきれなくなったトゥーリは、マルティナに苦言を呈することを決意するが……。

処理中です...