私が出て行った後になって、後悔した旦那様から泣きの手紙がもたらされました♪

睡蓮

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第3話

「お姉様、お兄様がお話があるから自室に来てくれと言っておられましたよ」
「そう、ありがとう」

廊下で私の姿を見つけるやいなや、エリーナはうれしそうな表情でそう言葉を口にした。
その雰囲気は明らかになにか裏があるもので、伯爵様が私の事を呼びつけた意図についてもすでに知っているような様子だった。

「きっといい知らせが告げられますよ。お楽しみになさって行ってください」
「そう…」

エリーナがそう言うということは、起きる事は間違いなく正反対の事なのでしょう。
彼女が私の事を思っているはずなどないし、本当にいい知らせであるならこんな明るい表情を見せるはずがないのだから…。

「それじゃあ行ってくるわ。こっちの事はよろしく…」
「ええ、どうぞごゆっくり♪」

私はエリーナに対して短くそう告げると、そのまま伯爵様の部屋を目指して歩き始めた。
…その裏で、彼女はこの上ないほどの喜びの表情を浮かべているような、そんな気がした。

――――

「さて、君に来てもらったのには理由があるわけだが…。心当たりはあるか?」
「いえ…。とくにはなにも…」
「まぁ、そうだろうな。エリーナが言っていた通り、君の性格はかなりひん曲がっているらしいからな」
「……」

伯爵様は早速答え合わせをしてくれる。
私がここに呼ばれた理由の一旦は、やはりエリーナにあるらしい。
彼女が伯爵様になんと告げ口をしたのかは知らないけれど、それでもうすうす何があったのかは感じ取ることができた。

「まぁいいさ。ではこちらから話をするとしよう。ミーシャ、君は今までエリーナの事をかなり軽んじていたようだな。違うか?」
「えっと…」

軽んじていたなんて言われてもなんと返事をすればいいのか…。
少なくともその言葉で説明をするなら、向こうが私の事を軽んじていたという言い方の方が正しいと思うのですけれど…。

「エリーナが言っていたよ。自分がどれだけ家族として君の事を受け入れようとしても、君はそれを拒み続けていたと。彼女は相当に辛そうだった。その事をどう思っている?」
「……」

私と話している時の彼女は、それはそれはうきうきな様子でしたけれど…。
伯爵様の前では気弱な妹を演じておられるのでしょうけど、私はそんな彼女に心当たりはありませんよ…?

「何もないのか…。ミーシャ、僕は君の婚約者として君の事も信頼したいと思っていた。だが、ここまで関係がこじれてしまった今、もはやそれを修復するのは不可能だと思っている」

そうですか。
エリーナの言うことは全面的にすべて信頼するくせに、私の言葉はなにも受け入れてくれないのですね。
私の事も信頼したいと言っておられましたが、なら私の言葉もきちんと受け入れてくれるはずですのに、それをしないということは私のことなんてどうでもいいと裏で思っておられるのでしょうね。

「ミーシャ、君との婚約関係は今日をもって終わりにすることにした。理由は明白、僕にとって最も尊い存在であるエリーナの事を傷つけたからだ。そしてその事を君自身は全く反省していない様子だし、そもそも気にもしていない様子。そんな相手とこれ以上、家族関係を続けることなどできない」
「そうですか…。私の言葉など、なにも…」
「君の言葉はもう、聞き入れるに値しない。君はそれほどの事をやったのだと自覚するんだ」
「……」

もう、私には何を言うことも許されていないらしい。
ついさきほどまでは婚約者であり、私をここに導くときには伯爵様は「必ず幸せにする」「どんな時も君を信じる」と言ってくださったのに、あれはすべてその場限りの嘘だったのですね。
そんなもの最初から信じなければよかった。

「もう決まったことだ。出ていく準備を整えてくれ。僕とエリーナの住まう聖域を、これ以上汚さないでもらおうか」
「…わかりました。ではそのように」

私の事はまるでゴミ扱い。
いるだけで迷惑だと言われているのだから、私だってこれ以上ここに残る理由もない。
伯爵様がそれを望んでいるのでしたら、止める必要もありませんものね。

――――

「あら、何か言われたのですか?顔が暗いようですよ、お姉様?」
「あら、エリーナ。どうしてそこにいたの?私が出てくるのを待っていたの?」
「まさか。たまたまここにいただけですよ。それを、まるで待ち伏せされていたみたいに思っちゃうだなんて、お姉様ってかなり自意識過剰なんじゃないですか?だからお兄様から愛想を尽かされちゃうんじゃないですか?笑っちゃいますね」

やっぱり、今回の事に関して裏で手を引いていたのはエリーナだった。
彼女の中では、思っていた通りに計画が進んで楽しくて仕方がないのだろう。
その表情は余すところなくそんな感情を表に出していて、それ以外の言葉など何も出てこなかった。

「お別れですねお姉様、今までありがとうございました。これから先はお兄様に捨てられた哀れな女として、同情を誘われたらいかがですか?だれか引き取ってくれるかもしれませんよ?」
「そうね、それも悪くないわね。それじゃ、さようなら」

私はそう言い残すと、エリーナに対して背中を向けた。
もうこれから先、彼女に会うことなんてないだろうと思っていたからだ。

けれど、それからあまり時間を経ずに、私たちは再会を果たすことになる。

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