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第二章
夕景山の揺籃歌《十六》
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☆次回、やっと終わります (^o^)
仙人について
仙人については諸説あるようですが、このお話では私の手持ちの道教の書籍から
◎仙人ランキング
上仙>高仙>大仙>玄仙>真仙>神仙>霊仙>至仙
◎仙人の区別
天仙・地仙・水仙
を参考に、『仙人ランキング + 仙人の区別 ÷ 2』で勝手に分けています。(^o^;)
仙人は基本、天上界へとつながる山・須弥山に住んでいる。須弥山は、天上界へとつながる長い階段のある高い高い山。そしてそれを取り囲む四つの山が、須弥山の麓と言う位置付けになっている。
その須弥山では仙人の地位に応じて住む場所が決まっており、中央の天上界へとつながる階段のある高い山には天仙と呼ばれる上仙と高仙が、それを取り囲む山には地仙と呼ばれる大仙・玄仙・真仙と、水仙と呼ばれる神仙・霊仙・至仙が住んでいる。
ちなみに、仙人とは
火に入っても焼けず、水に入っても溺れず、顔や形を自在に変え、姿を隠せ、様々な能力を持っている人。
********
「此処から先は少し時空が歪む。視界も悪い、注意しろ。琉格泉、玉龍」
「ぴゅ~」
眼前に広がる乳白色の世界、濃い霧がかかったようで視界はほぼない。そんな中、玉龍の間延びした鳴き声だけが響き渡る。
何かを思い出したらしい沙麼蘿が “ついてこい” と言えば、阿修羅の眷属たる飛天夜叉に拒否権などあるはずもなく、一家揃って住み慣れた巣とあばら家にも見えた家を捨て付き従うしかない。そこに、子供達の意見などあろうはずもないし、玄奘達と共に西の街に向かっていた親子にも、何かを言う暇などあるはずもない。
玄奘は眉間にシワを寄せ、八戒は桂英を片手で抱き、もう一方の手で明陽の手を握りしめる。悟浄は、幼子を抱きかかえ飛天夜叉の巣で見つけた我が子の手をしっかりと握りしめ、おたおたとする女に “大丈夫だ、たぶん…な” と声をかけ横に立つ。
「じゃオレ、一番後ろ!」
悟空は、眼前の乳白色の世界が何なのかよく知っている。育ての親であるじいちゃん、須菩提がよく使っていたからだ。使い慣れた者でなければ、前が見えず道からそれたりはぐれたりしてしまうことも多々ある。
沙麼蘿を先頭に玄奘、八戒、親子、飛天夜叉とその家族、悟空と並び、両横に悟浄、琉格泉と玉龍がつく。誰かが道から外れそうになっても、悟空と琉格泉と玉龍、それに飛天夜叉で何とかなるはずだ。
『子供の声がする。こんな所に子供がいるとは、どう言うことだ』
そう言って沙麼蘿と皇の前に姿を現したのは、まだ若い地仙だった。まさかこんな所に天帝の血筋である子供がいるとは思いもせず、美しい灰簾石色の髪をした子供達を見つけたその地仙は双眸を見開く。
この地仙、名を柏樹といい仙人達が暮らす須弥山ではなく、須弥山の麓に近い山奥に住居を構えている。だがその場所は、人間がたどり着くには難しく、仙ですら足を運ぶことはほとんどない場所だった。
幼い頃、戦で家族を亡くし虫の息だった所を天仙に助けられ、仙としての教育を受け育ち地仙となったのが柏樹だ。片田舎で育ち、学もなかった両親や兄姉達は何故自分達か戦に巻き込まれ、その中で食うにも困る生活を強いられ命を奪われなければならなかったのか、それすらもわからぬまま亡くなった。
仙に育てられ仙としての教育を受けた柏樹は、全ては知るべきことも知らず、自分達に学がなかったからだと思う。ほんの少しでも学があったなら、誰かを助けることも、守ることだってできたかも知れない。
だから柏樹は思うのだ。生きられなかった家族のぶんまで精一杯生きて、自分達のような人間を出さないためにも、戦のない世界を造るためにも、一人でも多くの子供達に生きて行くための知識を与えようと。
そのために下界と、天上界に属する須弥山のちょうど中間地点に住まいを構えた。其処は下界でもなく須弥山でもない場所。仙術を使えば下界のいたる所ともつながることができ、柏樹なら須弥山に行くにも近い。にも関わらす、人が行くには難しく、戦に巻き込まることもない。
仙の中には、行き場のない子供達に知識や武道を教え育てる者も多い。柏樹を助けた天仙は、柏樹を須弥山に連れて行き育てた。玄奘の親代わりでもある李緑松と黄丁香を育てた地仙は、人里からは離れてはいたが下界で彼等を育てた。そして柏樹は、下界とも須弥山とも近く、だが下界とも須弥山とも言えない場所で、行き場のない子供達を育てていた。
沙麼蘿は思い出したのだ。あの日、沙麼蘿と皇が柏樹と出会った場所こそ、夕景山であったのだと。当時は人里もなく、あるのは獣道くらいだったように思う。
だとすれば、この夕景山には仙術で作られた柏樹が住む場所へと進める道の入口があるはずなのだ。普通の人間には見つけられぬその道も、沙麼蘿なら見つけ進むことは容易い。
そうして乳白色の世界を抜けた先にあったのは
「うわぁー、おっきな門だ!」
「すごーい!」
子供達が驚きに声を上げるほど、誰もが未だ嘗て見たこともないような巨大な門。その先には、まるで宙に浮くようななだらかな階段が続いており地面はない。沙麼蘿は、その階段を皆を連れて歩いて行く。
すると、今度は華やかな道門のような門が見え、そこには跪いたまだ少女にも見えるような一人の女性が頭をたれて待っていた。
「お久しぶりでございます、公女様」
その女性は、沙麼蘿に向けニコリと笑顔を向ける。
「元気そうだな紅宝、柏樹はいるか」
「はい、おられます。ご案内を」
そう言って歩き出すのは紅宝。哪吒の幼馴染である。柏樹が住む此処で様々な仕事をして働く数名は、哪吒と共に貧民街で育った仲間達だ。
哪吒が托塔天に拾われた際、”友達を助けて欲しい“ と言うその願いを聞き届け、托塔天の知り合いの地仙であった柏樹に子供達を預けた。それ依頼、哪吒の幼馴染達は此処で学び仙となり働きながら、陰になり日向になり哪吒を支えている。
「哪吒は来るのか」
「はい。つい先日も、珍しい果物を沢山持って来てくれました」
「そうか」
「少し前には、皇子様もいらっしゃいました」
「皇が」
「はい」
沙麼蘿と紅宝が会話をしながら進んだ先には、幾つかの大きな建物があり、中からは子供達の声が聞こえて来る。
「お待ちしておりました公女様。師がお待ちでございます」
柏樹の仙術で造られた道を通ったため、沙麼蘿が此処に来ることは既にわかっていたのだろう。建物の前では、哪吒の幼馴染の中でもガタイのいい石榴と言う、柏樹の護衛役と子供達の守手も兼ねている男が出迎えた。
********
間延び→間があくこと。転じて、どことなく締まりがないこと
眉間→眉と眉のあいだの部分。また、額の中央
おたおた→思いがけない事態に、うろうろするだけで何もできないさまを表わす語
虫の息→弱り果てて、今にも絶えそうな呼吸。また、その状態
片田舎→都から遠く離れていて生活に不便なところ。へんぴな田舎
容易い→わけなくできるさま。やさしい
未だ嘗て→今までに一度も
貧民街→都市の中で低所得階層の人々が多く集まって生活している地域。スラム
ガタイがいい→体格がいい人のこと
守手→守っている人。見張っている人。番人
次回以降は11月5日か6日が目標です。
仙人について
仙人については諸説あるようですが、このお話では私の手持ちの道教の書籍から
◎仙人ランキング
上仙>高仙>大仙>玄仙>真仙>神仙>霊仙>至仙
◎仙人の区別
天仙・地仙・水仙
を参考に、『仙人ランキング + 仙人の区別 ÷ 2』で勝手に分けています。(^o^;)
仙人は基本、天上界へとつながる山・須弥山に住んでいる。須弥山は、天上界へとつながる長い階段のある高い高い山。そしてそれを取り囲む四つの山が、須弥山の麓と言う位置付けになっている。
その須弥山では仙人の地位に応じて住む場所が決まっており、中央の天上界へとつながる階段のある高い山には天仙と呼ばれる上仙と高仙が、それを取り囲む山には地仙と呼ばれる大仙・玄仙・真仙と、水仙と呼ばれる神仙・霊仙・至仙が住んでいる。
ちなみに、仙人とは
火に入っても焼けず、水に入っても溺れず、顔や形を自在に変え、姿を隠せ、様々な能力を持っている人。
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「此処から先は少し時空が歪む。視界も悪い、注意しろ。琉格泉、玉龍」
「ぴゅ~」
眼前に広がる乳白色の世界、濃い霧がかかったようで視界はほぼない。そんな中、玉龍の間延びした鳴き声だけが響き渡る。
何かを思い出したらしい沙麼蘿が “ついてこい” と言えば、阿修羅の眷属たる飛天夜叉に拒否権などあるはずもなく、一家揃って住み慣れた巣とあばら家にも見えた家を捨て付き従うしかない。そこに、子供達の意見などあろうはずもないし、玄奘達と共に西の街に向かっていた親子にも、何かを言う暇などあるはずもない。
玄奘は眉間にシワを寄せ、八戒は桂英を片手で抱き、もう一方の手で明陽の手を握りしめる。悟浄は、幼子を抱きかかえ飛天夜叉の巣で見つけた我が子の手をしっかりと握りしめ、おたおたとする女に “大丈夫だ、たぶん…な” と声をかけ横に立つ。
「じゃオレ、一番後ろ!」
悟空は、眼前の乳白色の世界が何なのかよく知っている。育ての親であるじいちゃん、須菩提がよく使っていたからだ。使い慣れた者でなければ、前が見えず道からそれたりはぐれたりしてしまうことも多々ある。
沙麼蘿を先頭に玄奘、八戒、親子、飛天夜叉とその家族、悟空と並び、両横に悟浄、琉格泉と玉龍がつく。誰かが道から外れそうになっても、悟空と琉格泉と玉龍、それに飛天夜叉で何とかなるはずだ。
『子供の声がする。こんな所に子供がいるとは、どう言うことだ』
そう言って沙麼蘿と皇の前に姿を現したのは、まだ若い地仙だった。まさかこんな所に天帝の血筋である子供がいるとは思いもせず、美しい灰簾石色の髪をした子供達を見つけたその地仙は双眸を見開く。
この地仙、名を柏樹といい仙人達が暮らす須弥山ではなく、須弥山の麓に近い山奥に住居を構えている。だがその場所は、人間がたどり着くには難しく、仙ですら足を運ぶことはほとんどない場所だった。
幼い頃、戦で家族を亡くし虫の息だった所を天仙に助けられ、仙としての教育を受け育ち地仙となったのが柏樹だ。片田舎で育ち、学もなかった両親や兄姉達は何故自分達か戦に巻き込まれ、その中で食うにも困る生活を強いられ命を奪われなければならなかったのか、それすらもわからぬまま亡くなった。
仙に育てられ仙としての教育を受けた柏樹は、全ては知るべきことも知らず、自分達に学がなかったからだと思う。ほんの少しでも学があったなら、誰かを助けることも、守ることだってできたかも知れない。
だから柏樹は思うのだ。生きられなかった家族のぶんまで精一杯生きて、自分達のような人間を出さないためにも、戦のない世界を造るためにも、一人でも多くの子供達に生きて行くための知識を与えようと。
そのために下界と、天上界に属する須弥山のちょうど中間地点に住まいを構えた。其処は下界でもなく須弥山でもない場所。仙術を使えば下界のいたる所ともつながることができ、柏樹なら須弥山に行くにも近い。にも関わらす、人が行くには難しく、戦に巻き込まることもない。
仙の中には、行き場のない子供達に知識や武道を教え育てる者も多い。柏樹を助けた天仙は、柏樹を須弥山に連れて行き育てた。玄奘の親代わりでもある李緑松と黄丁香を育てた地仙は、人里からは離れてはいたが下界で彼等を育てた。そして柏樹は、下界とも須弥山とも近く、だが下界とも須弥山とも言えない場所で、行き場のない子供達を育てていた。
沙麼蘿は思い出したのだ。あの日、沙麼蘿と皇が柏樹と出会った場所こそ、夕景山であったのだと。当時は人里もなく、あるのは獣道くらいだったように思う。
だとすれば、この夕景山には仙術で作られた柏樹が住む場所へと進める道の入口があるはずなのだ。普通の人間には見つけられぬその道も、沙麼蘿なら見つけ進むことは容易い。
そうして乳白色の世界を抜けた先にあったのは
「うわぁー、おっきな門だ!」
「すごーい!」
子供達が驚きに声を上げるほど、誰もが未だ嘗て見たこともないような巨大な門。その先には、まるで宙に浮くようななだらかな階段が続いており地面はない。沙麼蘿は、その階段を皆を連れて歩いて行く。
すると、今度は華やかな道門のような門が見え、そこには跪いたまだ少女にも見えるような一人の女性が頭をたれて待っていた。
「お久しぶりでございます、公女様」
その女性は、沙麼蘿に向けニコリと笑顔を向ける。
「元気そうだな紅宝、柏樹はいるか」
「はい、おられます。ご案内を」
そう言って歩き出すのは紅宝。哪吒の幼馴染である。柏樹が住む此処で様々な仕事をして働く数名は、哪吒と共に貧民街で育った仲間達だ。
哪吒が托塔天に拾われた際、”友達を助けて欲しい“ と言うその願いを聞き届け、托塔天の知り合いの地仙であった柏樹に子供達を預けた。それ依頼、哪吒の幼馴染達は此処で学び仙となり働きながら、陰になり日向になり哪吒を支えている。
「哪吒は来るのか」
「はい。つい先日も、珍しい果物を沢山持って来てくれました」
「そうか」
「少し前には、皇子様もいらっしゃいました」
「皇が」
「はい」
沙麼蘿と紅宝が会話をしながら進んだ先には、幾つかの大きな建物があり、中からは子供達の声が聞こえて来る。
「お待ちしておりました公女様。師がお待ちでございます」
柏樹の仙術で造られた道を通ったため、沙麼蘿が此処に来ることは既にわかっていたのだろう。建物の前では、哪吒の幼馴染の中でもガタイのいい石榴と言う、柏樹の護衛役と子供達の守手も兼ねている男が出迎えた。
********
間延び→間があくこと。転じて、どことなく締まりがないこと
眉間→眉と眉のあいだの部分。また、額の中央
おたおた→思いがけない事態に、うろうろするだけで何もできないさまを表わす語
虫の息→弱り果てて、今にも絶えそうな呼吸。また、その状態
片田舎→都から遠く離れていて生活に不便なところ。へんぴな田舎
容易い→わけなくできるさま。やさしい
未だ嘗て→今までに一度も
貧民街→都市の中で低所得階層の人々が多く集まって生活している地域。スラム
ガタイがいい→体格がいい人のこと
守手→守っている人。見張っている人。番人
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