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第二章
籠鳥残火《一》
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籠鳥(ろうちょう)→かごの中に飼われている鳥。転じて、拘束されて自由にならないことのたとえ。かごのとり
残火(ざんか)→消え残っている火。のこりび
********
東の空が光を放ち始め、真っ暗だったこの世界に光を灯す。夜の暗闇と朝の光がせめぎ合う中、少しずつ地上の光景が姿を現した。
天上界には、暗闇の夜は存在しない。だが此処、柏樹が暮らす下界と須弥山の間にある場所には、下界と同じように暗闇の夜がある。
沙麼蘿は、眼の前に広がる光景に双眸を細めた。一本の真っ直ぐな緑色の茎の先端に、強く反り返った鮮やかな青い花を咲かせる花々が咲き乱れている。
それは、花の色さえ違えば下界の民の多くが言うところの彼岸花、天上界では曼珠沙華と呼ばれる花にとてもよく似ていた。無論、曼珠沙華にはこんな青い花は存在しない。
これは、幼い頃沙麼蘿が自分の力を制御できず、何処か違う場所に飛ばされた時に見つけ、それを持ち帰ったものだ。蒼宮の敷地に植えられていたその花を、皇が柏樹に与えここまで増えたのだと言う。
「懐かしいか」
ふと聞こえたその声に、沙麼蘿は振り返った。
「皇」
「これが赤い花ならば、母上と父上が眠るあの場所を思い出すだろう」
そう、沙麼蘿も ”これが赤ならば“ と思っていた。天都の端にある皇の両親の墓標の周りには、下界で言うところの秋になると、真っ赤な曼珠沙華の花が咲き乱れる。
父と母の思い出の花だったと言うそれを、夫の墓標の周りに植えたのは母の聖宮だった。それは、見る者によっては血の海のように見えるらしく、その光景を見た鶯光帝が ”花を燃やし尽くせ!!“ との命を出したほどだ。だが、それを許さなかったのは幼い日の沙麼蘿だった。
あの日、皇に手を握られたまま人形のようにうつむいて立っていた沙麼蘿が、顔を上げ初めて鶯光帝を見据えて口を開いたのだ。
「何故此処に、こいつらが居る」
子供達との別れの朝、当然のように沙麼蘿の側にいた皇達を見つけ、玄奘は呟く。その声に ”フン“ と鼻で笑う素振りを見せた皇は
「気にするな、下界へ戻るまでの護衛とでも覚えばよい」
と、高飛車にも思える態度で言った。
「皇様は、柏樹殿に子供達を預けにこられたまで。ですが、最近神術や仙術で造られた場所に歪みが出ております。ですから、万が一に備え下界までご一緒致します」
そう言ったのは、下界で何度となく会ったことがある男、琅牙だった。皇の暮らす蒼宮の眼前には、斑の血を引く者達が暮らす街がある。皆、皇のために働く者達だ。
彼等の子供達には、一通りの学問や宮中に入っても恥ずかしくないような礼儀作法を学べる場所が用意されている。その中でも下界に興味のある者、琅牙のように商会に入り下界との商売を志す者など、下界の知識を得ることを目標としている子供達は、皆柏樹に預けられる。
「桂英、明陽。次に迎えに来る時には、必ず沢山のお土産を持って来ます。それまでの間、此処で皆と一緒に勉強しながら待っていて下さい」
「うん、大丈夫だよ。俺も桂英も、此処で勉強しながら兄ちゃんを待ってる」
「ちぃにいちゃんといっしょにまってるから、おみやげをいっぱいもってむかえにきてね」
「えぇ、えぇ。いっぱい持って迎えに来ます」
そう言いながら、大きな門の前で幼い弟妹達を抱きしめる八戒。その横では、地面に両手をついた女が
「大神様、ありがとうございました。此処で子供達と暮らしながら、自分達の生きて行く道を考えたいと思います。本当に、本当に、ありがとうございました」
と、頭を下げ続けている。その後ろには、人の姿をした飛天夜叉が、此処で暮らす子供達と一緒に立っていた。
此処にいた数日で、桂英と明陽の兄である八戒は子供達と親しくなり、それをきっかけに自分達より少し大きな悟空と、大きな身体で一緒に遊んでくれた悟浄とも、子供達は仲良しになっていたのだ。沢山の子供達に見送られ、玄奘一行は穏やかな場所を後にする。
「気をつけて行かれよ。これから先は、さらなる苦難の道が待ち受けていることであろう。子供達は、此処でしっかりと預かっておきますゆえ。公女様も、旅が終わりましたらまたぜひお越し下さい。再びお会いできる日を、楽しみに待っております」
柏樹や子供達に見送られ、玄奘一行は下界へと向かうために仙術で造られた乳白色の世界へと足を踏み入れた。
どのくらい歩いた時だろうか、視界の無いその世界に耳を劈くような高い獣の鳴き声が響き渡る。
「なんだ!」
「何の鳴き声!」
悟浄と悟空が辺を見回すが、何も見えない。
「現れたか、妾季!」
「心得ております」
皇の声に、妾季達が皇と玄奘一行を取り囲むように陣立てる。陣の中央に立った皇は、そっと右手の掌を開く。
すると、その手首にある阿修羅の徽章である宝相華の図柄が入った白金の腕釧が微かに光を放ち、細かな粒子が掌に集まり渦を巻き一つの形を作り始めた。
そこに現れたのは白刃。沙麼蘿が使う剣よりもやや大きなそれを、皇は辺りを薙ぎ払うに振るう。すると一振りの風が渦を巻き、視界さえなかった乳白色の世界の霧が晴れるように辺りの風景が姿を現す。
風を操り風龍さえ呼び出すことのできる剣、阿修羅が持つ五つが宝刀の一つ。沙麼蘿が持つ “氷龍神剣” と対になり、氷龍の力を唯一制御できるその剣の名を、“風龍神剣” と言う。沙麼蘿の力の暴発を防ぐために、阿修羅が皇に与えた物だ。
そして見えたのは、暗い洞窟のような場所だった。
「来るぞ!」
沙麼蘿の声がして、何か巨大な力の塊が落ちて来るような気がした。そして…。
********
双眸→両方のひとみ
無論→論じる必要もないほどはっきりしているさま。言うまでもなく。もちろん
墓標→埋葬箇所に建てる目印の石や木の柱
側→すぐそば
鼻で笑う→相手を見下してあざ笑う。鼻先で、ふんと笑う
高飛車→相手に対して高圧的な態度をとること。また、そのさま
劈く→勢いよく突き破る。つよく裂き破る
陣立て→戦場で陣を構える様式。軍勢の配置や編制。陣構え
徽章→衣服などにつけるバッジ。ここではお印のいみ
宝相華→仏教系の文様の一種。ここでは興福寺の阿修羅像が身につけている柄
白刃→鞘から抜いた方な。抜き身
薙ぎ払う→刃物などで勢いよく横に払うこと
☆次回の話は沙麼蘿と皇の子供の頃の話になりますので、場面が変わります。
※次回投稿は12月5日か6日を予定しておりますが、スマホを機種変予定なので新しいスマホに慣れない場合は、1週間くらい投稿が遅れるかもしれません。ご了承下さいませ m(_ _)m
残火(ざんか)→消え残っている火。のこりび
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東の空が光を放ち始め、真っ暗だったこの世界に光を灯す。夜の暗闇と朝の光がせめぎ合う中、少しずつ地上の光景が姿を現した。
天上界には、暗闇の夜は存在しない。だが此処、柏樹が暮らす下界と須弥山の間にある場所には、下界と同じように暗闇の夜がある。
沙麼蘿は、眼の前に広がる光景に双眸を細めた。一本の真っ直ぐな緑色の茎の先端に、強く反り返った鮮やかな青い花を咲かせる花々が咲き乱れている。
それは、花の色さえ違えば下界の民の多くが言うところの彼岸花、天上界では曼珠沙華と呼ばれる花にとてもよく似ていた。無論、曼珠沙華にはこんな青い花は存在しない。
これは、幼い頃沙麼蘿が自分の力を制御できず、何処か違う場所に飛ばされた時に見つけ、それを持ち帰ったものだ。蒼宮の敷地に植えられていたその花を、皇が柏樹に与えここまで増えたのだと言う。
「懐かしいか」
ふと聞こえたその声に、沙麼蘿は振り返った。
「皇」
「これが赤い花ならば、母上と父上が眠るあの場所を思い出すだろう」
そう、沙麼蘿も ”これが赤ならば“ と思っていた。天都の端にある皇の両親の墓標の周りには、下界で言うところの秋になると、真っ赤な曼珠沙華の花が咲き乱れる。
父と母の思い出の花だったと言うそれを、夫の墓標の周りに植えたのは母の聖宮だった。それは、見る者によっては血の海のように見えるらしく、その光景を見た鶯光帝が ”花を燃やし尽くせ!!“ との命を出したほどだ。だが、それを許さなかったのは幼い日の沙麼蘿だった。
あの日、皇に手を握られたまま人形のようにうつむいて立っていた沙麼蘿が、顔を上げ初めて鶯光帝を見据えて口を開いたのだ。
「何故此処に、こいつらが居る」
子供達との別れの朝、当然のように沙麼蘿の側にいた皇達を見つけ、玄奘は呟く。その声に ”フン“ と鼻で笑う素振りを見せた皇は
「気にするな、下界へ戻るまでの護衛とでも覚えばよい」
と、高飛車にも思える態度で言った。
「皇様は、柏樹殿に子供達を預けにこられたまで。ですが、最近神術や仙術で造られた場所に歪みが出ております。ですから、万が一に備え下界までご一緒致します」
そう言ったのは、下界で何度となく会ったことがある男、琅牙だった。皇の暮らす蒼宮の眼前には、斑の血を引く者達が暮らす街がある。皆、皇のために働く者達だ。
彼等の子供達には、一通りの学問や宮中に入っても恥ずかしくないような礼儀作法を学べる場所が用意されている。その中でも下界に興味のある者、琅牙のように商会に入り下界との商売を志す者など、下界の知識を得ることを目標としている子供達は、皆柏樹に預けられる。
「桂英、明陽。次に迎えに来る時には、必ず沢山のお土産を持って来ます。それまでの間、此処で皆と一緒に勉強しながら待っていて下さい」
「うん、大丈夫だよ。俺も桂英も、此処で勉強しながら兄ちゃんを待ってる」
「ちぃにいちゃんといっしょにまってるから、おみやげをいっぱいもってむかえにきてね」
「えぇ、えぇ。いっぱい持って迎えに来ます」
そう言いながら、大きな門の前で幼い弟妹達を抱きしめる八戒。その横では、地面に両手をついた女が
「大神様、ありがとうございました。此処で子供達と暮らしながら、自分達の生きて行く道を考えたいと思います。本当に、本当に、ありがとうございました」
と、頭を下げ続けている。その後ろには、人の姿をした飛天夜叉が、此処で暮らす子供達と一緒に立っていた。
此処にいた数日で、桂英と明陽の兄である八戒は子供達と親しくなり、それをきっかけに自分達より少し大きな悟空と、大きな身体で一緒に遊んでくれた悟浄とも、子供達は仲良しになっていたのだ。沢山の子供達に見送られ、玄奘一行は穏やかな場所を後にする。
「気をつけて行かれよ。これから先は、さらなる苦難の道が待ち受けていることであろう。子供達は、此処でしっかりと預かっておきますゆえ。公女様も、旅が終わりましたらまたぜひお越し下さい。再びお会いできる日を、楽しみに待っております」
柏樹や子供達に見送られ、玄奘一行は下界へと向かうために仙術で造られた乳白色の世界へと足を踏み入れた。
どのくらい歩いた時だろうか、視界の無いその世界に耳を劈くような高い獣の鳴き声が響き渡る。
「なんだ!」
「何の鳴き声!」
悟浄と悟空が辺を見回すが、何も見えない。
「現れたか、妾季!」
「心得ております」
皇の声に、妾季達が皇と玄奘一行を取り囲むように陣立てる。陣の中央に立った皇は、そっと右手の掌を開く。
すると、その手首にある阿修羅の徽章である宝相華の図柄が入った白金の腕釧が微かに光を放ち、細かな粒子が掌に集まり渦を巻き一つの形を作り始めた。
そこに現れたのは白刃。沙麼蘿が使う剣よりもやや大きなそれを、皇は辺りを薙ぎ払うに振るう。すると一振りの風が渦を巻き、視界さえなかった乳白色の世界の霧が晴れるように辺りの風景が姿を現す。
風を操り風龍さえ呼び出すことのできる剣、阿修羅が持つ五つが宝刀の一つ。沙麼蘿が持つ “氷龍神剣” と対になり、氷龍の力を唯一制御できるその剣の名を、“風龍神剣” と言う。沙麼蘿の力の暴発を防ぐために、阿修羅が皇に与えた物だ。
そして見えたのは、暗い洞窟のような場所だった。
「来るぞ!」
沙麼蘿の声がして、何か巨大な力の塊が落ちて来るような気がした。そして…。
********
双眸→両方のひとみ
無論→論じる必要もないほどはっきりしているさま。言うまでもなく。もちろん
墓標→埋葬箇所に建てる目印の石や木の柱
側→すぐそば
鼻で笑う→相手を見下してあざ笑う。鼻先で、ふんと笑う
高飛車→相手に対して高圧的な態度をとること。また、そのさま
劈く→勢いよく突き破る。つよく裂き破る
陣立て→戦場で陣を構える様式。軍勢の配置や編制。陣構え
徽章→衣服などにつけるバッジ。ここではお印のいみ
宝相華→仏教系の文様の一種。ここでは興福寺の阿修羅像が身につけている柄
白刃→鞘から抜いた方な。抜き身
薙ぎ払う→刃物などで勢いよく横に払うこと
☆次回の話は沙麼蘿と皇の子供の頃の話になりますので、場面が変わります。
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