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ひとつめのはなし
プロローグ
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――まずはこの物語の主人公である佐藤茜ついて説明しよう!
彼女は、どちらかというとモブキャラ的立ち位置にいる人物である。
黒髪黒目。後ろ髪は肩口のあたりで、前髪はわずかに目が隠れるかどうかというあたりで自然な形で切りそろえている。
視力は両目とも一.〇で。身長は百六十二センチ。
体重は――うわなにをするやめろいわないから!
「…………」
……さて、説明を再開しよう。
今回の彼女は、ある公立高校に通っている高校一年生だ。
彼女の通う高校は割りと自由な校風が自慢で、服装からして自由度が高いようだが。
そんな環境にあっても、彼女はワイシャツの上に黒のカーディガンを着込み、プリーツスカートの裾は膝上まできっちり伸ばしていて。
そのスカートの下にはスパッツを履いており、その上膝上あたりまで延びる靴下を履くという――肌を見せないことに命でもかけてるのかというくらいに肌の露出を減らしているのが、彼女なりの着こなしであった。
まぁこの服装ひとつ取ってみてもわかることではあるかもしれないが。
彼女がモブキャラたる最も大きな理由は、彼女自身の境遇に特筆すべき点がひとつもないことにこそあった。
母親は専業主婦。父親はしがないサラリーマン。
二人の経歴にも特別なところはなく、普通に恋愛して普通に結婚して普通に子どもを生んで今に至っているわけだ。
……現在もなお夫婦仲が良好なのは特筆すべきことかもしれないがね。
さて、彼女が普通の家庭で育ち、普通に公立の小中学校を卒業して、現在の公立高校に入ったことは疑いようがない事実である。
血統による覚醒? 生い立ちによる暗い過去?
――断言しよう。まったくの無縁である。
しかし、普通であることは悪いことなのであろうか。
――まさか、そんなはずはない!
大半の人間にとって、特別な生い立ちや状況など縁のないものだ。
それが当たり前、圧倒的な多数派なのだ。
「それでも、人は自らに特別性を求めて他人と自分とを比較してしまうものだ」
だが、君は違う。
そういった特別な何かを背景に持たない人々と、ほんの少しだけ違ったのだ。
君自身の生い立ちに特別性はないし、特別な血統をもって新たな力が覚醒することもないが――君の周囲は、ほんの少しだけ物語性に満ちている。
「ああ、その通り。
……別に私に限った話じゃないと思うけれどね」
彼女をモブキャラと断じない特別性は、その自覚の差にあるのだろう。
では、物語をはじめよう!
「大した内容も披露できないけどね。
……今回は、一人の男を二人の女が取り合う話さ」
彼女は、どちらかというとモブキャラ的立ち位置にいる人物である。
黒髪黒目。後ろ髪は肩口のあたりで、前髪はわずかに目が隠れるかどうかというあたりで自然な形で切りそろえている。
視力は両目とも一.〇で。身長は百六十二センチ。
体重は――うわなにをするやめろいわないから!
「…………」
……さて、説明を再開しよう。
今回の彼女は、ある公立高校に通っている高校一年生だ。
彼女の通う高校は割りと自由な校風が自慢で、服装からして自由度が高いようだが。
そんな環境にあっても、彼女はワイシャツの上に黒のカーディガンを着込み、プリーツスカートの裾は膝上まできっちり伸ばしていて。
そのスカートの下にはスパッツを履いており、その上膝上あたりまで延びる靴下を履くという――肌を見せないことに命でもかけてるのかというくらいに肌の露出を減らしているのが、彼女なりの着こなしであった。
まぁこの服装ひとつ取ってみてもわかることではあるかもしれないが。
彼女がモブキャラたる最も大きな理由は、彼女自身の境遇に特筆すべき点がひとつもないことにこそあった。
母親は専業主婦。父親はしがないサラリーマン。
二人の経歴にも特別なところはなく、普通に恋愛して普通に結婚して普通に子どもを生んで今に至っているわけだ。
……現在もなお夫婦仲が良好なのは特筆すべきことかもしれないがね。
さて、彼女が普通の家庭で育ち、普通に公立の小中学校を卒業して、現在の公立高校に入ったことは疑いようがない事実である。
血統による覚醒? 生い立ちによる暗い過去?
――断言しよう。まったくの無縁である。
しかし、普通であることは悪いことなのであろうか。
――まさか、そんなはずはない!
大半の人間にとって、特別な生い立ちや状況など縁のないものだ。
それが当たり前、圧倒的な多数派なのだ。
「それでも、人は自らに特別性を求めて他人と自分とを比較してしまうものだ」
だが、君は違う。
そういった特別な何かを背景に持たない人々と、ほんの少しだけ違ったのだ。
君自身の生い立ちに特別性はないし、特別な血統をもって新たな力が覚醒することもないが――君の周囲は、ほんの少しだけ物語性に満ちている。
「ああ、その通り。
……別に私に限った話じゃないと思うけれどね」
彼女をモブキャラと断じない特別性は、その自覚の差にあるのだろう。
では、物語をはじめよう!
「大した内容も披露できないけどね。
……今回は、一人の男を二人の女が取り合う話さ」
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