どこにでもいる働いている人の日常

どらぽんず

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お金を稼ぐのは難しい

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 ――休日にまで何してんだかなぁ、とそう思う気持ちがないわけではなかった。
 人は働かなくては生きていけないが、年中無休の働き通しで平気な人間などそうはいない。
 大抵の人間は金を稼がなくては生きていけないから働くのだ。
 金の出ない時間にまで仕事のことを考えたいと思っている人間は、ワーカホリックくらいのものだろうと強く思う。その理由が何であるかは、それこそ千差万別、場合によりけりなのだろうが。
 ……少なくとも自分はそんな少数派に属していない。
 休みの日は部屋でごろごろしていたいと思うし、出来れば働かずに金だけ手に入れたいとも思っていた。
 ……しかし現実ってのは厳しいもんだ。
 楽をして金が手に入るなんてことはまず在り得なかった。
 ……金を手に入れる人間は、努力をしているから金を手に入れているんだからなぁ。
 彼らはワーカホリックでなくても、金を稼ぐための努力に時間を費やしているはずで。だから金があるはずなのだ。
 アリとキリギリスではないけれど、積み重ねたものが無ければ成果が出ないのはどんな場所でも同じなのだ。
 ……まぁ、運だけで金を手に入れる者も居ないわけじゃあないんだろうけどな。
 それはもっと少数の、限られた例外中の例外であるし、それもある意味では――宝くじを定期的に買い続けるだとか――努力をした結果ではある筈だった。
 それでも、境遇だとかという要因もあるわけで――結局のところ、一定以上の水準を超えるためには努力と運のどちらも欠けてはならないというのが自分の中での結論だった。
 そして、成果が――それが本来の目的であるかは問わず――出る手段はやはり、努力をすること、になるのだろうというのもそうだった。
 ……しかも、金にならない時間で行った努力で、だ。
 ああ、本当に面倒くさい。
 まぁこの辺の話はどこにでも出ていることではあるし、考えているとぐるぐる同じところを回るだけだ。
 ……実際に今も一周しているし。
 だから結局のところは、現実を変えたいなら何はともあれあがけと、そういう話であり、それだけの話であった。


 ――さて、ここで話を現状に戻そう。
 私もフリーターながら社会人として一人で暮らしている身だった。
 正社員の道はなかなか遠く、現状の資金繰りも非常に厳しいものだった。色々と節約はしているけども、それもその場凌ぎにしかなっていなかった。
 現在の仕事は工場の荷物整理のようなものだった。ダンボールを移動してトラックに詰める。それだけの仕事だった。
 ……しかし、これがなかなか、労力の割には給料が安いんだ。
 とは言え学があるわけでも学歴がまともな訳でもない身だ。
 仕事のえり好みは出来ないし、する暇もそうはなかった。
 空いた時間でなんとか似たような仕事で時給が高いのはないかと探してみると、なんとフォークリフトを使った仕事で少しは時給が上がるかもしれない、ということがわかった。
 仕事の内容次第では資格無しでも出来る仕事もあるらしいが、資格有りでやる仕事のほうが当然給料は高いだろう。たぶん、きっと。そうであればいいなと思います。
 そんなわけで。
 現状に合った努力はこれだろうと、そう思って、貴重な休日にわざわざ自動車講習場にやって来て、フォークリフトの講義を受けているのだった。
 ……と言うか、働いていたら休日でもないと講座なんて受けられないんだが。
 丸一日潰れるような座学と実習が五日くらいかかるのだ。当然の話だった。
 今更ながら学生時代にちゃんとしていなかったことが悔やまれるけども。そのツケが今になってこうして、似たような形で返ってきているのだから人生というのはよく出来ているもんだとも思う。
 言う相手など居ないが、居ればこう言っていたことだろう。
 少年少女よ、面倒くさいだろうが真面目に勉強はやっておけ、と。
 後で痛い目見るぞ、と。
 ……俺が学生の時にも言われた気がするわ、これ。
 実感を伴って当時の大人の言葉が理解できるようになったということは、ひとつ大人になったということだろうか。
 ――違うか?
 違うな。
「……はぁ」
 そこまで考えたところで、思わずため息が漏れた。
 周囲に居る同輩の一部から視線が飛んできて、思わず口元を押さえた。
 面倒くさいし止めてしまいたいが、周囲に迷惑をかけるのは本意ではなかった。
 それに、努力なくして現状打破はないのだ。
 ……現実逃避はここまでにして、そろそろ座学に集中するとしよう。
 そう思って、周囲に迷惑をかけない程度に頬を叩いて気合を入れ直してから、講義に耳を傾けることにした。



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