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【獣と人間で何が違う】
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終演後の最後の挨拶の時に観客から拍手を頂く。その時の拍手の仕方、熱量でその舞台の評価が分かる。先にやった尚高は良い舞台を創っていた。尚校が会場を温めてくれた事はもちろん関係しているだろうが、それでも割れんばかりの大拍手が会場を埋め尽くした。俺たち桜丘高校演劇部は横一列に並び、深く頭を下げ、緞帳が下りるのを待っていた。
幕がゆっくりと下りていく。その途中『やり切った』という達成感と、心底ホッとした感覚を覚えた。本気でやらないと体験できない、なんとも言えない満足感。あぁ。これだ。このために演劇をするんだという気持ち。色々あったけれど、それは部員全員が感じているはずだ。
「みんな!」と、緞帳が完全に下がるや否や真珠が勢いよく続けた。
「おつかれぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
と呼びかけると部員のみんなも気持ちを一つに、
「お疲れ様でしたぁぁあぁぁぁぁぁあ!」
とそれぞれに返した。もちろんイビーも笑っていた。
舞台袖から楽屋に続く通路に真珠が真っ先に駆けて行く。そして、部員一人一人にハイタッチをしながら一言掛ける。俺はその列の一番最後に並んでみんなが階段の下に消えていくのを見ながら歩いた。そして、俺の番が来た。真珠と俺はバチン! とこれでもかってくらいに全力でハイタッチをした。
「ユーマ! このトラブルメイカーがッ! やっぱりアンタの台本は最高だったな!」真珠はとても興奮していた。
「真珠の演技がやべーんだよ! 最高だったな!」
と、俺と真珠は興奮冷めやらぬまま楽屋に向かった。
桜丘高校だけで使わせて貰っている楽屋は部員たちの熱狂で包まれていた。さっちゃんもきむらっちも坂本くんも、他の皆も、みんながみんなやり切った笑顔で楽しそうに話していた。
イビーも本当に楽しそうな顔をしていた。
「イビー!」
「ユーマ~!」と、イビーは感極まってか俺にハグをしに来てくれた。二か月前の事が嘘みたいだ。イビーにも色々迷惑を掛けた。本当に沢山の迷惑を掛けたけれど、こうやってしっかりと舞台を一緒に創ることが出来て心の底から嬉しい。
「みんな~!」と、津木エリも照明と音響のコントロールブースから戻って来た。
「みんな本当に凄かったよ! 幕が下りてもお客さんずっと拍手してくれてたよ!」
それを聴いて、部員たちはより一層喜んだ。とても良い芝居が出来たんだという実感が更に強まった。
「ユーマ!」と野太い声が俺を呼んだ。
「み~ち~や~ま~!」と俺は道山に駆け寄った。
「ユーマやったな! マジで感動した! めっちゃ良い芝居だった! マジヤバかった! そして黒木さんやべぇ! 黒木さんホントすげぇな!」
「真珠ヤバイだろ! 俺もビビった! ありがとう道山!」
「ユーマくんおつかれさま」と言ってくれたのは成瀬だった。
「成瀬~! わざわざありがとう!」
道山も成瀬も満面の笑みだった。親友のその顔が見れて俺は幸せだった。
台本が完成して、真珠にオーケーを貰って部活に戻った最初の三、四日は正直しんどかった。イビーとも津木エリとも当然ながら微妙な距離感があってギクシャクするところもあった。だけどそこは真珠が締めてくれた。絶対に舞台を成功させるという情熱が凄かった。真珠に感化されるように、俺も、イビーも、津木エリも、みんなも、どんどん稽古に集中していった。舞台本番まで二ヶ月が残っていたのも功を奏した。二ヶ月という期間は意外と長く、あの時のごたごたを忘れさせてくれるには十分だった。真珠には感謝しかなかった。
興奮の余韻に浸りながら、俺たちは舞台の片付け、会場の片付けをして尚高を後にした。帰り道、部員みんなでまとまってバスに乗った。話の中心は主役の真珠だった。今日の真珠の芝居は神がかっていた。真珠であって真珠じゃなかった。あの堂々たる演技、芯から別人になっている真珠。自分で書いた役なのに、自分で想像していたキャラクターからどんどん昇華されていって、その役は真珠になった。自分で書いたもののはずなのに、その役は真珠だった。
真珠も自分が何をしたのか分かっているようだった。それだけの芝居を真珠はやってのけた。こいつは天才なんじゃないかと舞台袖で見ている時に思った。皆が真珠に魅了されていた。真珠はきっと、スターになると思った。
恵乃も姉貴も会場まで来てくれていた。楽屋まで二人は来なかったが姉弟のグループLINEにメッセージをくれた。
『やっぱり兄やんの台本はおもしろいよ! そして真珠さん! 真珠さん凄かった!』
『良いもん見れたわ。おつかれ』
姉妹も喜んでくれているようで、なんだか誇らしかった。
バスを降りて、俺たちは電車に乗り継いだ。途中まで他の部員も同じ方向で一緒にいたが、俺と真珠は一番奥の方の地域から来ているので最終的に二人になった。打ち上げは来週の日曜日にやることになって、今日は解散。打ち上げも楽しみだ。
「真珠、お前ホントにやったな。やりやがったな。来年は本気で全国行けるんじゃねえか」
「行けるんじゃなくて、『行く』のよ」
真珠の言葉にはそれを実現させるだろうと思わせる力強さがあった。
「途中どうなるかと思ったけど、アンタもイビーも佳花も、みんなちゃんと集中してくれて良かったわ」
「そこはホント真珠のお蔭だ。ありがとう」
「私は最高の舞台を創りたかっただけ」
「そうだな。最高の舞台だったな」
「そうね」
俺も真珠も口をマフラーで覆い、イスに深く腰掛けてだらんとして話していた。
「あんなに大きな拍手今までにあったか?」
「多分今までで一番だったわね。みんなよく頑張ってくれた」
「一番頑張ったのは真珠だよ」
「アンタも頑張ってたわよ。ちゃんと反省してたみたいだし。それに、みんなよ。みんな頑張った」
「そうだな」
ガタンガタン。と電車が動く。停車駅に停まり、寒い風と一緒に数名の乗車客が入ってくる。そしてまた、電車はゆっくりと動き出す。俺と真珠はもう少し電車に揺られなければいけない。
「打ち上げどうする?」
「……。」
と、真珠の方を見ると真珠は寝てしまっていた。そりゃ疲れてるよな。と思った。主役で、部長で、俺の事で色々考えさせて、本当に真珠には頭が上がらない。
「おつかれさま」と俺は小声で真珠に言い、念のために降りる駅までの時間を計算して携帯の目覚ましをセットした。
「ただいま~」と暗がりのなか家に着くと、バタバタバタバタとすごい勢いでピンクのモコモコパジャマを来た恵乃が階段を下りてきて「お兄や~ん!」と抱き付いてきた。
「おいやめろっ、俺は疲れてんだ」
「マジちょ~すごかった! 今までで一番良かった!」
「おう。ありがとう恵乃。そして俺は風呂に入りてぇからちょっと離してくれ」
「わたしが流してあげよっか?」
「は?」
「マジで」と恵乃は見詰めてくる。
「きめぇわ。オフッ……」
恵乃のパンチが腹に入った。パンチを放った恵乃は素早く後ろにジャンプした。
「お前……俺がここでそれじゃあ頼むとか言ってもどうせ殴ってんだろ」
「知らないっ! お疲れさまっ。風呂湧いてるよ」と言って恵乃はリビングに消えていった。
「ったく」と俺は靴を脱ぎ、家に上がり、部屋着の灰色スウェットと下着を持ってきて風呂に向かった。疲れた。と、親父と母さんがいない事に気付いた。
「恵乃~。親父と母さんは~?」
「そのままデートしに行った~」
息子の舞台を見てそのままデートに行くとはそれなんぞや。仲良いのは良いんだが。まぁ、いいか。
風呂から上がると恵乃が料理を作ってくれていて、食卓には白色スウェットの姉貴が座っていた。
「おう弟」
「なんだよ」
「今日の舞台良かったよ。アンタこれからも台本とか書くのがいいんじゃない?」
「わかんね」
「そう。真珠ちゃんはどうするとか聞いてる?」
「そうそう真珠さんだよ真珠さん!」と、恵乃が台所から会話に入ってくる。
「あれは圧巻だったね。プロの舞台とか見たことないけど、真珠ちゃんはプロになっても通用するんじゃない?」
「多分、真珠はそうするだろうね。アイツの才能はこんなとこで終わるもんじゃねぇ。俺も今日は本当にびっくりした。あいつはすげぇわ」
「イビーさんも良かったけどね」と、恵乃はカレーライスをお盆に乗せて持ってきてくれた。
「「ありがとう」」と、俺と姉貴はカレーライスを手元に運ぶ。テーブルにはゆで卵とプチトマトが乗ったサラダと三種類のドレッシングが置いてある。
「それでは」と、テーブルに座った恵乃が言う。
「「「いただきます」」」と、それぞれが食事を始める。
「イビーちゃん日本語上手だったね。私たちは後ろの方に座ってたけど日本語でもちゃんと声聞こえたし」
「そうだったよね~」
「イビーは日本語もだいぶ頑張って勉強してたと思う」
「恵乃」
「なぁにねえやん」
「このカレーライス本当においしい~ぞ~」と、姉貴は恵乃の頭をくしゃくしゃにした。
「ははっ、ありがとうねえやん。……ねえやん、ありがとうって言ってるから頭のやめて…………ねぇやん? ……ねえやん殴るよ?」
「ゴメン恵乃ちゃ~ん。恵乃ちゃんが可愛すぎて~」
「知ってる~」
恵乃はにこやかにツインテールの根元を掴んだ。
「テンションたけぇなあんたら」
「恵乃のご飯がおいしくないって言うのかい?」
「んなこた言ってねーだろ」
「でっ、兄やん」
「なんだよ」
「イビーさんどうするの?」
いつか突っ込まれるとは思っていた。
「どうするって、前にも話しただろ。もう一回プロポーズする予定だよ」
「「ういぃ~」「きゃー」」と、姉妹は楽しそうだ。
「うるせぇ」
「イビーちゃんはいつ帰るのよ?」
「二十六日に帰るって」
「そう」
「それじゃあお兄やんはそれまでにもう一回プロポーズするんだ!」
「あぁ。そうすると思う」
「そっかぁ~。頑張ってね。もう前の事はちゃんと仲直り? 出来てるんだよね?」
「俺もイビーも舞台に一生懸命だったからなぁ……。けど、前よりみんな仲良くなって、舞台づくりでの一体感はめっちゃあったからなんとなく大丈夫な感じはするっちゃするんだけど」
「今度は適当に告白するんじゃないよ。情熱込めまくってちゃんと伝えるんだよ」
「兄やんならきっと大丈夫!」
「ハハ、ありがと」
幕がゆっくりと下りていく。その途中『やり切った』という達成感と、心底ホッとした感覚を覚えた。本気でやらないと体験できない、なんとも言えない満足感。あぁ。これだ。このために演劇をするんだという気持ち。色々あったけれど、それは部員全員が感じているはずだ。
「みんな!」と、緞帳が完全に下がるや否や真珠が勢いよく続けた。
「おつかれぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
と呼びかけると部員のみんなも気持ちを一つに、
「お疲れ様でしたぁぁあぁぁぁぁぁあ!」
とそれぞれに返した。もちろんイビーも笑っていた。
舞台袖から楽屋に続く通路に真珠が真っ先に駆けて行く。そして、部員一人一人にハイタッチをしながら一言掛ける。俺はその列の一番最後に並んでみんなが階段の下に消えていくのを見ながら歩いた。そして、俺の番が来た。真珠と俺はバチン! とこれでもかってくらいに全力でハイタッチをした。
「ユーマ! このトラブルメイカーがッ! やっぱりアンタの台本は最高だったな!」真珠はとても興奮していた。
「真珠の演技がやべーんだよ! 最高だったな!」
と、俺と真珠は興奮冷めやらぬまま楽屋に向かった。
桜丘高校だけで使わせて貰っている楽屋は部員たちの熱狂で包まれていた。さっちゃんもきむらっちも坂本くんも、他の皆も、みんながみんなやり切った笑顔で楽しそうに話していた。
イビーも本当に楽しそうな顔をしていた。
「イビー!」
「ユーマ~!」と、イビーは感極まってか俺にハグをしに来てくれた。二か月前の事が嘘みたいだ。イビーにも色々迷惑を掛けた。本当に沢山の迷惑を掛けたけれど、こうやってしっかりと舞台を一緒に創ることが出来て心の底から嬉しい。
「みんな~!」と、津木エリも照明と音響のコントロールブースから戻って来た。
「みんな本当に凄かったよ! 幕が下りてもお客さんずっと拍手してくれてたよ!」
それを聴いて、部員たちはより一層喜んだ。とても良い芝居が出来たんだという実感が更に強まった。
「ユーマ!」と野太い声が俺を呼んだ。
「み~ち~や~ま~!」と俺は道山に駆け寄った。
「ユーマやったな! マジで感動した! めっちゃ良い芝居だった! マジヤバかった! そして黒木さんやべぇ! 黒木さんホントすげぇな!」
「真珠ヤバイだろ! 俺もビビった! ありがとう道山!」
「ユーマくんおつかれさま」と言ってくれたのは成瀬だった。
「成瀬~! わざわざありがとう!」
道山も成瀬も満面の笑みだった。親友のその顔が見れて俺は幸せだった。
台本が完成して、真珠にオーケーを貰って部活に戻った最初の三、四日は正直しんどかった。イビーとも津木エリとも当然ながら微妙な距離感があってギクシャクするところもあった。だけどそこは真珠が締めてくれた。絶対に舞台を成功させるという情熱が凄かった。真珠に感化されるように、俺も、イビーも、津木エリも、みんなも、どんどん稽古に集中していった。舞台本番まで二ヶ月が残っていたのも功を奏した。二ヶ月という期間は意外と長く、あの時のごたごたを忘れさせてくれるには十分だった。真珠には感謝しかなかった。
興奮の余韻に浸りながら、俺たちは舞台の片付け、会場の片付けをして尚高を後にした。帰り道、部員みんなでまとまってバスに乗った。話の中心は主役の真珠だった。今日の真珠の芝居は神がかっていた。真珠であって真珠じゃなかった。あの堂々たる演技、芯から別人になっている真珠。自分で書いた役なのに、自分で想像していたキャラクターからどんどん昇華されていって、その役は真珠になった。自分で書いたもののはずなのに、その役は真珠だった。
真珠も自分が何をしたのか分かっているようだった。それだけの芝居を真珠はやってのけた。こいつは天才なんじゃないかと舞台袖で見ている時に思った。皆が真珠に魅了されていた。真珠はきっと、スターになると思った。
恵乃も姉貴も会場まで来てくれていた。楽屋まで二人は来なかったが姉弟のグループLINEにメッセージをくれた。
『やっぱり兄やんの台本はおもしろいよ! そして真珠さん! 真珠さん凄かった!』
『良いもん見れたわ。おつかれ』
姉妹も喜んでくれているようで、なんだか誇らしかった。
バスを降りて、俺たちは電車に乗り継いだ。途中まで他の部員も同じ方向で一緒にいたが、俺と真珠は一番奥の方の地域から来ているので最終的に二人になった。打ち上げは来週の日曜日にやることになって、今日は解散。打ち上げも楽しみだ。
「真珠、お前ホントにやったな。やりやがったな。来年は本気で全国行けるんじゃねえか」
「行けるんじゃなくて、『行く』のよ」
真珠の言葉にはそれを実現させるだろうと思わせる力強さがあった。
「途中どうなるかと思ったけど、アンタもイビーも佳花も、みんなちゃんと集中してくれて良かったわ」
「そこはホント真珠のお蔭だ。ありがとう」
「私は最高の舞台を創りたかっただけ」
「そうだな。最高の舞台だったな」
「そうね」
俺も真珠も口をマフラーで覆い、イスに深く腰掛けてだらんとして話していた。
「あんなに大きな拍手今までにあったか?」
「多分今までで一番だったわね。みんなよく頑張ってくれた」
「一番頑張ったのは真珠だよ」
「アンタも頑張ってたわよ。ちゃんと反省してたみたいだし。それに、みんなよ。みんな頑張った」
「そうだな」
ガタンガタン。と電車が動く。停車駅に停まり、寒い風と一緒に数名の乗車客が入ってくる。そしてまた、電車はゆっくりと動き出す。俺と真珠はもう少し電車に揺られなければいけない。
「打ち上げどうする?」
「……。」
と、真珠の方を見ると真珠は寝てしまっていた。そりゃ疲れてるよな。と思った。主役で、部長で、俺の事で色々考えさせて、本当に真珠には頭が上がらない。
「おつかれさま」と俺は小声で真珠に言い、念のために降りる駅までの時間を計算して携帯の目覚ましをセットした。
「ただいま~」と暗がりのなか家に着くと、バタバタバタバタとすごい勢いでピンクのモコモコパジャマを来た恵乃が階段を下りてきて「お兄や~ん!」と抱き付いてきた。
「おいやめろっ、俺は疲れてんだ」
「マジちょ~すごかった! 今までで一番良かった!」
「おう。ありがとう恵乃。そして俺は風呂に入りてぇからちょっと離してくれ」
「わたしが流してあげよっか?」
「は?」
「マジで」と恵乃は見詰めてくる。
「きめぇわ。オフッ……」
恵乃のパンチが腹に入った。パンチを放った恵乃は素早く後ろにジャンプした。
「お前……俺がここでそれじゃあ頼むとか言ってもどうせ殴ってんだろ」
「知らないっ! お疲れさまっ。風呂湧いてるよ」と言って恵乃はリビングに消えていった。
「ったく」と俺は靴を脱ぎ、家に上がり、部屋着の灰色スウェットと下着を持ってきて風呂に向かった。疲れた。と、親父と母さんがいない事に気付いた。
「恵乃~。親父と母さんは~?」
「そのままデートしに行った~」
息子の舞台を見てそのままデートに行くとはそれなんぞや。仲良いのは良いんだが。まぁ、いいか。
風呂から上がると恵乃が料理を作ってくれていて、食卓には白色スウェットの姉貴が座っていた。
「おう弟」
「なんだよ」
「今日の舞台良かったよ。アンタこれからも台本とか書くのがいいんじゃない?」
「わかんね」
「そう。真珠ちゃんはどうするとか聞いてる?」
「そうそう真珠さんだよ真珠さん!」と、恵乃が台所から会話に入ってくる。
「あれは圧巻だったね。プロの舞台とか見たことないけど、真珠ちゃんはプロになっても通用するんじゃない?」
「多分、真珠はそうするだろうね。アイツの才能はこんなとこで終わるもんじゃねぇ。俺も今日は本当にびっくりした。あいつはすげぇわ」
「イビーさんも良かったけどね」と、恵乃はカレーライスをお盆に乗せて持ってきてくれた。
「「ありがとう」」と、俺と姉貴はカレーライスを手元に運ぶ。テーブルにはゆで卵とプチトマトが乗ったサラダと三種類のドレッシングが置いてある。
「それでは」と、テーブルに座った恵乃が言う。
「「「いただきます」」」と、それぞれが食事を始める。
「イビーちゃん日本語上手だったね。私たちは後ろの方に座ってたけど日本語でもちゃんと声聞こえたし」
「そうだったよね~」
「イビーは日本語もだいぶ頑張って勉強してたと思う」
「恵乃」
「なぁにねえやん」
「このカレーライス本当においしい~ぞ~」と、姉貴は恵乃の頭をくしゃくしゃにした。
「ははっ、ありがとうねえやん。……ねえやん、ありがとうって言ってるから頭のやめて…………ねぇやん? ……ねえやん殴るよ?」
「ゴメン恵乃ちゃ~ん。恵乃ちゃんが可愛すぎて~」
「知ってる~」
恵乃はにこやかにツインテールの根元を掴んだ。
「テンションたけぇなあんたら」
「恵乃のご飯がおいしくないって言うのかい?」
「んなこた言ってねーだろ」
「でっ、兄やん」
「なんだよ」
「イビーさんどうするの?」
いつか突っ込まれるとは思っていた。
「どうするって、前にも話しただろ。もう一回プロポーズする予定だよ」
「「ういぃ~」「きゃー」」と、姉妹は楽しそうだ。
「うるせぇ」
「イビーちゃんはいつ帰るのよ?」
「二十六日に帰るって」
「そう」
「それじゃあお兄やんはそれまでにもう一回プロポーズするんだ!」
「あぁ。そうすると思う」
「そっかぁ~。頑張ってね。もう前の事はちゃんと仲直り? 出来てるんだよね?」
「俺もイビーも舞台に一生懸命だったからなぁ……。けど、前よりみんな仲良くなって、舞台づくりでの一体感はめっちゃあったからなんとなく大丈夫な感じはするっちゃするんだけど」
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