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第一章 変わり始める日常
第8話 ご満悦な店長
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タンブルウィードはこじんまりとしたお店だが、薬やお茶など独自の配合で住民に人気のお店だ。
「おはようございま~す」
「あれ?ヴィト。今日は早いのだ。そんなに早くわたしに会いたかったのか?」
店の奥からグウェンさんが顔をひょっこりと覗かせる。
タンブルウィードの店長でオレの雇い主だ。
活発な笑顔が可愛らしいが、ちんまりとしたスタイルなので、出ていいところも出ていない。
割とすぐサボるし理想の奥さん……は、まぁ人それぞれだな。
オレより10歳上でエルザさんと同い年のハズだけど……。
「えーそうなんです。夜も眠れませんでした」
「今絶対適当に答えたのだっ!」
バレたけどスルーして、荷物を置きながらグウェンさんにもお告げの事を聞いてみる。
「そういえばグウェンさんも神様のお告げありました?」
「あったのだ! 聞いてほしいのだヴィト!」
目を輝かせてグイグイ迫ってくる。
「どうしたんですか?」
「わたしは錬金術の適正があるそうなのだ! 魔物が来たらその力を使ってみんなを助けて欲しいと言われたのだ!」
身近に適正有りの人がいた!
何の適正があるのか教えてくれるか。
錬金術ということはスキル的に近しい仕事をしてる人は適正があるのかな。
「すごいですね! さすがタンブルウィードの店長ですね!」
「ムフフ~。もっと褒めて良いのだよヴィトくん」
えっへんと胸を張るグウェンさん。
「そんな店長様の元で働けるなんてオレも鼻が高いな~」
「わっはっは。そうだろうそうだろう。な、なんなら結婚してあげてもいいのだ……」
「あ、店長様パン買ってきましたけど食べます?」
「また無視したのだっ!?」
再びスルーしてテーブルにパンを置きコーヒーを入れにいく。
頬を膨らませながらグウェンさんも大人しくイスに座った。
グウェンさんにも砂糖とミルクをたっぷり入れたコーヒーを差し出すと、機嫌を直してクリームパンをムシャムシャ食べ始めた。
「ところでグウェンさんも女の子の天使に話かけられました?」
「そうだぞ。天使といえど背はわたしの方が高かったのだ!」
また胸を張り勝ち誇った顔でグウェンさんが言う。
誰も天使と背くらべをしてないと思う。
「ヴィトはどうだったのだ?」
聞かれると分かっていたが、答えに詰まってしまった。
直ぐに答えられなかったのは、ある懸念があったからだ。
『神様に戦う力を授かったと正直に言って、怖がられないだろうか?』と。
もちろん悪用しようなんて思っていない。
でも、よくよく考えると危険な力だ。
浮かれていたけど、使い方を間違えれば人を傷つけるどころか命を奪ってしまう。
まさについさっき、自分の命を奪いかけた。
神様がくれた力とはいえ、そんな力を持つ奴と今まで通り普通に接してくれるだろうか……。
それが怖くなった。
「ん? ヴィト? どうしたのだ?」
考え込んでいると心配そうな顔をしてグウェンさんが覗き込んできた。
グウェンさんとは7年ほど前に知り合ったが、両親が亡くなった後、オレの事をずっと気にかけてくれている。
学院生の頃もタンブルウィードで雇ってくれて生活費を稼がせてくれた。
多大な恩がある人に怖がられたくない。
でも隠し事も嘘もつきたくない……。
「おはようございま~す」
「あれ?ヴィト。今日は早いのだ。そんなに早くわたしに会いたかったのか?」
店の奥からグウェンさんが顔をひょっこりと覗かせる。
タンブルウィードの店長でオレの雇い主だ。
活発な笑顔が可愛らしいが、ちんまりとしたスタイルなので、出ていいところも出ていない。
割とすぐサボるし理想の奥さん……は、まぁ人それぞれだな。
オレより10歳上でエルザさんと同い年のハズだけど……。
「えーそうなんです。夜も眠れませんでした」
「今絶対適当に答えたのだっ!」
バレたけどスルーして、荷物を置きながらグウェンさんにもお告げの事を聞いてみる。
「そういえばグウェンさんも神様のお告げありました?」
「あったのだ! 聞いてほしいのだヴィト!」
目を輝かせてグイグイ迫ってくる。
「どうしたんですか?」
「わたしは錬金術の適正があるそうなのだ! 魔物が来たらその力を使ってみんなを助けて欲しいと言われたのだ!」
身近に適正有りの人がいた!
何の適正があるのか教えてくれるか。
錬金術ということはスキル的に近しい仕事をしてる人は適正があるのかな。
「すごいですね! さすがタンブルウィードの店長ですね!」
「ムフフ~。もっと褒めて良いのだよヴィトくん」
えっへんと胸を張るグウェンさん。
「そんな店長様の元で働けるなんてオレも鼻が高いな~」
「わっはっは。そうだろうそうだろう。な、なんなら結婚してあげてもいいのだ……」
「あ、店長様パン買ってきましたけど食べます?」
「また無視したのだっ!?」
再びスルーしてテーブルにパンを置きコーヒーを入れにいく。
頬を膨らませながらグウェンさんも大人しくイスに座った。
グウェンさんにも砂糖とミルクをたっぷり入れたコーヒーを差し出すと、機嫌を直してクリームパンをムシャムシャ食べ始めた。
「ところでグウェンさんも女の子の天使に話かけられました?」
「そうだぞ。天使といえど背はわたしの方が高かったのだ!」
また胸を張り勝ち誇った顔でグウェンさんが言う。
誰も天使と背くらべをしてないと思う。
「ヴィトはどうだったのだ?」
聞かれると分かっていたが、答えに詰まってしまった。
直ぐに答えられなかったのは、ある懸念があったからだ。
『神様に戦う力を授かったと正直に言って、怖がられないだろうか?』と。
もちろん悪用しようなんて思っていない。
でも、よくよく考えると危険な力だ。
浮かれていたけど、使い方を間違えれば人を傷つけるどころか命を奪ってしまう。
まさについさっき、自分の命を奪いかけた。
神様がくれた力とはいえ、そんな力を持つ奴と今まで通り普通に接してくれるだろうか……。
それが怖くなった。
「ん? ヴィト? どうしたのだ?」
考え込んでいると心配そうな顔をしてグウェンさんが覗き込んできた。
グウェンさんとは7年ほど前に知り合ったが、両親が亡くなった後、オレの事をずっと気にかけてくれている。
学院生の頃もタンブルウィードで雇ってくれて生活費を稼がせてくれた。
多大な恩がある人に怖がられたくない。
でも隠し事も嘘もつきたくない……。
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