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第一章 変わり始める日常
第14話 魔法のコツはクリームパン
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目の前に広がるのは雲一つない青空と白い大地。
まるで雲の上にいるかのような光景だった。
「えっ? また?」
昨日と同じ場所にいた。
今度は始めから神様が立っていた。
「ヴィトくん。連日ですまんのぅ」
「神様、どうしたんですか?」
「いやな、ヴィトくんにだけスキルのこと教えてなかったなーって思ってな……。テヘッ」
肩をすくめて舌を出す。
『やっぱり忘れてたんかい!』と言いたかったが、やはり神様なので突っ込めない。
「なんだ、よかった。他のみんなは細かく説明を受けていたみたいなのに、自分だけなかったから何か違うのかと思ってました」
「いやいや、ただ単純に忘れていただけじゃ。すまんすまん。ふぉっふぉっふぉっ」
それはそれでどうかと思うが、再びグッと言葉を飲み込む。
口に出さなくても神様には伝わっているはずだ。
「それでオレのスキルはどういったものなんでしょうか?」
「うむ。ヴィトくんには剣術、体術、弓術、隠密術、錬金術などに加え、“模倣”と“魔法創造”というスキルがある」
「“コピー”とクリエイトマジック“?」
「うむ。“模倣”は見たり受けたりした魔法や術をそのまま使えるようになるんじゃ。“魔法創造”の方は自分がイメージした魔法を作り出せるものじゃな」
それでススリーの魔法を真似したり、詠唱が無くても魔法が使えていたのか。
「魔法を作り出せるって、何でも出来るんですか?」
「概ね可能じゃな。ただ、地面がパカッと割れるイメージをしたからといってそうなるものではない。あくまでも魔力を用いて事象を具現化するものじゃから、因果関係や作用がしっかりとしていなければ魔法はできん」
「じゃあ瞬間的に大気を凍らせて、相手が死ぬなんていう魔法は……」
「大気を凍らせることは可能じゃろうが、瞬間的に死ぬという効果まではつけられんのぅ。凍った上で凍死や窒息死を起こさせることは可能かもしれんが、相手次第でもある。魔法だからと言って全てこちらの思うように作用するわけじゃないんじゃ」
確かになんでもこちらの思い通りになるなら、“見た瞬間魔物は死ぬ”なんて魔法を作ればそれで終わっちゃうもんな。
「そういえば詠唱は必要ないんですか? ススリーはなんか唱えてましたけど」
「なくても使うことは可能じゃよ。元々詠唱とは唱えることによってイメージの方向性や内容を固めていくためのものなんじゃ。火の魔法を使うにしても、燃やすのか爆発させるのかでイメージは異なるじゃろ? じゃからまずは詠唱で方向性と内容を形作りながら魔力を練り上げていくんじゃ。そして準備が整ったら、最後に魔法の名称をトリガーとして明確になったイメージを発動させるんじゃよ」
「なるほど……。一口でパンと言っても色々なパンがあるためイメージが定まらない。しかし、クリームパンと言えばより具体的なイメージが出来る……。となると、魔法の名称はパンの種類ということ……。そして魔力はパン粉で詠唱はレシピ……。つまり、自分の中で具体的な工程と完成図が見えていれば、レシピが無くても直接クリームパンを作り出せるッ! そういうことですね!?」
今朝クリームパンを美味しそうにムシャムシャ食べていたグウェンさんが頭に過ぎる。
「う、うむ? 魔法をパンで例えたのはお主が初めてじゃが、そうなのか……? 合っているか分からんが、恐らくそういう事じゃ!」
「なるほど、よくわかりました! 美味しいパンを作れるよう頑張ります!」
「魔法じゃパンは作れんぞ……。ま、わかったなら良しとするか……」
よーし頑張るぞ!!
「あ、そういえばもう1つ聞きたいことがあるんですが」
「なんじゃ?」
「魔法というのは魔物を攻撃するものだけなんですか? 仲間やみんなを守るような魔法ってあるんですか?」
「うむ。もちろんある。補助魔法や結界魔法などがそうじゃな。仲間の身体能力を向上させたり、魔法を弾く結界を張ったりできる。こんな感じじゃ」
そういってオレに次々と補助魔法をかけてくれた。
「“身体能力強化”、”魔力強化”、”移動速度上昇”、” 感覚鋭敏化”、”物理防御力上昇”、”魔法防御力強化”、” 全耐性強化”」
様々な色の光が身体を包み込み、それが染み込んでいくと内側から力が漲るような感覚がしてくる。
「これは凄いですね……! 何でも出来そうな気がしてくる!」
「ふぉっふぉっふぉっ。過信は禁物じゃが、仲間の力も増幅してくれるから便利じゃぞ。それから結界はこのような感じじゃ」
今度は周りの空間に結界を張って見せてくれる。
「“魔法反射結界”、“浄化結界”、“封印結界”、“次元隔離結界”」
見たことのない模様か文字が描かれたガラス板のようなものが、正方形に組み合わさって空間を取り囲んでいたり、ドーム状に空間を覆っていたりしている。
「なんかすごそうなのばかりですね……」
「他にも色々あるが、必要になったらその効果や作用をイメージして“魔法創造”で作ってみるがよいぞ。今使った補助魔法や結界はヴィト君の“模倣”で使用可能となっているじゃろうし、それを基に“魔法創造”で改変することも出来るはずじゃ」
「なるほど! そう考えると”コピー”と”クリエイトマジック”ってすごいですね! ありがとうございます!」
「いや、お礼を言う必要はないんじゃよ。元々ヴィト君に適性があったものじゃからの。ただ、魔法を使う際にはくれぐれも気を付けておくれよ」
「はい。今朝の失敗で身に染みてわかりました。今は使い方も教えて頂きましたし大丈夫だと思います」
「それならよかった。おっとそろそろ時間のようじゃ。ではまたのぅ」
「はい。神様もお元気で」
再び神様の姿が薄れていき、俺の意識も遠のいていった。
「あっしまった! 魔法は使えるがあまり使いすぎると精神力が枯渇して倒れてしまうからキヲツケテ……」
消え始めた瞬間に、また何か言い忘れていたようで神様が慌てて早口で何か言っていたがよく聞き取れなかった。
まぁ大事な事ならまた夢(?)に出てくるでしょう……。
まるで雲の上にいるかのような光景だった。
「えっ? また?」
昨日と同じ場所にいた。
今度は始めから神様が立っていた。
「ヴィトくん。連日ですまんのぅ」
「神様、どうしたんですか?」
「いやな、ヴィトくんにだけスキルのこと教えてなかったなーって思ってな……。テヘッ」
肩をすくめて舌を出す。
『やっぱり忘れてたんかい!』と言いたかったが、やはり神様なので突っ込めない。
「なんだ、よかった。他のみんなは細かく説明を受けていたみたいなのに、自分だけなかったから何か違うのかと思ってました」
「いやいや、ただ単純に忘れていただけじゃ。すまんすまん。ふぉっふぉっふぉっ」
それはそれでどうかと思うが、再びグッと言葉を飲み込む。
口に出さなくても神様には伝わっているはずだ。
「それでオレのスキルはどういったものなんでしょうか?」
「うむ。ヴィトくんには剣術、体術、弓術、隠密術、錬金術などに加え、“模倣”と“魔法創造”というスキルがある」
「“コピー”とクリエイトマジック“?」
「うむ。“模倣”は見たり受けたりした魔法や術をそのまま使えるようになるんじゃ。“魔法創造”の方は自分がイメージした魔法を作り出せるものじゃな」
それでススリーの魔法を真似したり、詠唱が無くても魔法が使えていたのか。
「魔法を作り出せるって、何でも出来るんですか?」
「概ね可能じゃな。ただ、地面がパカッと割れるイメージをしたからといってそうなるものではない。あくまでも魔力を用いて事象を具現化するものじゃから、因果関係や作用がしっかりとしていなければ魔法はできん」
「じゃあ瞬間的に大気を凍らせて、相手が死ぬなんていう魔法は……」
「大気を凍らせることは可能じゃろうが、瞬間的に死ぬという効果まではつけられんのぅ。凍った上で凍死や窒息死を起こさせることは可能かもしれんが、相手次第でもある。魔法だからと言って全てこちらの思うように作用するわけじゃないんじゃ」
確かになんでもこちらの思い通りになるなら、“見た瞬間魔物は死ぬ”なんて魔法を作ればそれで終わっちゃうもんな。
「そういえば詠唱は必要ないんですか? ススリーはなんか唱えてましたけど」
「なくても使うことは可能じゃよ。元々詠唱とは唱えることによってイメージの方向性や内容を固めていくためのものなんじゃ。火の魔法を使うにしても、燃やすのか爆発させるのかでイメージは異なるじゃろ? じゃからまずは詠唱で方向性と内容を形作りながら魔力を練り上げていくんじゃ。そして準備が整ったら、最後に魔法の名称をトリガーとして明確になったイメージを発動させるんじゃよ」
「なるほど……。一口でパンと言っても色々なパンがあるためイメージが定まらない。しかし、クリームパンと言えばより具体的なイメージが出来る……。となると、魔法の名称はパンの種類ということ……。そして魔力はパン粉で詠唱はレシピ……。つまり、自分の中で具体的な工程と完成図が見えていれば、レシピが無くても直接クリームパンを作り出せるッ! そういうことですね!?」
今朝クリームパンを美味しそうにムシャムシャ食べていたグウェンさんが頭に過ぎる。
「う、うむ? 魔法をパンで例えたのはお主が初めてじゃが、そうなのか……? 合っているか分からんが、恐らくそういう事じゃ!」
「なるほど、よくわかりました! 美味しいパンを作れるよう頑張ります!」
「魔法じゃパンは作れんぞ……。ま、わかったなら良しとするか……」
よーし頑張るぞ!!
「あ、そういえばもう1つ聞きたいことがあるんですが」
「なんじゃ?」
「魔法というのは魔物を攻撃するものだけなんですか? 仲間やみんなを守るような魔法ってあるんですか?」
「うむ。もちろんある。補助魔法や結界魔法などがそうじゃな。仲間の身体能力を向上させたり、魔法を弾く結界を張ったりできる。こんな感じじゃ」
そういってオレに次々と補助魔法をかけてくれた。
「“身体能力強化”、”魔力強化”、”移動速度上昇”、” 感覚鋭敏化”、”物理防御力上昇”、”魔法防御力強化”、” 全耐性強化”」
様々な色の光が身体を包み込み、それが染み込んでいくと内側から力が漲るような感覚がしてくる。
「これは凄いですね……! 何でも出来そうな気がしてくる!」
「ふぉっふぉっふぉっ。過信は禁物じゃが、仲間の力も増幅してくれるから便利じゃぞ。それから結界はこのような感じじゃ」
今度は周りの空間に結界を張って見せてくれる。
「“魔法反射結界”、“浄化結界”、“封印結界”、“次元隔離結界”」
見たことのない模様か文字が描かれたガラス板のようなものが、正方形に組み合わさって空間を取り囲んでいたり、ドーム状に空間を覆っていたりしている。
「なんかすごそうなのばかりですね……」
「他にも色々あるが、必要になったらその効果や作用をイメージして“魔法創造”で作ってみるがよいぞ。今使った補助魔法や結界はヴィト君の“模倣”で使用可能となっているじゃろうし、それを基に“魔法創造”で改変することも出来るはずじゃ」
「なるほど! そう考えると”コピー”と”クリエイトマジック”ってすごいですね! ありがとうございます!」
「いや、お礼を言う必要はないんじゃよ。元々ヴィト君に適性があったものじゃからの。ただ、魔法を使う際にはくれぐれも気を付けておくれよ」
「はい。今朝の失敗で身に染みてわかりました。今は使い方も教えて頂きましたし大丈夫だと思います」
「それならよかった。おっとそろそろ時間のようじゃ。ではまたのぅ」
「はい。神様もお元気で」
再び神様の姿が薄れていき、俺の意識も遠のいていった。
「あっしまった! 魔法は使えるがあまり使いすぎると精神力が枯渇して倒れてしまうからキヲツケテ……」
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