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16:感動の再開
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ロングの黒髪はサラッサラで、いい匂いがした。
だけど、ところどころ毛が跳ねてるのがもったいない。黄色いドレスがとても似合っているからこそだ。小さい頃から、身だしなみは彼女の一番気にしているところでもあったと思うが……。
「へ、へ、へっくしょい!」
抱き着く彼女の、跳ねた毛が鼻をくすぐるものだから、たまらずくしゃみ。
王女の護衛騎士様に間違っても俺の唾なんて飛ばせないから、即座に彼女を引きはがして、なんとか顔を横に向けてそれを回避した。
「ダイアお兄様、大丈夫ですか? お風邪でも引かれましたか?」
「いや、ごめん。何でもない。ナージャの髪の毛がちょっとくすぐったくて……」
何の気なしに素直に言うと、途端にナージャの顔が赤くなる。
それから慌てて手櫛で整髪を試みていた。
「やだっ、ご、ごめんなさいお兄様! お兄様に早く会いたくて、私としたことが、手入れを疎かにしてしまいました……うう、恥ずかしい……」
真っ赤な顔を両手で押さえて、なんとも可愛らしい。
恥ずかしがり屋のしぐさも、六年前と全然変わらないんだな。
「気にすんなって」
「もう! お兄様ったら、私がどんな気持ちで……!」
笑ってはげますと、今度は膨れて」、かわいい顔で睨んできた。
だけども、その目には、たちまち涙が浮かび上がり……。
「生きて……生きてらっしゃるなら……! どうして手紙の一つも……いただけなかったのですか……? 私は、もう、てっきり……!」
「でしょ!? でしょ!? やっぱりナージャもそう思うよね!? 本当にヒドイ男だよ! ダイアお兄ちゃんは!」
ポロポロと涙を流すナージャに同意したのは、村で一度同じやり取りをしたアナだ。
赤毛のツインテールがピコピコと怒りに震えている。再燃すな。
「あ……ルイジアナ? あなたもここにいらしたのですか?」
「今気づいたの!? ナージャもひっどーい!」
そんなやり取りの後、きゃっきゃきゃっきゃと女二人で楽しそうに、この場で女子会でも開きそうな勢いだ。
すまんが、それは後にしてくれるとありがたい。
今はとりあえず、目の前の厄介ごとを一つ、片づけておきたいものでね。
「あー、ナージャ。連絡がなかったのはすまなかった。だが積もる話は後にして、この場を収めてくれるとくれるとすげぇ助かる。えーと、まずラルフ君だが……」
「お兄様、わかっております。迎えの者に、ある程度の話を聞かせてもらいましたので。では……ラルフッ! こっちに来なさいッ!」
「ひっ! ひゃいっ!」
ナージャの一喝で、なんとラルフは、文句も言わずに忠犬のように従った。
悲鳴のような返事だけは気になるが……?
この二人……さては何かあったな?
「ラルフ。また、あなたね。……また、あなたがやってしまったのね?」
「あ、いや……ナ、ナージャ? 一旦落ち着こうじゃないか。そ、そうだ。俺の部屋で……コーヒーでも……」
「いらないわ。私があなたに願うのは一つだけよ……消えなさい。今すぐ、この場から」
空気が凍り付いてしまっている……。ナージャが放つ威圧によって、この場の誰もが動くことなどできないでいた。
消えろと言われたラルフ君だって、ナージャの威圧を間近で受けているものだから、歯を打ち鳴らし、瞬きすらできない精神状況だった。
「私は今、お兄様に会えて、とても良い気分なの。だからもし、今いなくなってくれるなら、今だけ特別に『あの約束』は反故にしてあげてもいいわ。ね? 素敵でしょう?」
「あ、あ……あう」
あの約束。というのも気になるが、今はどうにも、ラルフ君の異様な怯えっぷりの方が気になる。
ナージャのような美人にあんな近くで、囁くように話をされて、トキメキ以外の感情に陥るなんて……。彼とナージャの間には、ただならぬ確執があるようだ。怖くて聞けないけど。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
このままじゃ、ナージャのやつ、ラルフ君に何をするかわかったもんじゃない雰囲気だぞ。
ナージャに仲裁を頼んでおいてあれだが、ここは俺が間に入って、ナージャがひとまず手出しできないようにしたほうが良さそうだ。
—―そう思っって一歩踏み出した瞬間。
ラルフ君の前に、俺よりも早く割って入った人物がいた。
ギャル――!
「本当にごめんなさい! うちのご主人がご迷惑をおかけしたんですケド! バチクソ謝るんで今回はマジ堪忍してください!」
おお、ナイスだぞギャル! 彼女の乱入で、ナージャも怒りの矛先がどこを向けばいいのかわからなくなっている!
「よ、よし! よく来たラビッツ! た、助けろ! 俺をナージャから助け出せぇ! 早くしろ! こんな時のために父上はお前を雇ってるんだぞ! 俺の身代わ――うぎゃっ!?」
「うぜぇ!」
そして、ラルフ君のゴミカスな発言を、ギャルは『ライトニングダガー』で一刀両断。バチバチバチ!っとラルフ君に電流走り、彼は呆気なく気絶した。
「いやほんと、ごめんなさい! とりまうちらはすぐに退散するんで! お気遣いなく! じゃ!」
そんなラルフ君を、ギャルは引きずって、工房から出ていくのだった。
ぽかんと一同は二人を見送って、まるで嵐が過ぎたような静寂が訪れる。ギャル一人で大丈夫か?と心配になるが、今俺があいつらの側に行くのは違うな。うん。
……それじゃあ、改めて。
感動の再開としますか?
だけど、ところどころ毛が跳ねてるのがもったいない。黄色いドレスがとても似合っているからこそだ。小さい頃から、身だしなみは彼女の一番気にしているところでもあったと思うが……。
「へ、へ、へっくしょい!」
抱き着く彼女の、跳ねた毛が鼻をくすぐるものだから、たまらずくしゃみ。
王女の護衛騎士様に間違っても俺の唾なんて飛ばせないから、即座に彼女を引きはがして、なんとか顔を横に向けてそれを回避した。
「ダイアお兄様、大丈夫ですか? お風邪でも引かれましたか?」
「いや、ごめん。何でもない。ナージャの髪の毛がちょっとくすぐったくて……」
何の気なしに素直に言うと、途端にナージャの顔が赤くなる。
それから慌てて手櫛で整髪を試みていた。
「やだっ、ご、ごめんなさいお兄様! お兄様に早く会いたくて、私としたことが、手入れを疎かにしてしまいました……うう、恥ずかしい……」
真っ赤な顔を両手で押さえて、なんとも可愛らしい。
恥ずかしがり屋のしぐさも、六年前と全然変わらないんだな。
「気にすんなって」
「もう! お兄様ったら、私がどんな気持ちで……!」
笑ってはげますと、今度は膨れて」、かわいい顔で睨んできた。
だけども、その目には、たちまち涙が浮かび上がり……。
「生きて……生きてらっしゃるなら……! どうして手紙の一つも……いただけなかったのですか……? 私は、もう、てっきり……!」
「でしょ!? でしょ!? やっぱりナージャもそう思うよね!? 本当にヒドイ男だよ! ダイアお兄ちゃんは!」
ポロポロと涙を流すナージャに同意したのは、村で一度同じやり取りをしたアナだ。
赤毛のツインテールがピコピコと怒りに震えている。再燃すな。
「あ……ルイジアナ? あなたもここにいらしたのですか?」
「今気づいたの!? ナージャもひっどーい!」
そんなやり取りの後、きゃっきゃきゃっきゃと女二人で楽しそうに、この場で女子会でも開きそうな勢いだ。
すまんが、それは後にしてくれるとありがたい。
今はとりあえず、目の前の厄介ごとを一つ、片づけておきたいものでね。
「あー、ナージャ。連絡がなかったのはすまなかった。だが積もる話は後にして、この場を収めてくれるとくれるとすげぇ助かる。えーと、まずラルフ君だが……」
「お兄様、わかっております。迎えの者に、ある程度の話を聞かせてもらいましたので。では……ラルフッ! こっちに来なさいッ!」
「ひっ! ひゃいっ!」
ナージャの一喝で、なんとラルフは、文句も言わずに忠犬のように従った。
悲鳴のような返事だけは気になるが……?
この二人……さては何かあったな?
「ラルフ。また、あなたね。……また、あなたがやってしまったのね?」
「あ、いや……ナ、ナージャ? 一旦落ち着こうじゃないか。そ、そうだ。俺の部屋で……コーヒーでも……」
「いらないわ。私があなたに願うのは一つだけよ……消えなさい。今すぐ、この場から」
空気が凍り付いてしまっている……。ナージャが放つ威圧によって、この場の誰もが動くことなどできないでいた。
消えろと言われたラルフ君だって、ナージャの威圧を間近で受けているものだから、歯を打ち鳴らし、瞬きすらできない精神状況だった。
「私は今、お兄様に会えて、とても良い気分なの。だからもし、今いなくなってくれるなら、今だけ特別に『あの約束』は反故にしてあげてもいいわ。ね? 素敵でしょう?」
「あ、あ……あう」
あの約束。というのも気になるが、今はどうにも、ラルフ君の異様な怯えっぷりの方が気になる。
ナージャのような美人にあんな近くで、囁くように話をされて、トキメキ以外の感情に陥るなんて……。彼とナージャの間には、ただならぬ確執があるようだ。怖くて聞けないけど。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
このままじゃ、ナージャのやつ、ラルフ君に何をするかわかったもんじゃない雰囲気だぞ。
ナージャに仲裁を頼んでおいてあれだが、ここは俺が間に入って、ナージャがひとまず手出しできないようにしたほうが良さそうだ。
—―そう思っって一歩踏み出した瞬間。
ラルフ君の前に、俺よりも早く割って入った人物がいた。
ギャル――!
「本当にごめんなさい! うちのご主人がご迷惑をおかけしたんですケド! バチクソ謝るんで今回はマジ堪忍してください!」
おお、ナイスだぞギャル! 彼女の乱入で、ナージャも怒りの矛先がどこを向けばいいのかわからなくなっている!
「よ、よし! よく来たラビッツ! た、助けろ! 俺をナージャから助け出せぇ! 早くしろ! こんな時のために父上はお前を雇ってるんだぞ! 俺の身代わ――うぎゃっ!?」
「うぜぇ!」
そして、ラルフ君のゴミカスな発言を、ギャルは『ライトニングダガー』で一刀両断。バチバチバチ!っとラルフ君に電流走り、彼は呆気なく気絶した。
「いやほんと、ごめんなさい! とりまうちらはすぐに退散するんで! お気遣いなく! じゃ!」
そんなラルフ君を、ギャルは引きずって、工房から出ていくのだった。
ぽかんと一同は二人を見送って、まるで嵐が過ぎたような静寂が訪れる。ギャル一人で大丈夫か?と心配になるが、今俺があいつらの側に行くのは違うな。うん。
……それじゃあ、改めて。
感動の再開としますか?
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