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18:人選ミス……?
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「ダイアお兄様には、王都へ来ていただきます。それがウェーククイナ第三王女のご意志です。そもそも、お兄様の本来の目的地も王都でした。もはや憲兵団側は口出しできる立場にないと思いますが」
ナージャは強気な姿勢で牽制する。というか正当性しかないわけだが、これにラーシアがどう反論するのかむしろ気になってくる。
対して、さっきまで気絶していたとは思えないほど余裕な表情を浮かべるラーシア。自信満々だ。
ちなみに俺は一言も、この憲兵団で働くなんて言った覚えはない。
……まあ、魅力的な話なのは確かだが……。
アナの提案で、王都で錬金術師として旗を上げるのも一興だと考えていたが、こっちの方がより堅実的なのだ。城塞都市トランはゲンツー王国における三大都市の一つでもあるし、村も近い(徒歩で片道一週間)ので、いろいろと利便性は高い。
ただ……。つまり、あれだろ?
ラルフ君と一緒に働けってことだろ?
……それは、嫌だなあ。
「東の国境を守るこの城塞都市トランの憲兵団は、治安維持の要です。また、隣国とのいざこざがあれば、真っ先に駆けつける存在でもあります。その代わり、時には領主と同等の決断権を持ち得ます。例えば、現場での緊急判断。それと領地防衛の判断ですね」
「なるほど。領地防衛力強化の名目で、お兄様を憲兵団に引き入れたいのはわかりました。ですが、王都に行くのまで阻止される筋合いはないでしょう」
ナージャの言う通り、俺のチート能力を評価してくれるのは嬉しいが、急ぐ話でもないだろう。
まあ、王女様に会いたいかと言われれば……興味本位半分。気を使いたくないから遠慮したいが半分。ってところだな。
ただ、アナとまだ旅を続けていたいという思いがある。ナージャも俺を慕ってくれているし、三人で、ゆったりと、ロバの足に合わせて進むのだ。
道中、彼女の武勇伝を聞くイベントも楽しみである。モンスターや野盗なんかに襲われでもすれば、それらとの戦闘で、彼女たちの実力を目の当たりにできるし、この旅はまぎれもなく充実したものと言えるだろう。
ナージャも、用事を済ませたわけだから、護衛騎士の職務に戻らなければならず、それほど長くはここに滞在できない。
明日にでも出立するとのことなので、俺もそれに同行する気まんまんなのだ。
本来、憲兵団への配属要請なんて願ってもない話ではあるが……。
ぶっちゃけ俺は、チートに目覚めた俺自身の可能性を、もっと自由に模索したいとも思い始めていた。
冒険者とか、憲兵団とか、それらに縛られないで、一度自由に、思うままに錬金術を行使してみたい。
だからラーシア。すまん。
俺のことは諦めて、まだしばらくはラルフ君で我慢してくれ。
「そうですね。……込み入った話がありますので、私の部屋に来てください」
神妙な面持ちでそれだけを言い、ラーシアは歩き出した。
俺もナージャも、気になるので、彼女についていくことにした。
彼女の部屋に案内されると、コーヒーでもてなされた。ミルクも添えて……。
カフェラテにして一口すすると、ラーシアが真意を語る。
「……現在、憲兵団は未知の敵対勢力に脅かされております。ナージャ様が来られたというのに、私以外の隊長各位がが挨拶はおろか姿さえ現さないのは、重傷を負い、基地内病棟にて治療中だからなのです」
「……なんですって?」
ラーシアが放った一言で、状況が一変する。
隊長各位が全滅!? なんだそれ、流石に嘘だろ……? 脈絡がなさすぎる。これまで一週間、普通のように過ごしてきたじゃないか。
俺を引き留めるための口から出まかせなら、さすがに性格が悪い。
……だが俺は、ラーシアという人物をこの一週間見てきた。彼女の人となりは知っているつもりだ。
少なくとも、小学生がつくような下手なウソは言わない人だ。
何より、ナージャの方が彼女を知っている。そんなナージャが、本気で驚いて、今の話を疑いもせず信じているのだ。彼女の言うことはつまり、事実と捉えて間違いない。
でもなぜ今更そんなことを言うのか……。
その答えをラーシアは続ける。
「現在、私を除く第一隊長から第十三隊長までが、完全に無作為だろうと思われる順番で襲撃されています。私が最後に残ったのも、たまたま、最後に襲撃するプランだったのか、私だけ襲うタイミングがなかっただけなのかはわかりませんが……。もちろん、このことは私と団長以外には知らされておりません」
「団長……そういえば、まだお目にかかったことはないが……まさか?」
団長も襲撃に……?
聞けば、確かに団長も未知の敵対勢力なる存在と遭遇したことがあるようだが、それはたまたま、第一隊長の襲撃に居合わせただけというもので、団長自体は襲われていないということらしい。
「ですが、団長はひどく怯えておりまして……現在、基地内のどこかに潜伏しておりまして、私も正確な居場所を把握してはいないのです。指揮官としては非常に優秀な方なのですが……はあ」
愚痴とため息をこぼし、しかしラーシアはすぐに咳払いをして、切り替えた。
「失礼しました。そこで、こんな形ですが……どうか、ダイア様の力をお貸しください。通常の武器を【神器】に【アップデート】できるというその神のスキル……しかと拝見しました。そのお力で、我ら憲兵団を救って頂きたい」
いや、それって……。
ナージャに頼めば……?
ナージャは強気な姿勢で牽制する。というか正当性しかないわけだが、これにラーシアがどう反論するのかむしろ気になってくる。
対して、さっきまで気絶していたとは思えないほど余裕な表情を浮かべるラーシア。自信満々だ。
ちなみに俺は一言も、この憲兵団で働くなんて言った覚えはない。
……まあ、魅力的な話なのは確かだが……。
アナの提案で、王都で錬金術師として旗を上げるのも一興だと考えていたが、こっちの方がより堅実的なのだ。城塞都市トランはゲンツー王国における三大都市の一つでもあるし、村も近い(徒歩で片道一週間)ので、いろいろと利便性は高い。
ただ……。つまり、あれだろ?
ラルフ君と一緒に働けってことだろ?
……それは、嫌だなあ。
「東の国境を守るこの城塞都市トランの憲兵団は、治安維持の要です。また、隣国とのいざこざがあれば、真っ先に駆けつける存在でもあります。その代わり、時には領主と同等の決断権を持ち得ます。例えば、現場での緊急判断。それと領地防衛の判断ですね」
「なるほど。領地防衛力強化の名目で、お兄様を憲兵団に引き入れたいのはわかりました。ですが、王都に行くのまで阻止される筋合いはないでしょう」
ナージャの言う通り、俺のチート能力を評価してくれるのは嬉しいが、急ぐ話でもないだろう。
まあ、王女様に会いたいかと言われれば……興味本位半分。気を使いたくないから遠慮したいが半分。ってところだな。
ただ、アナとまだ旅を続けていたいという思いがある。ナージャも俺を慕ってくれているし、三人で、ゆったりと、ロバの足に合わせて進むのだ。
道中、彼女の武勇伝を聞くイベントも楽しみである。モンスターや野盗なんかに襲われでもすれば、それらとの戦闘で、彼女たちの実力を目の当たりにできるし、この旅はまぎれもなく充実したものと言えるだろう。
ナージャも、用事を済ませたわけだから、護衛騎士の職務に戻らなければならず、それほど長くはここに滞在できない。
明日にでも出立するとのことなので、俺もそれに同行する気まんまんなのだ。
本来、憲兵団への配属要請なんて願ってもない話ではあるが……。
ぶっちゃけ俺は、チートに目覚めた俺自身の可能性を、もっと自由に模索したいとも思い始めていた。
冒険者とか、憲兵団とか、それらに縛られないで、一度自由に、思うままに錬金術を行使してみたい。
だからラーシア。すまん。
俺のことは諦めて、まだしばらくはラルフ君で我慢してくれ。
「そうですね。……込み入った話がありますので、私の部屋に来てください」
神妙な面持ちでそれだけを言い、ラーシアは歩き出した。
俺もナージャも、気になるので、彼女についていくことにした。
彼女の部屋に案内されると、コーヒーでもてなされた。ミルクも添えて……。
カフェラテにして一口すすると、ラーシアが真意を語る。
「……現在、憲兵団は未知の敵対勢力に脅かされております。ナージャ様が来られたというのに、私以外の隊長各位がが挨拶はおろか姿さえ現さないのは、重傷を負い、基地内病棟にて治療中だからなのです」
「……なんですって?」
ラーシアが放った一言で、状況が一変する。
隊長各位が全滅!? なんだそれ、流石に嘘だろ……? 脈絡がなさすぎる。これまで一週間、普通のように過ごしてきたじゃないか。
俺を引き留めるための口から出まかせなら、さすがに性格が悪い。
……だが俺は、ラーシアという人物をこの一週間見てきた。彼女の人となりは知っているつもりだ。
少なくとも、小学生がつくような下手なウソは言わない人だ。
何より、ナージャの方が彼女を知っている。そんなナージャが、本気で驚いて、今の話を疑いもせず信じているのだ。彼女の言うことはつまり、事実と捉えて間違いない。
でもなぜ今更そんなことを言うのか……。
その答えをラーシアは続ける。
「現在、私を除く第一隊長から第十三隊長までが、完全に無作為だろうと思われる順番で襲撃されています。私が最後に残ったのも、たまたま、最後に襲撃するプランだったのか、私だけ襲うタイミングがなかっただけなのかはわかりませんが……。もちろん、このことは私と団長以外には知らされておりません」
「団長……そういえば、まだお目にかかったことはないが……まさか?」
団長も襲撃に……?
聞けば、確かに団長も未知の敵対勢力なる存在と遭遇したことがあるようだが、それはたまたま、第一隊長の襲撃に居合わせただけというもので、団長自体は襲われていないということらしい。
「ですが、団長はひどく怯えておりまして……現在、基地内のどこかに潜伏しておりまして、私も正確な居場所を把握してはいないのです。指揮官としては非常に優秀な方なのですが……はあ」
愚痴とため息をこぼし、しかしラーシアはすぐに咳払いをして、切り替えた。
「失礼しました。そこで、こんな形ですが……どうか、ダイア様の力をお貸しください。通常の武器を【神器】に【アップデート】できるというその神のスキル……しかと拝見しました。そのお力で、我ら憲兵団を救って頂きたい」
いや、それって……。
ナージャに頼めば……?
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