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瑠衣の好きな人は
しおりを挟む「瑠衣……」
翔の傍にいる瑠衣の周りには人が集まっていた。
特に男子が。
やはり見た目も愛嬌も良い瑠衣は人気なんだなと実感させられる。
「瑠衣ちゃんって可愛いね~」
「クラスどこ?」
などなど質問攻めに合っていた。
それにひとつ1つ答えていく瑠衣。
この光景は転校初日を思い出される。
「好きな人いる~?」
「いるよ~、翔先輩っ」
この答えでその場が凍りつく。
瑠衣が翔の腕に抱きつく。
咄嗟の出来事で翔が驚きながらも、やんわりと振りほどく。
男子の嫉妬の視線が翔に向けられる。
「俺、付き合っている人いるから」
またもやその場が凍る。
その事実に瑠衣も目を見開く。
俺から彼女はいないと聞いたからだろう。
彼氏がいるとは言えなかった。
「そうなんだ~。誰?」
瑠衣だけではなく、傍の女子たちも耳を立てているのだろう。
教室がしんと静かになる。
「恥ずかしいから言えない」
その言葉と表情に撃ち抜かれた女子や好意を寄せていた女子が机に平伏したり、顔を覆ったりしていた。
だが、男子はそれで納得しない。
それから、瑠衣も。
「え~、ずるいなぁ」
「そうだよ!答えろよ」
「はやく、はやく」
「気になるじゃんかー!」
瑠衣の一言と男子の悪のりが重なり、クラスが騒がしくなる。
翔顔にあんま出てないけど困ってんじゃん。
あ~もう!
「…………俺です、翔の彼氏は」
翔を含めた上級生たちと瑠衣の目が突き刺さる。
うわあああ!
恥ずかしさより気まずさがやばい。
「もう、そんな冗談やめてよね~」
瑠衣の一言でその場に笑いが起きる。
そうだよな、そうだよねーと皆、同感の意を口にする。
勇気出したのに信じられてないし……。
ほっとした反面少しがっかりしたような気分。
翔の表情はというと暗い。
俺が彼氏って言ったのそんなに嫌だったのかって程に。
「冗談じゃ」
反論の言葉を口にしようとした。
皆に認められたいって訳じゃないけど、隠れて付き合うのってなんか嫌。
悪いことなんてしてないのにさ。
「恋。冗談は程々にして、授業に行かないと。今からじゃないと間に合わないでしょ」
確かに、確かにそうだけど!
明らかに俺の声に被せてきた。
翔は俺と付き合うのがそんなに嫌で恥ずかしいわけ?
「言われなくとも行くし!」
「私も行こ~と」
瑠衣が後ろから付いてくる。
教室が同じだから仕方ないけど、いつもより一緒にいるのが気まずい。
2人きりになると可愛い声は何処へやら、ドスの効いた声で話しかけられる。
「ねえ、なんで翔先輩と付き合ってるのが自分だって言ったわけ?まあ、事実なんだろうけど、秘密にしとくべきでしょ。話し合わなかったの。はぁ。翔先輩も翔先輩でなんで付き合っている人がいるって言っちゃったかな~、頭いいのに馬鹿なの。皆知りたがるに決まってんじゃん」
え?は?
悪口とも助言とも取れる瑠衣の言い草に驚く。
「……なんで付き合ってること……!」
「何となく雰囲気で分かるし、ダダ漏れ。それから翔先輩は好きじゃない。あんな優男タイプじゃないし~。凛のライバルを見ときたかっただけ。私は凛の方が断然いいと思うけどね!」
情報が……。
つまり、瑠衣は翔のことを何とも思ってない。
恋愛感情がなかったって言うのは喜ばしいことだけど、俺達のこと引っ掻き回していただけだよね。
やっぱり、俺が凛を振ったからだろうか。
「もういいだろ」
階段をおりた先に凛が立っていた。
「え~楽しかったんだけどなあ」
「これ以上恋にちょっかい出すなよ」
凛は珍しく怒っていた。
怒るとこを見るのは初めてで怖いと思ってしまった。
それに対しビビることのない瑠衣。
「う~ん、そこまで言うなら。凛のことは大好きだし~」
「悪いけど、お前の好きは軽くて信じられないわ」
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