12 / 38
第1部
6 | 憂鬱な魔術師 - セルシウス②
しおりを挟む
ベルスタは私の舌を遠慮がちに吸っていたが、控えめだったのははじめだけだった。
しだいに吐息が混じり、舌が唾液をからめとるように乱れじゅるっと音を立てる。そうなると、魔力云々ではなく生理的に誘われている気分になった。
じりじりと理性が焼かれていくような気がする。これ以上はよろしくない。
私はかろうじて残っている理性で、「…もう、いいだろう」と体を離した。
「申し訳ありません…夢中に、なってしまって」
「中和されたか?」
ベルスタは困ったように、「中和されたというのはどうわかるのですか」と聞いてきた。
自分の魔力の加減くらいわかるだろう、と思ったが言えなかった。ベルスタの魔力は発現していないし、そうなると自分の魔力がどうなっているかなどわかるわけがないのだ。
「魔力の察知はできないんだよな、失念していた。私が見る限りリリスの魔力はだいぶ消えているが、体の調子はどうだ?」
「そうですか…では、はい。もう十分です」
「なんだ、歯切れが悪いな」
「恥ずかしながら、こういうことを積極的にしてこなかったもので、どこまでが魔力のせいで、どこまでが自分の欲求なのかわからず…すみません」
なんともいえない色香に戸惑う。
「謝る必要はない。リリスの魔力は弱まっているが…それで済むものではないのかもしれない」
魔力が消えればおさまるとリリスは言わなかった。「体の調子はどうだ?」と、もう一度聞いてみる。
「うまく、言えないのですが…体の奥が膿んでむず痒いというか…」
「男との経験は?」
ベルスタはぎょっとした顔をして、「ありません」と言う。
「驚くことはないだろう、私が来なければ先程の男としていたんじゃないのか」
「あれはリリスのせいです」
「いまのこの状況もリリスのせいだと、割り切れるか」
「はい」とベルスタが言うのと、私が再びくちびるを寄せたのとどちらが早かったのか。
もう理性が止める必要もない。口づけを交わしながら、ベルスタの体をベッドへ倒した。
浮ついた気分で衣服を脱がす。均整のとれた肉体の、左腕が途中から失われていることに今さら気づく。
私の視線に気づいたのか、「お見苦しいものを」とベルスタが恥じるように言う。しまったと思う。
「違う…」
言葉が見つからない。
私は、その腕を元に戻す魔術を知っている。しかし安易に魔術を使うことは控えなければならない。というさもそれらしい言い訳の裏で、左腕が戻ればベルスタは羊飼いを辞めるかもしれないと考えていた。
「…違うんだ」
謝罪のつもりで左腕にも口づけをする。
「見苦しくなどない。立派な働き者の羊飼いの体だ」
潤んだ瞳に見つめられれば欲情を煽られる。私までもリリスの魔力に当てられているのだろうか。
ベルスタの中心で苦しそうに張り詰めているものをそろりと握った。
「全て、リリスの魔力のせいだ」
それは自分のための言い訳でもあったかもしれない。ベルスタのものと自分のものを手の内で擦り合わせて腰を揺らす。
息づかいがみだらに途切れる。先をいじるとベルスタはいとも簡単に達した。
私が体を離すと、「まだ、奥が…」と縋るように言われる。
「これで終わると思っているのか」
くちびるを合わせる。
「ここからが本番だぞ」
口づけにもうぎこちなさはない。じっくりと互いを確かめるように舌を絡め、吐息を食む。
汗がにじむ肌を撫で、ベルスタの脇に寝そべる。背後から耳たぶを甘噛みし、うなじに吸いつきながら引き締まった肉体をさする。
「…なにをされるかわかっているんだよな」
「大丈夫です」
なにが大丈夫なのか。
「辛かったら言えよ」
窄まりに指を這わせる。ほぐすようにふにふにと指を押しつけ少しずつ奥を開いていく。
ベルスタの肩が震えているが、それが痛みからではないことは、垂れはじめた先走りでわかる。
「声、出していいぞ」
「…いえ」
「聞きたいんだ、聞かせてくれ」
一本だった指を二本に増やし強めに中を擦ると、「ぅあ」と声がもれた。
「辛いのか気持ちいいのかどちらかわからないな」
答えを期待していたわけではなかったが、「どちらもです」と返事があった。
「もどかしくて辛いのですが、気持ちよくもあります」
「もどかしいか」
思わず笑っている自分がいた。なんと律儀な報告なのか。どちらにしても良いってことだよな。
まだ窄まりはきつそうではあるが、ねだられたようなものなので自分のものを押しあててみる。
「お前が言う奥とやらに届くといいんだが」
ベルスタが息をのむのがわかった。わずかな反応を逃したくなくて、味わうように少しずつ体を繋げた。深く、深く。
そういえば、もうリリスの魔力は感じない。ベルスタを背後から抱きしめる。首筋に鼻を擦りつけて自分の魔力に混じるベルスタの匂いをかいだ。
もし、このままベルスタの中へ吐き出せば、そこに含まれている魔力もこの羊飼いの中に残るだろう。
「…動くぞ」
体に負担をかけないようにゆっくりと腰を動かす。かすかにベルスタが声をもらす。
「ッはァ…もっと…」
こうして交わってしまえばベスルタの内の熱はおさまる。人助けの延長線上の、なにか。割り切れるかと聞いたのは自分なのに。
「急かしてくれるな」
行為を終えてしまうのが惜しくて、切羽詰まった欲望をなだめた。
しだいに吐息が混じり、舌が唾液をからめとるように乱れじゅるっと音を立てる。そうなると、魔力云々ではなく生理的に誘われている気分になった。
じりじりと理性が焼かれていくような気がする。これ以上はよろしくない。
私はかろうじて残っている理性で、「…もう、いいだろう」と体を離した。
「申し訳ありません…夢中に、なってしまって」
「中和されたか?」
ベルスタは困ったように、「中和されたというのはどうわかるのですか」と聞いてきた。
自分の魔力の加減くらいわかるだろう、と思ったが言えなかった。ベルスタの魔力は発現していないし、そうなると自分の魔力がどうなっているかなどわかるわけがないのだ。
「魔力の察知はできないんだよな、失念していた。私が見る限りリリスの魔力はだいぶ消えているが、体の調子はどうだ?」
「そうですか…では、はい。もう十分です」
「なんだ、歯切れが悪いな」
「恥ずかしながら、こういうことを積極的にしてこなかったもので、どこまでが魔力のせいで、どこまでが自分の欲求なのかわからず…すみません」
なんともいえない色香に戸惑う。
「謝る必要はない。リリスの魔力は弱まっているが…それで済むものではないのかもしれない」
魔力が消えればおさまるとリリスは言わなかった。「体の調子はどうだ?」と、もう一度聞いてみる。
「うまく、言えないのですが…体の奥が膿んでむず痒いというか…」
「男との経験は?」
ベルスタはぎょっとした顔をして、「ありません」と言う。
「驚くことはないだろう、私が来なければ先程の男としていたんじゃないのか」
「あれはリリスのせいです」
「いまのこの状況もリリスのせいだと、割り切れるか」
「はい」とベルスタが言うのと、私が再びくちびるを寄せたのとどちらが早かったのか。
もう理性が止める必要もない。口づけを交わしながら、ベルスタの体をベッドへ倒した。
浮ついた気分で衣服を脱がす。均整のとれた肉体の、左腕が途中から失われていることに今さら気づく。
私の視線に気づいたのか、「お見苦しいものを」とベルスタが恥じるように言う。しまったと思う。
「違う…」
言葉が見つからない。
私は、その腕を元に戻す魔術を知っている。しかし安易に魔術を使うことは控えなければならない。というさもそれらしい言い訳の裏で、左腕が戻ればベルスタは羊飼いを辞めるかもしれないと考えていた。
「…違うんだ」
謝罪のつもりで左腕にも口づけをする。
「見苦しくなどない。立派な働き者の羊飼いの体だ」
潤んだ瞳に見つめられれば欲情を煽られる。私までもリリスの魔力に当てられているのだろうか。
ベルスタの中心で苦しそうに張り詰めているものをそろりと握った。
「全て、リリスの魔力のせいだ」
それは自分のための言い訳でもあったかもしれない。ベルスタのものと自分のものを手の内で擦り合わせて腰を揺らす。
息づかいがみだらに途切れる。先をいじるとベルスタはいとも簡単に達した。
私が体を離すと、「まだ、奥が…」と縋るように言われる。
「これで終わると思っているのか」
くちびるを合わせる。
「ここからが本番だぞ」
口づけにもうぎこちなさはない。じっくりと互いを確かめるように舌を絡め、吐息を食む。
汗がにじむ肌を撫で、ベルスタの脇に寝そべる。背後から耳たぶを甘噛みし、うなじに吸いつきながら引き締まった肉体をさする。
「…なにをされるかわかっているんだよな」
「大丈夫です」
なにが大丈夫なのか。
「辛かったら言えよ」
窄まりに指を這わせる。ほぐすようにふにふにと指を押しつけ少しずつ奥を開いていく。
ベルスタの肩が震えているが、それが痛みからではないことは、垂れはじめた先走りでわかる。
「声、出していいぞ」
「…いえ」
「聞きたいんだ、聞かせてくれ」
一本だった指を二本に増やし強めに中を擦ると、「ぅあ」と声がもれた。
「辛いのか気持ちいいのかどちらかわからないな」
答えを期待していたわけではなかったが、「どちらもです」と返事があった。
「もどかしくて辛いのですが、気持ちよくもあります」
「もどかしいか」
思わず笑っている自分がいた。なんと律儀な報告なのか。どちらにしても良いってことだよな。
まだ窄まりはきつそうではあるが、ねだられたようなものなので自分のものを押しあててみる。
「お前が言う奥とやらに届くといいんだが」
ベルスタが息をのむのがわかった。わずかな反応を逃したくなくて、味わうように少しずつ体を繋げた。深く、深く。
そういえば、もうリリスの魔力は感じない。ベルスタを背後から抱きしめる。首筋に鼻を擦りつけて自分の魔力に混じるベルスタの匂いをかいだ。
もし、このままベルスタの中へ吐き出せば、そこに含まれている魔力もこの羊飼いの中に残るだろう。
「…動くぞ」
体に負担をかけないようにゆっくりと腰を動かす。かすかにベルスタが声をもらす。
「ッはァ…もっと…」
こうして交わってしまえばベスルタの内の熱はおさまる。人助けの延長線上の、なにか。割り切れるかと聞いたのは自分なのに。
「急かしてくれるな」
行為を終えてしまうのが惜しくて、切羽詰まった欲望をなだめた。
0
あなたにおすすめの小説
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました
キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。
けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。
そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。
なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」
それが、すべての始まりだった。
あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。
僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。
だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。
過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。
これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。
全8話。
愛され少年と嫌われ少年
透
BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。
顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。
元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。
【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】
※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。
君と僕との泡沫は
七天八狂
BL
【ツンデレ美貌✕鈍感平凡の高校生】
品行方正才色兼備の生徒会長と、爪弾きの底辺ぼっちが親の再婚で義兄弟となった青春BLドラマ。
親の再婚で義兄弟となった正反対の二人の青春BL。
入学して以来、ずっと見つめ続けていた彼が義兄弟となった。
しかし、誰にでも親切で、みなから慕われている彼が向けてきたのは、拒絶の言葉だった。
櫻井優斗は、再婚を繰り返す母のせいで引っ越しと転校を余儀なくされ、友人をつくることを諦め、漫画を描くという趣味に没頭し、孤独に生きていた。
高校で出会った久我雅利の美貌に見惚れ、彼を主人公にした漫画を描くことに決めて、二年間観察し続けていた。
底辺ぼっちだった優斗は、周りから空気のように扱われていたから、見えない存在として、どれほど見ていても気づかれることはなかった。
そのはずが、同じ屋根の下に住む関係となり、当の本人に、絵を描いていたことまでもがバレてしまった。
お疲れポメラニアンの俺を癒したのは眼鏡イケメンの同期だった
こたま
BL
前田累(かさね)は、商社営業部に勤める社員だ。接待では無理してノリを合わせており、見た目からコミュ強チャラ男と思われているが本来は大人しい。疲れはてて独身寮に帰ろうとした際に気付けばオレンジ毛のポメラニアンになっていた。累を保護したのは普段眼光鋭く厳しい指摘をする経理の同期野坂燿司(ようじ)で。ポメラニアンに対しては甘く優しい燿司の姿にびっくりしつつ、癒されると…
いきなり有能になった俺の主人は、人生を何度も繰り返しているらしい
一花みえる
BL
ベルリアンの次期当主、ノア・セシル・キャンベルの従者ジョシュアは頭を抱えていた。自堕落でわがままだったノアがいきなり有能になってしまった。なんでも「この世界を繰り返している」らしい。ついに気が狂ったかと思ったけど、なぜか事態はノアの言葉通りに進んでいって……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる